◆◆◆◆ 6-34 燎氏の変(20) ◆◆◆◆
ミズキによる不可視の一撃を避けるためか、互いに距離を取りつつ、徐々に包囲を狭めてくる刺客たち。
【 ミズキ 】
(一斉に仕掛けてくる? いや、これは――)
【 左の刺客 】
「はぁあっ!」
【 右の刺客 】
「おおおっ!」
左右から、一人ずつの刺客が突き進んでくる。
【 ミズキ 】
「――はっ!」
両手を広げ、気合とともに空を撃つミズキ。
【 左の刺客 】
「ぐっ!?」
【 右の刺客 】
「ぎゃっ!?」
断末魔の声とともに、両者が倒れる――と同時に。
【 他の刺客たち 】
「おおおおおおっ!」
一気に距離を詰めた刺客たちの刃が、体勢を崩したミズキに迫る。
犠牲を前提とした、まさに必死にして必殺の陣――のはずであった。
【 ミズキ 】
「はぁあっ!」
――ブォンッ!!
気合とともに、ミズキが腰をひねり、空を蹴る――と同時に。
【 正面の刺客 】
「――ぐあっ!?」
【 斜め右の刺客 】
「――げっ……!」
【 斜め左の刺客 】
「――うぐうっ!?」
立て続けに、刺客たちがその場に崩れ落ちていった。
【 刺客の頭目 】
「なっ……!?」
刺客の頭目は、信じがたい光景に絶句する。
【 ミズキ 】
「手からしか出せない……などと言った覚えはありませんよ」
ミズキは薄く笑う。
その凄みは、もはや女官長のそれではなく、かつて紅雪華と恐れられた剣客そのものである。
【 刺客の頭目 】
「ぐっ、ぐぬぬっ……!」
【 ミズキ 】
(…………)
冷たい笑顔で刺客たちを見据えつつ、ミズキは内心で危機感を募らせる。
【 ミズキ 】
(十二賊以外の勢力による襲撃……それはある程度、想定していたことではあった)
【 ミズキ 】
(しかし、このただならぬ気配……警戒すべきは、この者たちだけではないような……?)
【 ミズキ 】
(! そうか、あのときと同じ……!)
ミズキは、かつて味わった鮮烈な感覚を思い起こす。
そう、あれは忘れもしない、十五年前のあの日――
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