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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
114/421

◆◆◆◆ 6-19 燎氏の変(5) ◆◆◆◆

 また、内廷の東の宮にあっては――


【 カツミ 】

「おやおや……派手におっぱじまったもんだなぁ」


 宮殿の屋根に立ち、立ち昇る火の手を眺めながら、ネン・カツミがつぶやいた。


【 アズミ 】

「すごく、きれいだねー……」


 カツミに肩車されたレン・アズミが、目を輝かせている。


【 カツミ 】

「綺麗? 綺麗かねぇ……よくわからんな」


【 アズミ 】

「もっと、近くでみたいなー」


【 カツミ 】

「おいおい、ここを離れるわけにはいかないだろ。そういう“約束”だからな」


【 アズミ 】

「そうだったー。じゃあ、もっと近くがぼうぼう燃えないかなー?」


【 カツミ 】

「物騒だねどうも……ま、それは、これからの成り行き次第だろ。あたしたちの出番はないと思うけどな」


【 アズミ 】

「ちぇー。あいつが、おもしろくしてくれないかなー?」


【 カツミ 】

「あいつって……あぁ、この前の小娘か? どうだかねぇ」


【 アズミ 】

「きたいしてるー。えーっと……えっと、あいつ、だれだっけ……ぁ、そうそう――――」




【 ???? 】

「――ホノカナ……ホノカナ……」


【 ホノカナ 】

「ぅ……うぅん……ん……?」


 自分の名を呼ぶ声に、ホノカナは目を覚ました。


【 ホノカナ 】

「あれっ……? ここ、は……」


 そこは、見知らぬ場所だった。

 山の中なのか、近くにはさらさらと小川が流れている。


【 ホノカナ 】

(どこか、見覚えがあるような……?)


 この蒸れた風の匂いも、どこか懐かしい。


【 ???? 】

「――そう、きみと私が、初めて出会った場所だよ」


【 ホノカナ 】

「えっ? あっ――」


 そこにいたのは、瀟洒しょうしゃな衣装を身に着けた、長身の女だった。

 *瀟洒……洒落た様子、あか抜けた様子。


【 ホノカナ 】

「あ――ショウさんっ!」


【 タイシン 】

「やぁ、元気そうじゃないか」


 そう言って微笑みかけてくるのは、ショウ・タイシン……

 宙国有数の政商にして、ホノカナを宮中へ送り込んだ張本人であった。


【 ホノカナ 】

「えっ? でも、わたし、お城にいたはずじゃ……」


【 タイシン 】

「なに、これはただの夢だ。整合性は気にしなくていい」


【 ホノカナ 】

「あ……あぁ、なるほど、夢なんですね」


 そのわりには、やけにはっきりしているような気がするけれども。


【 ホノカナ 】

「あっ、弟は……アルカナは元気にしてますか?」


【 タイシン 】

「あぁ、そのはずだよ。彼には、大事な役目を任せている。とてもいい働きをしてくれているようだ」


【 ホノカナ 】

「そうなんですね……よかったです」


 ホッと安堵する。

 たとえ夢ではあっても、悪い知らせを聞くよりはずっといい。


【 タイシン 】

「懐かしいな。きみがここで溺れているところを、私が助けたんだったね。正確には、助けたのはユイだけれど」


【 ホノカナ 】

「あ、あはは……その節はどうも……」


【 タイシン 】

「さて……あまり長居はできないから、単刀直入に言おう」


【 ホノカナ 】

「はい……?」


【 タイシン 】

「以前、別れ際に約束をしたが……覚えているかな、小さいホノカナ」


【 ホノカナ 】

「あっ……はい、いつか、ご恩返しをするって……!」


【 タイシン 】

「もしその気があるなら、今こそ、お願いしたいことがある」


【 ホノカナ 】

「と、いうと……?」


【 タイシン 】

「それは――つまり」


【 タイシン 】

「皇帝陛下を、きみの、その手で――――」


【 ホノカナ 】

「――――っ?」

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