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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
122/421

◆◆◆◆ 6-27 燎氏の変(13) ◆◆◆◆

【 ランブ 】

「…………?」


【 ヨスガ 】

「おい、『この小娘、気が触れてるのかな?』みたいな目で見るなっ! あたしは正気だ!」


【 ヨスガ 】

「そなたがなにも考えたくない、というならそれでもよい。そのぶん、あたしがあれこれ考えてやろう。考えるのは得意ゆえな!」


【 ヨスガ 】

「要らぬというなら、その命、あたしによこせ!!」


【 ランブ 】

「――――っ」


 その無法なまでの要求に、ランブは呆れながらも、


【 ランブ 】

(この小娘……小さい身体で、気迫だけは……大したもの)


【 ランブ 】

(そう……どこか、お父様のような……)


【 ランブ 】

「……好きに、すればいい」


 ランブは、そう告げた。


【 ヨスガ 】

「ふん、その口ぶりは気に食わんが、少しはその気にはなったようだな」


【 ランブ 】

「だが……私は、この樹を、るまでは――」


【 ヨスガ 】

「ああ、それが、そなたの苦役なのだったな。心得ておる――やってくれ、エキセン!!」


 と、ヨスガが叫ぶと同時に――


 ドオォォーーンッ!!


【 ランブ 】

「なっ……!?」


 文字通り血を揺るがすような巨大な音とともに、巨木の幹から炎が噴き上がった。

 そのまま火は樹木全体に燃え広がり、轟轟ごうごうとすさまじい音を立てながら燃え盛っていく。


【 ヨスガ 】

「おお――見事なものだ、やるな、エキセン!」


【 エキセン 】

「クク……これくらいは……造作もない……」


 どこに身を潜めていたのか、痩せた男がやってきて、薄笑いをうかべた。

 この男が爆薬の名手〈霹靂匠へきれきしょう〉ことホウ・エキセンであることをランブが知ったのは、後のことである。


【 ミズキ 】

「やれやれ、なにもこんな派手な真似をしなくても……」


【 ヨスガ 】

「手っ取り早いであろう? これで心配事はなくなったな、豪傑!」


【 ランブ 】

「…………っ」


 ことのなりゆきに、ランブはやや茫然自失としていたが、


【 ランブ 】

「貴公は――いったい……?」


【 ヨスガ 】

「名乗ったであろう? 天侠大聖てんきょうたいせいだ。まあ、この名が世に広まるには、ちと時間がかかるがな!」


【 ミズキ 】

「さて……そろそろ戻らなくては、面倒なことになるわね」


【 ヨスガ 】

「む……なにしろ、無断で抜け出してきている身ゆえな。では、そういうことだ豪傑、いずれまた会おう!」


 それだけ告げて、ヨスガらは近くに留めていた馬車に乗り、立ち去っていった。


【 ランブ 】

「…………っ」


 ランブは唖然として、見守ることしかできなかった……



 その後。

 かの巨木の炎上については、落雷によるもの……とされたらしく、ランブが追及されることはなかった。

 彼女の罪自体が赦されたわけではなかったが、新たな労役が課せられることなく、しばし一囚人として閑静な時間を送ることができたのである。

 ……それからほどなく、新たな皇帝が即位し、大赦がおこなわれた。

 罪を赦されたランブは帝都に召し出され、新帝の侍衛へと任じられ――

 そして、今に至る。

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