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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
130/421

◆◆◆◆ 6-35 燎氏の変(21) ◆◆◆◆

 さかのぼること、十五年前。


 大宙暦3318年(帝ムジカ7年)、季冬の月(12月)。

 帝国は、内戦状態に陥っていた。

 世にいう〈三氏さんしの乱〉が勃発したのである。


 強大な勢力を持つ三つの氏族が結託けったくして蜂起し、帝国に叛旗を翻したのだ。

 この三氏とは、


 セツ

 ゲン

 コク


 であり、いずれも名だたる大族であった。

 西方で挙兵した叛乱軍の勢いはすさまじく、副都たる〈荊江永陽けいこうえいよう〉があっけなく陥落したほど。

 この凶報は、帝都〈万寿世春ばんじゅせいしゅん〉の朝廷を震撼しんかんせしめた。

 もっとも、三氏が掲げたのは宙王朝の転覆てんぷくではない。

 すなわち、


 ――我ら、君側くんそくかんを除かん!

 *君側の奸……君主の奸悪な側近の意。


 と、いうものである。

 ここでいう“君側の奸”が差しているのが、丞相(宰相)の地位にある〈キョ・ミンガイ〉のことなのは明らかだった。

 ミンガイは、皇帝たるエン・ムジカの後見人として、強大な権力を振るっていた。

 威勢天下を蓋わんばかりだった彼だが、ミンガイ打倒を掲げた三氏の攻勢によって、はなはだ苦しい立場に追い込まれているかに見えた……




 雪の夜だった。

 ひとつの影が、帝都〈万寿世春ばんじゅせいしゅん〉の夜道を音もなく駆けている。

 目深に頭巾をかぶっており、その正体はさだかでない。


【 ???? 】

「――――っ」


 ぴたりとその足が止まる。

 その視線の先に、城とすら見違えそうな、壮麗なる屋敷があった。


【 見張りの兵 】

「異状ございません!」


【 見張りの隊長 】

「油断するな。いつ、不逞ふていの輩が侵入を図るやもしれん……!」


【 見張りの兵たち 】

「ははっ……!」


 夜ふけだというのに、門の周囲には武装した兵が多数たむろし、警備に当たっている。

 ひどく物々しい雰囲気だった。


【 ???? 】

「…………」


 物陰に身を潜め、様子をうかがっていた人影が、ふたたび歩き出そうとした、その矢先。


【 声 】

「おやおや、もしかして、ひとりで乗り込むつもりかい?」


【 ???? 】

「――――っ」


 ふいに声をかけられ、振り返ると。

 そこには、異様な二人組がいた。


【 男 】

「そりゃあちょっと、無理ってものじゃないかな?」


 ひとりは、三十路がらみの中肉中背の男。

 手に鉄扇を持ち、ニコニコと人なつっこい微笑をたたえている。

 それはさておき、もうひとりは。


【 長身の女 】

「…………」


 身の丈、七宙尺あまり(約2メートル)はあろうという長身の女が、傘を手にして、男の脇に立っていた。

 まったくの無表情であり、あたかもろう細工のようだ。


【 ???? 】

「――何者だ」


 そう両者に問いかけた声は、若い女のものである。


【 男 】

「いやぁ、名乗るほどのものではないんだけどね」


 男は苦笑いを浮かべつつ。


【 男 】

「いちおう、世間では〈地侠元聖ちきょうげんせい〉なんてふうに、ご大層に呼ばれているよ」

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