表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
124/421

◆◆◆◆ 6-29 燎氏の変(15) ◆◆◆◆

【 シジョウ 】

「なんだ、あれは……!?」


【 他の十二佳仙 】

黄龍コウリュウ老師の手の者ではないので……!?」


 〈遠見とおみ〉の術で極龍殿の正門の様子をうかがっていたシジョウたちは、謎の剣士の乱入に戸惑いを隠せない。


【 シジョウ 】

「知らぬ。……だが、あの姿は……」


【 シジョウ 】

(もしや……〈神仙殺し〉だとでもいうのか?)


 古い伝説にある、〈神仙殺し〉と呼ばれた剣士の物語。

 ある女が剣を極めんとして霊山にこもって過酷な修行を重ねた末、ついには神仙すら斬るほどの境地に達したという。

 だがその剣士は神仙たちに恐れられ、謀計をもって抹殺されたと伝わるが……


【 シジョウ 】

(あやつの正体がなんであれ、正門を突破されては――)


 シジョウらが手に入れるべき〈ぎょく〉……すなわち、天子ヨスガのもとに先んじて到達されかねない。


【 他の十二佳仙 】

「ど、どういたしましょう、黄龍コウリュウ老師っ……」


【 シジョウ 】

「……今は捨て置け。肝心なのは極龍殿に入ることゆえな……!」


【 他の十二佳仙 】

「は、ははっ……!」


 シジョウらは裏門、そしてそれ以外の通路へと手勢を向かわせる。


【 シジョウ 】

(何者かは知らぬが……先を越されてなるものか!)




【 ランブ 】

「はぁっ、はぁあっ、はぁああっ……!」


 切断された左肘から、真っ赤な鮮血がほとばしる。


【 ランブ 】

(まったく……見えなかった……!)


 首をねんとした一撃を間一髪でかわせたのは、武人の本能、というようなものであっただろう。

 激痛に下唇を噛むランブの脳裏に、亡き父の言葉がよみがえってくる。


【 ジンブ 】

『――戦場で生き残るために一番大事なことは、なんだかわかるか? ……なに、強くなること? そりゃあもちろんだ。だが、それ以上に肝心なのはな……』


【 ジンブ 】

『――相手の力量を見定めるってことだ。ひっくり返っても勝てねぇって相手に会ったら、恥も外聞もなく、逃げるにしかず――だ』


 今まさにランブは、“ひっくり返っても”かないそうにない敵手と対峙している。


【 ランブ 】

(しかし――逃げられるものか!)


【 ランブ 】

「ぐっ……ぬうっ! ぬううううっ!」


 ランブは気合で、左手からの出血を止めた。

 度の過ぎた頑健さの持ち主である彼女ならではの芸当である。


【 長髪の女 】

「ほう、気迫のみで血を止めたか? 当世の武人も、大したものよなぁ!」


【 ランブ 】

「はぁっ、はぁあっ……貴様っ……何者だっ……!」


 さしものランブも息を乱しつつ、問いただす。


【 長髪の女 】

「ふむ、名乗るほどの者ではないが……かつては〈神仙殺し〉とか、〈戮仙劔君りくせんけんくん〉などと呼ばれたものよ。まぁ、好きに呼ぶがよい」


【 ランブ 】

「戮仙劔君……!?」


 その名は、かつて読み耽った書物の中にあった。

 あまりの強さに神仙からも恐れられ、闇に葬られたとされる、伝説の剣豪……


【 戮仙劔君 】

「オレは名乗った。そちらも名乗ったらどうだ? オレは、己が斬るに値する相手の名を知っておきたい」


【 ランブ 】

「――っ、我が名はランブ……ナギ・ジンブが一子、ランブなり!」


 己を励ますかのように、ランブはひときわ大声で名乗りをあげた――

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ