◆◆◆◆ 6-37 燎氏の変(23) ◆◆◆◆
【 セイジュ 】
「ほう! 噂に聞く紅雪華どのか……! ご高名はかねてから聞いておりますよ、雪家のご令嬢」
【 ミズキ 】
「それはどうも」
【 セイジュ 】
「こんなところでなければ、茶でも飲みながらゆっくりと語り合いたいけれど、そうもいくまいね」
【 ミズキ 】
「ええ、あなたがたと無駄話をする気はありません。たとえ時間があったとしてもですが」
【 ハナオ 】
「は……? 盟主のお誘いを……断るとでも……? 手足を一本ずつヘシ折られたいの……?」
【 セイジュ 】
「うん、話がややこしくなるから、混ぜっ返さないでくれるかな!」
【 ハナオ 】
「……申し訳ありません」
表情は変えずとも、少しシュンとした様子のハナオ。
【 ミズキ 】
「……狙うは、炬丞相の首一つ。そうでしょ?」
【 セイジュ 】
「うん、まあ、そういうことになるねぇ」
セイジュはうなずいてみせる。
【 セイジュ 】
「正直、こういうやり方はあんまり好きじゃないんだよ。丞相ひとりを討ったところで、世の乱れが正されるわけじゃないからね。でも……」
【 ミズキ 】
「……さすがに放置できない、と?」
【 セイジュ 】
「そうだね。ものごとには、限度というものがある」
セイジュは顔をしかめる。
【 セイジュ 】
「ここ最近の丞相の非道は、目に余るものがあるからね。もともと横暴な男ではあったけど……常軌を逸しているよ」
【 ミズキ 】
「……それは、確かに」
近年、炬丞相は大弾圧を行って次々と官民を処刑するなど、恐怖政治に手を染めていた。
強権的なやり方は以前からのものだが、ここ最近の残酷さは度が過ぎている。
【 セイジュ 】
「丞相を討ち取ったとしても、他の誰かが権力を握るだけ……ではあるにせよ、今よりはマシだろうからね。……おそらく、は」
【 ミズキ 】
「それが、あなたがたの掲げる“義”とやらですか」
【 セイジュ 】
「私たちの世界においては、そうなるね。そちらの方では、別の理屈があるのだろうけど」
セイジュたち遊侠の徒と、ミズキのような体制側の人間では、おのずと価値観が異なる。
【 ミズキ 】
「……どうあれ、丞相は斬らねばなりません」
【 セイジュ 】
「ふむ、丞相さえいなくなれば、この大乱も鎮まり……雪氏の罪も赦される。そういうところか。ちなみに、それは貴方自身の考えかな、それとも誰かに託されたのかな?」
【 ミズキ 】
「……細かい事情など、どうでもいいことでしょう?」
【 セイジュ 】
「まあ、それもそうだ。せっかくこうして同じ敵と対峙している以上、同盟といこうじゃないか」
【 ミズキ 】
「……いいでしょう。私ひとりでもやれますが……少しでも確実性は増しておきたいので」
【 セイジュ 】
「はは、大した自信だ」
【 ミズキ 】
「足手まといになるようなら、置いていきますから」
【 ハナオ 】
「盟主……やはりこの小生意気な娘……四肢をネジ切ってやっても?」
【 ミズキ 】
「は? やれるとでも?」
ハナオとミズキが見えざる火花をバチバチと散らす。
【 セイジュ 】
「だからさあ、ケンカ売ったり買ったりしないでくれる!?」
【 ミズキ 】
「……コホン。それで? なにか、侵入のための妙策があるのでしょうね」
【 セイジュ 】
「まあね。私にはいろんな特技をもった仲間がいるから」
そう言って、セイジュは片目をつむってみせた。
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




