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リリアの二つ目

そして次の日、私はいつも通り洗濯物を干していると、2本の木の間に立てかけてある木の板がぱたんと倒れた。




「フィオラー」




こちらを覗くようにしてリリアが呼んだ。


私はあたりを見回して誰もいないことを確認すると、木の間にかけていった。




「少しだけ待ってて」


「わかった!」




私は急いで戻り、残りの洗濯物を干し、木の間に入っていき、リリアに話しかけた。




「リリア」


「あ、フィオラ終わった?」


「うん!」


「ちゃんと話せるね!」


「そうだね! これでいつでもってわけじゃないけど、結構話せるようにできそう!」


「うん、2日後には会えるしね!」


「うんうん!」




そのまま二人でしばらく話して、その日は解散した。







それからは、塀を挟んだ会話と、お遣いの時に待ち合わせして会うことを繰り返した。


リリアは、最近はどうしても食べれなくて苦しいときは、あのお肉屋さんに来てくれれば少しなら分けてあげるからと言われているそうで、すごく健康そうなわけじゃないけど、少し前よりは元気になった。


私は相変わらずがりがりの痩せっぽちだけど、屋根のある家で眠れているしいつも通りだ。




リリアは私がスキルを明らかにしてからは、少しずつこっそりとその脚力強化ができる距離を見極めている。


今は100mぐらいなら、何とかなると言った感じだそうだ。




私も、お遣いの時にリリアと会うタイミングで、少しずつ目に魔力を集めては途中でやめてを繰り返していた。








そしてそんな生活も半年ぐらい過ぎ私がもうすぐ8歳になる頃、




「それじゃあ行くよリリア!」


「うん! いつものことだけど無理はしないでね!」


「わかってる!」




私はそういうと、木箱に腰かけるリリアを見て、目に魔力を集中しだした。


ついこの前見た時に、「無音歩」まで読めていた。




あと少し。


あと少しで2つ目がわかる。




私はそんなことを思いつつ魔力を目に集めていくと、いつも通り目の奥が陣割熱くなり出した。






脚力強化

無音歩…行






私はそこまで見て、他に文字が出てくる気配もなさそうなので下を向いて目を閉じた。


少しだけ頭痛はするけど、ほんの少しだ。


きっと私の魔力も少しずつ成長しているのだろう。





「はぁはぁ…リリア、2つ目わかったよ」


「それでそれで!」




リリアは目を輝かせながら聞いてきた。




「無音歩行だって」


「無音歩行?」




リリアは頭の上に「?」を思い浮かべるような感じで言った。




「きっと、足音を無くせるんじゃないかな…」


「なるほど! やってみる!」




そう言うとリリアは立ち上がり、私の前に立った。


そしていかにもそーっという感じで足を踏み出した。





「り、リリア。それじゃ普通に足音がしないよ(笑)」


「た、たしかに! 難しいな」


「そのそーっと歩くイメージを足の裏とかにイメージしたまま、普通に歩いてみたら?」


「難しそうだけどやってみる!」




リリアはそう言うと目をつむり、今度は普通に歩きだした。


一切の足音を立てずに。




「どうだった?」


「す、すごいね。全く足音しなかった」


「まだ目をつむってないとできなそうだけど、ちょっと練習してみる!」


「やり過ぎは気を付けてね!」


「うん!」


「でも、もし普通に目を開けたまま、それこそ走りながら使えたらすごいね」


「しかもさ、脚力強化したら、完全に音しない感じになるし、なんか瞬間移動みたいになりそう!」


「確かにね! いいなぁリリアはスキルがあって」


「フィオラは自分を見ることはできないの?」


「鏡に映ってる自分を見てやろうとしてみたけど、全くダメ…私には本当に何もないのか、自分は見えないのか…」


「そうなんだ~。残念だねぇ」


「うん、でも別にいい! 元々ないって言われてるし! でもそれよりさ、スキル2つある人って相当珍しいらしいよ」


「えー! そうなんだ!」


「だからリリアも内緒にしておいた方がいいよ? 危ない人に知られたら攫われたりしちゃうかも…」


「わかってる! フィオラのことも私のことも二人の内緒だよね!」


「うん…しかもリリアのスキルって、なんかこう悪いことにすごく使いやすそうな…」


「私脚力強化だけでも、結構いろんなもの盗めるなぁって思ってた(笑)」


「ダメだよ?」


「わかってる! フィオラと悪いことには使わないって約束したし!」


「うん、ありがとう!」





そしてそのまま二人でその小道で話していると、大通りの方から女の人の声がした。




「誰かー!!! 捕まえてー! ひったくりよー!!!!!」




そう大通りの向こうから女の人が叫んでる。


そして私たちがいつも座っている木箱のある小道を、大通りの方から1人の男の人が手には赤い女物の鞄を持って走ってくる。




「ふぃ、フィオラ、こっち来るよ! どうする!」


「わ、私達なんかじゃ…」


「ど、ど、ど、どうしよう!」




男は後50メートルぐらいで私たちの横を通過する。


どうする…。


私達は子どもだから、何もできなくて当然だ。



でも…。





「リリア、よく聞いて。こっちから向こうへ脚力強化で走って、あの男の人の横を通り過ぎるときにひったくり返してみて。多分誰も近くにいないからそんな強い力で持ってないと思う。それでそのまま大通り近くまで脚力強化で駆け抜けて。100mないから、今のリリアならいけるよ」


「わかった…やってみるね!」




リリアはそう言うと、男の方をぐっと向いて、走る構えをして………消えた。





私は小道の出口を見ると、そこにはすでにリリアがいて、手には赤い鞄を持っている。



男は、「え?」みたいな感じで自分の手を見ているが、その手にはもう何もない。




リリアはそのまま、大通りに出て、叫んでいたおばさんに鞄を渡している。


男はもう諦めたのか、猛ダッシュで私の横を通り過ぎていった。

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