地下の作戦拠点計画
別宅と言うか小屋に近いわね。
でも寮よりは作りがしっかりしているわ。
私はその別宅に入り中を見ていた。
しかしあのアマレーヌって子何を隠してるのかしら。
機会があったら探ってみましょう…。
もしかしたらいい情報を手に入れることが出来るかもしれない。
そうやって私が別宅の中を物色していると、急にドアが開いた。
そして目の前にリリアとアリオンが立った。
「こりゃ前の寮より入りやすいな」
「本当ね!」
「二人ともありがとう」
「オフィールとセリスも壁の外にいるぜ」
「そうなのね。皆で来てくれてありがとう」
「オフィールに教えてもらったけどさ、この子爵もひどくない?! なんなのよ15歳の赤ちゃんって!」
リリアは自分の事のように怒ってくれてる。
「大丈夫よ。まだその時までは時間があるわ。何か対策を考えるわ」
「それならいいけどさぁ。なんかフィオラを物みたいに…。あんなに頑張ってお母さんをお父さんの所に連れて行けるようにって色んな事制限してたのに…」
リリアはそう言うと今度は涙をポロポロと流し出した。
私はこの前の逆でリリアをそっと抱きしめて、
「リリア、ありがとう。大丈夫よ。お母さんの形見はしっかり子爵の元へ行ったから。もう私も心残りはないわ」
「それならいいんだけどっ…ズッ…」
「そんでフィオラ今後どうするよ?」
アリオンが両手を後ろで組んで話してきた。
「そうね。まずはリリアに使用人になってもらうわ!」
「やっぱりあれリリアのことか!」
「うん、ライールさんが身元の保証を引き受けてくれるかわからないけど、もしお願いできたらリリアに使用人になってもらえば、連絡が凄く取りやすくなると思うの」
「あ、それさっき聞いてきてオッケーだって!」
リリアは泣いた目をこすって、ニコッとして私にピースしながら言った。
「早いわね…」
「オフィールが聴力強化で聞いてたからね! それですぐに聞いてきたの!」
「そう。それじゃ、ライールさんとリリアを近いうちに紹介して、リリアに使用人になってもらうわ」
「やったー! ずっとフィオラと一緒!」
「そうね。それでその後は、また考えて連絡するわ」
「了解!」
「それじゃあ私は家を住めるようにするから」
「手伝うよ~」
二人はそう言うと、せかせか動いてテーブルやベッドを動かしたりしてくれた。
私、全然力ないのよね…。
それこそ、洗濯物を干した竿を持ち上げることすら一苦労なくらい…。
これからはちゃんと食べて、体力つけなきゃ。
なんて言ったって私は義賊の首謀者だから!
そうして次の日ライールさんとリリアが訪ねてきてくれた。
元第5騎士団団長の肩書は絶大で一瞬で許可された。
むしろお近づきになりたいと、なんか色々話してた。
「フィオラどおー??」
とリリアは使用人服のメイド服のようなものを着てくるくる回ってる。
「似合ってるわよ。むしろリリアは美人なんだから何でも似合うでしょうけど」
「ふふふ! フィオラもこれから私が綺麗にしちゃう! なんたって専属使用人だから!」
「お願いするわね。でもあまり綺麗にはし過ぎないようにするわ」
「なんでー」
「あのアマレーヌって子なにか隠してると思うのよね。だからちょっと目をつけられたくないの」
「あぁ、あの子ねー。なんだか相当自分に自信あるみたいだけど、ただの小太りじゃない?!」
「…リリア、それは言っちゃだめ……」
そうなのだ。
私も思ってはいたのだが、あのアマレーヌって子、その自信は一体どこから来てるんだろうと思ってしまう見た目なのだ。
まぁ確かに、見る人が見れば愛嬌のある顔なのかもしれないのが、胸も年の割にはあるのかもしれないが、ただの小太りの女の子なのだ。
別に見れないわけじゃないけど、そこまで誇れるような容姿とは到底思えない…。
「それはそうとこれからどうする?」
「見てくれ重視の貴族らしく、このみすぼらしい体はなんとかしたいらしいから、それなりの食事をくれるみたいだから、私はまず体力をつけるわ」
「いいねいいね!」
「それで義賊でまず1000万ゴルド貯めましょう」
「1000万も?!」
「うん」
「貯めてどうするのそれ?」
「さっきこの家の周り見て回ったじゃない?」
「うん」
「裏の小さな森の先はもう壁があって街だったじゃない?」
「そうだね」
「この家の地下に、義賊の作戦拠点を作りましょう!」
「ええ! なんか格好いい!!」
「外からその地下に入っていけて、この部屋に秘密の扉もつけて、出入りできるようにしちゃいましょう!」
「それめちゃくちゃいいじゃん! でもバレないかな?」
「今後次第ではプランを変更するかもしれないけど、昨日から見てる感じ使用人の人ですらこの家にはほとんど近づかないみたいだから大丈夫なんじゃないかなって」
「まぁすぐにお金がたまるわけでもないしね!」
「そう! 昔読んだ小説に似たような秘密基地がでてきて、なんだかワクワクしたのをさっき思い出したのよ」
「よーし、そうなったら情報収集しなきゃね!」
「お願いねリリア」
「あいよー!」
そして次の日、私はリリアと一緒に堂々と家を出て、拠点に向かい、計画をライールさんに話して、了承してもらえた。
一通り計画を話した後に、
「ライールさんジョルト子爵は知ってる?」
「名前ぐらいは聞いたことはあるが、あんまり知らねーな」
「なんか少し怪しいのよね。娘も」
「ほぉ。んじゃ諜報リストにいれとくよ。娘の方も調べるか?」
「もしついでぐらいで可能なら。頭は良くなさそうだから大したことはなさそうだけど、私に理のある情報が手に入るかもしれないの。個人的な話で申し訳ないだけれど…」
私が申し訳なさそうに言うと、
「何言ってんだ! お前がこのチームのリーダーなわけだし、お前がいないとここにいるやつらはこの生活はできなかった。俺もまさか余生でこんな面白いことが出来るなんて思ってなかったしな! 足も動くようになってきたし!」
そういうとケガしていた左足も使って、まだぎごちないながら歩き出した。
「ありがとうライールさん」
「ああ、だから娘の方も調べといてやっから!」
ここが私の居場所。
私自身が何かできるわけじゃなかったけど、運よく子爵令嬢になったおかげで身分が一気によくなった。
絶対皆守って見せる。
たとえその結果、子爵令嬢じゃなくなることになったとしても、子爵ぐらいじゃ大したことないかもしれないけど、私はこの身分を維持して皆を守れる一つの切り札にする。
私はそんな決意を胸に思い思いに話している皆を見た。