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戦争が起こるぞ

「さー俺はこんなところだぜ。お前等のことも教えろ。もちろん秘密は他言しない」




今度はおじさんが私に聞いてきた。




「信じるわ。この二人スキル持ちよ。しかも二人とも二つ持ってるわ」




そう言うと、おじさんは大きく目を見開き息を飲んだ。


暫くすると、




「本当か?」


「リリア」


「オッケー!」




そう言うとリリアが消えるように店の端に移動した。




「これでわかった?」




おじさんは唖然としていた。




「あ、あぁ…。脚力強化としかも無音か?」


「正確には脚力強化と無音歩行よ」


「…そんなやつ王国が見逃すはずがないだろ…」


「それは後で説明するわ。それでアリオンが身体強化と空間把握よ」




私が言うと、おじさんは驚いてしりもちをついた。




「お、お前、そ、それは、もう見つかったら大騒ぎのスキルだぞ」


「そうなの?」


「空間把握は聞いたこともないが、身体強化はかつて帝国が大躍進した時の、総大将のスキルだぞ…」


「あら、アリオン凄かったのね」


「お前等もっと俺を敬え!」


「いやよ。アリオンだもの。それで二人は教会で鑑定を受けていないわ」


「はぁ?!?!?! 自らスキルの発動条件を満たしたってことか?!?!?」




おじさんは驚いた声をあげた。




「違うわ。私が見たの」


「はぁ?!?!? スキルを?!?!」


「そうよ」




おじさんは唖然としてその場で固まってしまった。




「ちなみにおじさん知らないのかもしれないけど、おじさんもう一つスキル持ってるよ。スキル3つある」


「はぁ?!?!」


「強化回復。足、自分で治せるんじゃない?」




おじさんはもう動かない。




「やってみたら? きっと体が回復するイメージで足に魔力を集中すればいいんじゃないかしら」




するとおじさんは目を閉じてイメージをしだした。


しばらくすると、




「まだ完璧じゃないが、確かに明らかによくなってる…」


「ほら、よかったわね」


「お前何者だ」


「フィオラよ」


「スキル鑑定は教会の水晶でしか無理なはずだぞ」


「私にもわからないわ。できるものできる。それだけよ」


「しかも俺のスキルは教会の水晶で2つだったぞ」


「知らないわよ。3つあったんだもの」


「そんなことあり得るのか……」


「どお? 鍛えてくれる?」




私がニコッとして聞くと、




「お前等鍛えてどうするんだ」




とおじさんが鋭い目つきで聞いてきた。




「身を守るのよ」


「はぁ?! 十分守れるだろ! というか名乗り出れば、直ぐにでも城からお迎えが来るぞ」


「この二人は住所もない。私にいたっては娼婦の娘よ。そんな子ども達をちゃんと受け入れてくれるの? その腐った騎士団があるような国は」




私がそういうとおじさんは、ぐっと息を飲んだ。




「そういうことか。なるほどな。いいぞ。鍛えてやる」




おじさんはそう言うとゆっくり立ち上がった。


リリアとアリオンは「いえーい!」と2人で手を合わせている。




「その代わり泣き言言うなよ」


「おっさんがな!」




とアリオンが言うと、




「ライール師匠だ!」




とアリオンに拳骨を落とした。




「とりあえず鍛えるのはいいが、お前ら生活できてるのか?」


「余裕よ」


「とても余裕のある見た目じゃねーんだがお前…」


「私は理由があってこうしてるの。噂の郵便屋さん聞いたことない?」


「あーあの、どんなところでも確実に手紙を届けて誰も見たことないってやつか」


「あれ、私達よ」




ライールさんはしばらく沈黙すると、




「あぁ…色々納得だ……確かに2人ならできる…」


「だから収入は余裕よ。5年は働かなくても裕福に暮らせるぐらいはあるわ」


「それってフィオラのお金も入ってない?!」




とリリアが声をあげた。




「いいのよ。ここが使いどころよ。だからライールさん、そのお金を全部預けるから、家を借りてこの二人を鍛えて」


「郵便屋を続ければいいんじゃねーか?」


「最近つけられてるの。ここ数カ月は巻いてるけど時間の問題だから、一旦郵便屋さんはお休みするの」


「なるほどな。それで鍛えようってわけか」


「そういうことよ」


「ちなみにつけてるやつは何者かわかるのか?」




ライールさんがそう聞くと、アリオンが、




「空間把握で見てるから顔までは分からないけど、身長がライール師匠より少し高くて痩せてて、かなりの手練れだ。空間把握がなかったらもう捕まってる」




ライールさんはそれを聞いて考え出した。




「そいつ、いつの間にかその空間把握の検知範囲に現れる感じか?」


「そうなんだよ! いつも、気を付けてるけど、いつのまにか検知範囲にいてリリアと大急ぎで逃げてるんだよ!」


「なるほどな。わかったぞ。そいつは悪い奴じゃない」


「そうなのか?」


「あぁ多分知り合いだ」




私はそれを聞いて、




「ライールさん、知り合いでも言わないでね」


「もちろんだ。二人のこともだが、一番言えないのはお前だフィオラ」


「そうなの?」


「間違いない。戦争が起こるぞ」


「ええ?」


「教会の鑑定水晶で見ることのできないスキルが見える。そんなのスキルなのか何かわからないが、聞いたこともない。もはや現在の世界の在り方自体が変わりかねない」


「そんなに??」


「下手したら教会から拉致されるか、最悪殺されるぞ」


「え…」




まさかリリアとアリオンじゃなくて私が対象になるなんて思ってなかった…。




「そういうわけだから、リリアとアリオンは鍛えてやるし、しばらくは俺がお前も守ってやる」


「強くなってフィオラを守るぞー!!」


「おー…」




アリオンはリリアに腕を持ち上げられて、心無い感じで返事した。








それからライールさんは直ぐに酒場を臨時休業にして、馴染の不動産屋さんでライールさん名義の部屋を借りてくれた。


3人が住むには少し大きいが家の裏に庭のある一軒家だ。


リリアとアリオンはライールさんと一緒にそこに住むことになり、私は事情を話してこれまで通り寮で暮らす。


当面私の存在はバレていないだろうということで、まずはリリアとアリオンを鍛えることを優先するとライールさんは話してくれた。




こうして、どんな場所へも必ず届けるリリアの郵便屋さんは一時休業となった。

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