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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
123/421

◆◆◆◆ 6-28 燎氏の変(14) ◆◆◆◆

【 ランブ 】

「――ぬぅんっ!」


 ――ザシュウッ!!


【 覆面の剣士 】

「ガッ……アッ……!」


 門に迫ってきた奇怪な剣士が、真っ二つになって消し飛び、そのまま雲散霧消うんさんむしょうする。


【 ランブ 】

(奇妙なものだ)


 次々襲いかかってくる刺客を切り伏せながら、ランブは思う。


【 ランブ 】

(あのときは、要らぬと思っていた命が、今はひどく惜しい)


【 ランブ 】

(生きていなければ、あの方に、尽くすこともできぬ)


 ――ブォンッ!!


【 別の剣士 】

「グアッ……!」


 左右の斧が空を裂くたび、迫りくる刺客が消え失せていく。


【 ランブ 】

(そう――己も生き、あの方も生かしてみせる――必ず!)


【 ランブ 】

「……む?」


 群がるように迫ってきていた人ならざる者たちが、潮が引くように下がっていった。

 またしても裏手に回るつもりかとも思われたが、


【 ランブ 】

(なんだ……まるで、逃げ出したかのような?)


 不審を抱くランブの耳に、奇妙な音が届いた。


 カラン……カラ……カラン……


【 ランブ 】

(……これは……)


 ただ一人、背に長剣を負った影が、門に近づいてくる。

 乾いた音の正体は、履いている木履きぐつであった。


【 ランブ 】

(先ほどの黒衣の刺客……いや、違う!)


 そのあまりに無造作な歩の進め方に、ランブは瞠目どうもくした。

 *瞠目……驚き、目を見張る意。


 思わず、総身の肌があわ立つのを覚える。


【 ランブ 】

(なんだ……“あれ”は……!)


 ただの刺客などではない。

 人の形こそしているものの、あれは――


【 長髪の女 】

「ほう――なかなかの“強者”の匂いよな」


 “それ”が言葉を発した。

 見かけは長い髪をたなびかせた娘なのだが、その声音には底知れぬ重みがある。


【 長髪の女 】

「わざわざ出向いてきた甲斐があったというものよ。なぁ、〈ひょう〉?」


 なにやら、背中の剣に声をかけている。


【 ランブ 】

「――おおおおッ!」


 ランブは咆哮ほうこうと共に、左右の斧を振るって、女に突貫していった。

 本来なら、高所の有利を活かし、迎え撃つほうが得策である。

 だが、あえてそれを捨てたのは、湧き上がる危機感ゆえに他ならない。


【 ランブ 】

(待つのはまずい――全力をもって、先手を打つしかないっ!)


 そんな、戦士としての直感のなせる業であった。


【 長髪の女 】

「おお、オレの手並みを察したとみえる! そうでなくては――」


 女は笑みを称え、懐へと手を伸ばす。


【 長髪の女 】

「――つまらぬ」


【 ランブ 】

「…………ッッ!!」


 ――ドシャアッ!!


【 ランブ 】

「ぐっ……ぬっ……!」


 血しぶきとともに地に転がったのは、一振りの斧、そしてランブの左肘から先であった。


【 長髪の女 】

「おお! 首を落とすつもりであったが――腕一本で受けてみせたか。見事なり!」


 背の剣を抜くまでもなく、懐から抜いた匕首あいくちを手に、悠然と微笑む女。


【 長髪の女 】

「さて、ここからが本番というものよ。愉しもうぞ、人の子よ!」


【 ランブ 】

「――――ッ」


 鮮血を滴らせつつ、ナギ・ランブは戦慄した。

 これまで、いかなる戦場でも感じたことのなかった“死”の気配。

 それが今まさに、人の姿をなして眼前に立っているのだった。

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