リリアのボディーガード
申し訳ありません。
一話飛ばしてしまい、前話を追加して再投稿致しました。
そして次の日、私は少し早めにお遣いに出て、橋の下へ向かった。
ここに来るのは久しぶりだ。
最近は、朝と夜のリリアとのお話とリリアのお仕事の打ち合わせと、お遣いの日はいつもあの木箱に座って話してる。
「リリアー?」
私は梯子を下りて橋の下に声をかけると、奥からリリアが走ってきた。
今日はその後ろに一人の男の子が連れられている。
「フィオラ! この子が昨日話したアリオン! 12歳だから私の1つ上」
フィオラがそう言うと、アリオンはフィオラの横に並んで、
「アリオンだ…」
と、そっぽを向いたままボソッと話した。
「アリオン! ちゃんと挨拶しないとダメでしょ!」
とバシッとリリアがアリオンの頭をはたいた。
「いてっ…でもこんなガリガリがなんかできるとは思えねぇ」
「ガリガリなんて言っちゃダメ!」
そういうとリリアは再びアリオンの頭をはたいた。
「ってーなー。んで、俺がリリアのボディーガードができるか、見てくれるんだろ」
「そう!」
リリアがえっへんと両腕を組んでいった。
「フィオラよ。よろしくねアリオン」
「ふん、どうやんのかしらなーけど早くしろよ」
「えっとじゃあ、そのままこっちを向いて立っていて」
私がそう言うと、アリオンはこっちを向いて気怠そうに立っている。
私は自分の魔力の限界は大体わかっていて、スキルを1つも読み取れないってことはないだろう…。
というか、そんなに都合よくスキルを持ってる人なんているわけなくない…
と思いつつ私は目に魔力を集め出した。
じんわり目の奥が熱くなってきて、次第にアリオンの横に文字が浮かび上がる。
身体強化
空間把握
え? そんな都合よくスキルがしかも二つ?! あ、てか目を閉じないと!!
私は、下を向いて目を閉じた。
「フィオラどうだった」
リリアが聞いてきた。
「そんな都合よくスキルを持ってるみたい……。しかも二つ…」
と私が言うと、
「ほらー! やっぱり! アリオンにもあるんだよ! スキル!」
とリリアは大喜びして私の手を持って喜んでる。
「本当かよそれ…」
「じゃあアリオンやってみなよ」
と、未だ信じていないアリオンをリリアがジト目で見ながら言った。
「どうやってやんだよ」
「こんな感じ!」
とリリアが言うと目の前から消えて、5歩先ぐらいにいる。
「まじかよ」
「私のスキル、脚力強化だよ。フィオラ、もうアリオンには教えていいよね?」
「うん、隠しておくこともできないし」
「アリオン内緒だからね。私のこともフィオラのことも」
「わ、わかった…でも、俺はどうやって使ったらいいんだよ」
「えーっと、フィオラどうしたらいい?」
「身体強化だから、リリアの脚力強化の全身版だろうから、そうね…。なんかこう思いっきりこぶしに力を籠めるイメージをして、この壁軽く殴ってみて」
私は川の壁をポンポンと叩いた。
アリオンは言われたことを少し考えると、右手を握って、軽く壁をコツンと殴る。
すると壁の石がパラパラと少し崩れてきた。
「まじで…。手も全然痛くない」
アリオンは驚いたように自分の右手を見ている。
「フィオラ、これはボディーガードにぴったりじゃない?!」
「そ、そうだね…。リリアぐらい使いこなせるようになったら、すごく強くなりそう」
「アリオンよかったね!」
「お、おう…」
私は未だ自分のスキルに驚いているアリオンに、
「アリオン。なぜ私にスキルが見えるのかはわからない。だから、このことは私とリリア二人だけの内緒だから。アリオンがスキルを持っていることもね」
「わ、わかった」
「スキルの使い方はリリアに教えてもらって。こっそりと人の目につかないところで練習してね!」
「わかった」
「私が師匠だからね!」
「なんか嫌だな…」
二人はそう言いながら、スキルの使い方について話し出した。
「私、お遣いの途中だから今日はこれで行くね」
「あ、うん! また夜に!」
「わかったわ」
私はそう言うと梯子を登り、お遣いに向かった。
どうしてアリオンにもスキルが。
しかも二つ。
どう考えてもおかしい。
スキルは持っている人の方が少ないと言われている。
スキルを持っていれば、仕事には困らないと言われているぐらいだ。
しかもスキルを二つ同時に保持するなんて、歴史に名を刻んでいる騎士や魔法使いしかいない。
そんな二つスキルを保持する人が2人…。
そんなことあり得るのか?
いや、あり得ている…。
現にアリオンもスキルを使えた。
きっと空間把握の方も、リリアのこれまでを考えれば使い方がわかれば使えるのだろう。
私は深まる謎に頭を悩ませつつも、その日のお遣いをこなし寮に戻った。
その日の夜、いつも通り塀に寄りかかり星空をみていると、リリアが来た。
「フィオラ」
「リリア。今日はどうだった?」
「郵便はこの前の伯爵家のお嬢様。また10万ゴルドもらったわ」
「お疲れ様」
「その後はアリオンの訓練。アリオン凄いのよ?」
「そうなの?」
「うん! 魔力が多いのか、今日だけで身体強化をほとんど意識せずにできるようになったみたい」
「偶然だけど、最高のボディーガードになりそうね」
「うん! 空間把握の方は見当もつかないみたいだけど」
「そっちは考えがあるから大丈夫よ」
「流石フィオラ! とりあえずは身体強化の練習と限界の見極めでいいよね?」
「うん、限界がわからないと作戦が立てれないからね」
「そうだね! じゃあ、明日の朝もまた来るね!」
「うん、待ってる」
「それじゃ!」
そういうとリリアは音もなく塀の向こうからいなくなった。
最近魔力の増えてきたリリアは、無音歩行の練習と言って色んなときに使っている。
急に後ろに来られると本当にびっくりする。
本当に無音だから…。
でも、一体どうして橋の下に住んでる彼らにスキルがあるのだろう…。
私は部屋に戻り、推理小説を読みながら、一体どういうことなのだろうと考えていた。