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決意する

私はしばらくして落ち着くと、




「リリアごめんね。もう大丈夫…」


「本当? 私達本当にフィオラには感謝してるんだから」


「そうですよ? フィオラさんがいたから、私はこうやって暖かいところでお腹いっぱい温かい食事を食べれているんですよ?」




と言いながらセリスが暖かいお茶を持ってきてくれた。




「セリスありがとう」


「そういうことだ。だからフィオラ、気にするなとは言わないが、気に病む必要はないからな。俺も自分の指示で人を切らせたことなんて100じゃきかないぞ」




ライールさんはソファーに腰かけてワインを飲みながら言った。




「大丈夫…です」


「しかしこうなると、郵便屋の継続は難しいなぁ」


「そうですね…。ほぼ全ての依頼人と配達先が敵になりえる可能性がありますよね…」


「そうなんだよな」




ライールさんはワインを持ちながら、「うーん」と考え出した。





2人が人を殺した事実は変わらない。


そしてそのきっかけを作ったのが私であることも変わらない。


それなら、私も同罪だ。


2人の罪は私の罪だ。


私も覚悟を決めるしかない。





「義賊をやりましょう」


「義賊?」




リリアが聞いてきた。




「そう。今後はセリスの索敵が一緒じゃないと行動できない。でもセリスは二人の速度についていけない」


「そうですね。私ではリリアさんとアリオンさんについていくことはできません」


「だから、もう全員一緒に行動できる義賊をやりましょう。悪いことをしている奴らを探し出して、その悪事を暴いたり、拠点を壊したりして、人のためになることをやりましょう」


「そりゃいいことな気がするけど、どうやって資金を得るんだ?」




アリオンは頭に「?」を思い浮かべながら聞いてきた。




「裏組織はなぜ存在するか。それはお金よ。何らかしら公にできないことで産み出される、お金と言う甘い蜜に群がる蜂なのよ」


「ほえー」


「そして公にできないことはお金になる。人身売買や強盗だからね。だからそういうところには必ず隠された資産が多くあるわ。その10%程度を頂くことで活動資金としましょう」


「なるほどなぁ」


「ライールさんに鍛えてもらったおかげで、かなりバランスのいいチームになっていると思うわ。秘密裏な行動に特化したリリア、どんな場面でも柔軟に対応できるアリオン、事前に敵を把握できるセリス、そして人がいけない場所に行けて遠くの音を聞けるオフィール。ライールさん流石だわ」


「いやまぁ、もちろんバランスよく全員で支えあえるようにと思って構成したんだが、義賊か…」




ライールさんはワインを置いて「むーん」と考え出した。




「全員が一緒に行動することで、かなり成功確率はあがるはずよ」


「まぁそりゃそうだろうし、こんな集団王国のどんな精鋭部隊にも存在しないからな…」


「だから、リリアとオフィールが諜報活動を行って、私が作戦を立てる。そして戦闘指示をライールさんが出してくれればきっとできるわ」


「うーむ、まぁ少しやってみるか…。だが、フィオラいいのか? 裏組織を叩きに行くとなると、戦闘もあるだろうし今回みたいなことも普通に起こるぞ?」


「大丈夫よ。私も覚悟を決めたわ。私もお父さんのことが解決したらあそこを出て皆と暮らす。一生一緒よ。皆が背負う罪は全て私の罪よ」




するとライールさんは「はぁ」とため息をついて、




「フィオラよ、そんな思い詰めなくていいんだぞ? まだお前だって13歳なんだ」


「いいえ、これは私がリリアのスキルを見つけてから始まったことなの。私もその責任を負う必要があるわ。私が義賊の首謀者よ」


「はぁ、そうかい。まぁ俺はここの暮らしは好きだから手伝ってやるし、いざとなったら俺が何とかしてやるよ」


「ありがとう、ライールさん」




その日私は明け方に、アリオンに運んでもらい寮に戻った。







それから数日、いつも通り寮の掃除と洗濯をしつつ、郵便屋ではなく悪い組織を探しだしたリリアとオフィールの報告を聞くということを繰り返した。




オフィールが聞きつけたあの宿屋の地下はほぼ黒ね。


恐らく若い女性を不法に監禁して、客にそういうことを斡旋しているわ。


まずはここかしら…。




そんなことを思いつつ、いつも通り部屋で本を読んでいると、外からセリダさんに呼ばれた。




「フィオラ!」




私は本を閉じて急いで部屋の外に出た。




「はい」


「一番きれいな服を着て来客用の部屋に来なさい」




そういうとセリダさんは行ってしまった。


一番きれいな服?


一番穴が少ない服かしら…


私はそう思い、一番穴が少ない服に着替えて来客用の部屋に向かった。


来客部屋に入ると、1人の貴族っぽいおじさんとセリダさんが向かい合って座っていた。




「フィオラ座りなさい」


「はい」




私は言われた通りセリダさんの横に座った。




「フィオラ、あんた今日から、このジョルト子爵様の次女になるから」


「え?」


「あんたの父親だよ。リオルナが言っていた人だ」


「え? 本当に?」


「ああ、本当だよ。ほらリオルナが持ってた形見っていうものだしてみな」




セリダさんに言われ、私はネックレスになっている指輪を出した。




「この紋章。ジョルト子爵家の領地で使われてる紋章だよ」


「ほら、これだよ」




そう言っておじさんは指にはめている指輪を見せてきた。


確かに色違いで同じだ。




「これまで悪かったね。ようやく準備が整ったから迎えにきたよ」


「え、あ、はい…」


「そういうことだから、早く準備してきな」


「え、今日?」


「そうだよ」


「13歳と言う割には、随分と小さいね。もっといい環境で一刻も早く暮らした方がいいだろう」


「え、あ、はい…」




と私が返事をするとセリダさんが、




「これを維持するの大変だったんだよ?! リオルナの娘だし、珍しい白髪だし、恐らく美人になるだろうからできる限り目立たないようにさせてきたんだから! もう少し遅かったら肉付きよくして、どっかの貴族にでも売り飛ばしちまうところだったよ!」




とセリダさんはなぜか怒り気味に言った。




「そうですか。確かにリオルナは美人だしスタイルもよかったですからね。そういことでしたらわかりました。とりあえずこれがお約束のお金です」




と言うと、皮袋を机の上に置いた。


置いた時の音的にものすごい金額が入っていそうだ。


500万ゴルド以上はあるだろう…。




「ふん、わかればいいんだよ。フィオラ! さっさと準備してきな!」




セリダさんはそう言うと、革袋を手に取り中のお金を数えだした。




私は言われた通り部屋に戻り荷物をまとめた。


と言ってもほとんど本だけど…。


いつもだったらそろそろリリアが来る時間だ。


異変を察知して何か手を打ってくれているはずだ。


私はオフィールが聞いてくれていることを祈り、




「父親と名乗る人が現れた。ジョルト子爵。どこに行くかわからないからリリアかアリオンに後をつけさせて」









暫くして、大きめの鞄を二つもって部屋の外に出ると、アジェリーさんがこちらに向かってきた。




「ついに出るんだね」


「はい」


「元気でね。本当はもっといいもの食べさせたかったよ…」




そう言うとアジェリーさんはポロポロ涙を流しながら私を抱きしめてくれた。




「アジェリーさん今までありがとう」


「うんうん…」




私がそう言ってカバンを持とうとすると、エシリアさんがかけよってきた。


私の近くに来ると、コソッと、




「リリアからだよ」




そう言って小さなメモを私の手に握らせた。




「元気でね!」




エシリアさんはそう言うと自分の部屋の方に手を振って歩いていった。



私はアジェリーさんから離れ、握らされたメモを開くと、




『私とアリオン二人で後を追うから心配しないで』




と書いてあった。





それを見て、一気に安心した。





私はそう思うとメモを鞄の底にいれ、アジェリーさんに別れを告げて来客部屋に向かった。


部屋に入ると、




「遅いじゃないか早くしな!」




とセリダさんに言われ、




「さぁ行こうか」




そう言われてジョルト子爵は部屋を出ていくので、私は急いで後をついていった。


そして私は寮の前につけられた馬車に乗り込んだ。

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