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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
131/421

◆◆◆◆ 6-36 燎氏の変(22) ◆◆◆◆

【 頭巾の女 】

「地侠元聖……だとっ? ふざけたことをっ……!」


 怒りを含んだ声がこぼれる。


【 地侠元聖? 】

「ええっ? いや、ホントなんだけどなぁ……」


【 頭巾の女 】

「地侠元聖といえば、交龍こうりゅう(帝国東北部)を荒し回る天下の大盗……その首領しゅりょうが、こんなところをうろついているはずもなし!」


【 地侠元聖? 】

「う~ん、そう言われると痛いところなんだけどねぇ」


 地侠元聖と名乗った男が、頭をかく。


【 地侠元聖? 】

「周りにも止められたんだけど、やっぱり、自分で見定めたくなってね。これは悪いクセなんだけども」


【 地侠元聖? 】

「そちらも、目的は同じじゃないかな? だったら、共闘といこうじゃないか」


【 頭巾の女 】

れ言を……!」


【 地侠元聖? 】

「いやいや、本気だとも。もし行く当てがないんだったら、うちのねぐらに来てもらってもいいんだよ?」


【 頭巾の女 】

「――っ、れ者めっ!」


 頭巾の女が、怒気もあらわに手を突き出す。

 と、その刹那。


 ……スッ……


【 長身の女 】

「…………」


【 頭巾の女 】

「――っ!」


 一瞬の間に、かの長身の女が間に入ってきていた。

 傘を持っていない方の手で、頭巾の女の手を握っている。


 ギリッ……!


【 頭巾の女 】

「ぐっ……!」


 その握力に、思わず呻き声をこぼしている。


【 長身の女 】

盟主めいしゅ……この女……こま切れにしても、かまいませんか」


 淡々とした声音で、物騒なことを口にする。


【 地侠元聖? 】

「おいおい、よしてくれよ、ロウ姉妹きょうだい。話がこじれるじゃないか」


【 ロウ 】

「しかし……この女、盟主に害をなそうとしました……万死に値します」


【 地侠元聖? 】

「まぁまぁ、こんな状況じゃあ無理もないさ。それに、やりあえばお互い無事じゃすまないだろ?」


【 ロウ 】

「わかりました……盟主が……そうおっしゃるなら」


 ロウと呼ばれた女はパッと手を離すと、再び音もなく下がり、男の側に控えた。


【 頭巾の女 】

「…………っ」


 手を押さえ、うなり声を漏らしている頭巾の女。


【 地侠元聖? 】

「悪かったね、うちの仲間は血の気の多い連中が多くていけない……まあ、戯れるようなことを言った私が悪いんだけども!」


【 ロウ 】

「誰彼かまわず……勧誘したがるのは……盟主の短所です。唯一にして、最大の」


【 地侠元聖? 】

「すみませんね! さて、改めて名乗らせて貰おうかな。私は〈メイ・セイジュ〉という。ちょっとした愉快な仲間たちの頭目を任されているよ」


 ここでいうちょっとした愉快な仲間たちというのは、数万を超える賊軍に他ならない。


【 セイジュ 】

「こちらの姉妹きょうだいは、〈ロウ・ハナオ〉……〈一条太歳いちじょうたいさい〉なんて呼ばれているね」

 *一条……ここでは細長いものの意。

 *太歳……邪神の意。


【 頭巾の女 】

「地侠元聖……一条太歳……どうやら、偽りではないようですね」


【 ハナオ 】

「は……? 盟主が……偽りなど口にするはずがないでしょう……? 分解……されたいの?」


【 セイジュ 】

「はいはい、ケンカしないでくれる!? さて、そちらの名を聞いてもいいかな?」


【 頭巾の女 】

「私は……」


 女は頭巾を取った。

 現れたのは十代半ばか、まだあどけなさを残した乙女の相貌。


【 娘 】

「人呼んで〈紅雪華こうせっか〉。姓はセツ、名は――ミズキ」


 のちの女官長ミズキ、その若き日の姿であった。

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