◆◆◆◆ 6-10 弁明 ◆◆◆◆
【 緋閃剣 】
「どうなのかしらっ? あなた……あの方と、そういう仲なのではっ?」
卓に身を乗り出し、ヨスガとの仲を問い詰めてくる緋閃剣。
【 ホノカナ 】
「~~っ、ち、違います! そんなこと、絶対に! ありえませんから!」
慌てて首を振ってみせる小万勇ホノカナ。
【 緋閃剣 】
「どうかしら……ずいぶんと目をかけられて、ずっとお側にはべっているという話だけれど?」
ホノカナを見定めるような、じっとりとした目を向けてくる。
【 ホノカナ 】
「ま、まぁ、一緒にいる時間が長いのは、確かですけど……」
【 緋閃剣 】
「――――っ」
【 ホノカナ 】
「でも、そういうのじゃ全然っ! 全っ然っ、金輪際、ないですからっ!」
緋閃剣の刺すような視線に、両手を振って否定してみせる。
【 緋閃剣 】
「そこまで必死になるあたりが、むしろ怪しいわね……!」
【 ホノカナ 】
「ええ……!?」
いったいどうしろと……という気持ちになってしまう。
【 緋閃剣 】
「……コホン、勘違いしないでちょうだい」
やや冷静になったかのごとく、席に腰を下ろし、
【 緋閃剣 】
「別にあの方が、誰となにをしようが、わたしが口出しすることではないのよ。ねぇ、そうでしょう?」
と、同意を求めてくる。
【 ホノカナ 】
「は、はぁ……ですよねっ!」
【 緋閃剣 】
「いかに至尊(天子)の地位にあるとはいえ、あの方もひとりの人間ですもの。その交友関係や嗜好にあれこれ意見するなど、不遜にして傲慢というものでしょう?」
【 ホノカナ 】
「そ、そうですねっ!」
【 緋閃剣 】
「――しかしっ!」
【 ホノカナ 】
「――――っ」
【 緋閃剣 】
「上に立つ者が、ろくでもない輩を寵愛し、えこひいきするのは、国が傾く兆し! そうは思わなくてっ?」
【 ホノカナ 】
「は、はぁ、それはまぁ……」
緋閃剣の勢いに押されつつ、頷いてみせる。
【 緋閃剣 】
「ゆえに! わたしはこの目で、見定めたくなったのよ。あの方が選んだという者が、どれほどの器なのか、とね……!」
【 ホノカナ 】
「そ、そうなんですか……」
【 救神双手 】
「本来は私ひとりで来るつもりでしたが、強引についてきたのですよ。無関係な霹靂匠まで巻き込んでね」
【 霹靂匠 】
「ククク……とばっちりにもほどがある……」
【 緋閃剣 】
「ちょっと!? 余計なことは言わなくていいのよ!」
身内の暴露に動揺しつつも、
【 緋閃剣 】
「とにかく! わたしがこうして直接見たところでは、あなたは――」
【 ホノカナ 】
「……わ、わたしは?」
【 緋閃剣 】
「――無害! 毒にも薬にもならない、ただの凡骨そのものねっ!」
【 ホノカナ 】
「はぁ……」
前にも似たようなことを言われたのを思い出す。
自分でもそう思ってはいるけれども、わざわざ他人に言われると、当然ながらいい気分はしない。
【 緋閃剣 】
「あぁ、どうか気を悪くしないでちょうだい。そもそも、この世のほとんどの者は凡骨なのだから。それは罪でもなんでもないの。凡骨でありながら大それた野心を抱くのが罪なのよ!」
【 緋閃剣 】
「ごく少数の選ばれし者だけが、天より才を授かり、世を治める使命を与えられる……そう、このわたし――〈閃・カズサ〉のごとく!」
【 ホノカナ 】
「あっ」
【 救神双手 】
「あっ」
【 霹靂匠 】
「あ」
【 カズサ 】
「……あっ?」
【 ミズキ 】
「閃の姉妹……名乗ってしまっていますよ」
【 ホノカナ 】
「あっ……い、いえ,大丈夫ですよ、聞き逃しましたから! 緋閃剣さんっ!」
【 カズサ 】
「クッ……気を遣われると余計に傷つくわっ……!」
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