◆◆◆◆ 6-33 燎氏の変(19) ◆◆◆◆
極龍殿の正門で、ランブとカズサが難敵と相対している頃。
裏門においては――
【 刺客の頭目 】
「うぬ、こやつ……!」
【 ミズキ 】
「早々にお引き取りいただけると助かるのですが……そうもいかないようですね」
正門の突破を断念し、裏へと回った黒衣の刺客の一団が、女官長ミズキと対峙していた。
彼女の周囲には、斃れた刺客たちが転がっている。
しかしそれでも逃げ腰にはならず、
【 刺客たち 】
「死ね……っ!」
正面から、ふたりの刺客が同時に迫る――
【 ミズキ 】
「――――っ」
ミズキが両手を敵に向けるや否や、
【 刺客たち 】
「――がっ!?」
悲鳴とともに、もんどりうって地に転がる刺客ふたり。
その身には傷ひとつないにもかかわらず、一撃で仕留められていた。
【 ミズキ 】
(この刺客たち、ただのごろつきではない……むしろ、訓練された暗殺者集団か?)
【 刺客の頭目 】
「貴様っ……よもやその技、〈空刀〉かっ?」
【 ミズキ 】
「おや、よくご存じですね。答える義務はありませんが……まあ、お察しの通り、といっておきましょう」
空刀――
己の体内で練った気を見えざる刀と化し、離れた敵を撃つ……とされる秘技である。
もとより、誰もが使いこなせるような武術ではない。
【 他の刺客 】
「まさか!? 空刀を使いこなせるのは、〈天下七剣〉級の剣士だけのはずっ……!」
【 刺客の頭目 】
「……っ、聞いたことがある。かつて、うら若い娘の身にして、天下七剣に数えられた遣い手がいると」
【 他の刺客 】
「〈紅雪華〉!? しかし、処断されたはずではっ……」
【 ミズキ 】
「…………」
優雅な笑みを浮かべたまま、否定も肯定もしないミズキに、刺客たちは息を呑む。
【 ミズキ 】
「かくいう貴方がたも、どうやら只の狼藉者ではないようですね」
【 刺客の頭目 】
「――っ、知れたことよ! 今こそ、我らが武名を天下に轟かせ、汚名を雪ぐ好機っ……!」
【 ミズキ 】
「ほう、名のある一門とみました。名乗ってはいただけないのかしら?」
【 刺客の頭目 】
「ふん、貴様の今際の際に教えてくれる!」
*今際の際……死ぬ寸前、臨終の意。
【 ミズキ 】
「おやおや……では、最後まで教えてはいただけないようですね。残念なことです」
【 刺客の頭目 】
「ぬうっ……貴様っ!」
【 他の刺客 】
「頭目っ……!」
【 刺客の頭目 】
「相手が紅雪華となれば、生半可な手は通じぬ――〈死陣〉を使う!」
【 他の刺客 】
「――はっ!」
頭目の命令一下、刺客たちが整然と動き始める。
【 ミズキ 】
(! これは――)
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