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【ルイン視点】王国暗部

俺はルイン・リオルダート。11歳。


このリオルダート王国の第3王子だ。


2人の兄も元気だし。第3なので王位につくことは、まぁまずないだろう。


俺自身、王になるつもりなんて微塵もないし。




一番上の兄セルジュと二番目の兄カイエンは1歳違いで、母親がそれぞれ違う。


セルジュ兄上は一番最初に生まれたが側妃の子どもで、カイエン兄上は正妃の子どもである。


ちなみに俺はまた別の側妃の息子だ。



俺の母は権力争いなど全く興味がないようで、「別に王様になんかならなくていいよ」と言ってくれている。


しかし、セルジュとカイエンは違って、どちらが王になるか、本人同士も母親同士も結構対立している。



母のおかげで、俺はそんな王太子争いからは遠いところで、伸び伸びと暮している。


伸び伸びは少し違うか…。




「ルイン様、ご報告にあがりました」




王城の俺の部屋の窓に1人の男が降り立った。




「ザッハ、良く戻った。聞こう」


「はっ」




俺はソファーに腰かけると、ザッハは俺の斜め後ろに立った。




「辺境で噂されていた、人身売買の組織を確認しました」


「なるほど。それで」


「恐らく辺境伯様も関与されているかと」


「なるほど…それは慎重に事を進める必要があるな」


「とりあえず、受け渡しの拠点となっているであろう山小屋は破壊してきましたので、暫くの猶予はあるかもしれませんが、いずれ再開するのは明白かと」


「だろうな…わかった…。辺境伯の関与が決定的かどうかを探ってくれ。それで、対処の仕方が大きく変わる」


「了解しました」


「他は大丈夫か? 下がっていいぞ」


「はっ。あ、そう言えば帰りがてら、王都でチンピラみたいなのを見かけたので、対処しました」


「本当いつまでたってもクズは消えないな」


「はっ。ただですね、チンピラはまぁどこにでもいるやつらだったんですが、その場にいた子ども3人のうちの1人がスキル持ちのようでした」


「ほう。どんなスキルだ」


「恐らく脚力強化。もしかしたら身体強化の可能性もあるかと」


「はぁ?!」




待て待て。


身体強化なんて、そんなレアスキル持ちの子どもがいる?! ちゃんと鍛えれば、騎士団1つ2つと一人でやりあえるようなスキルだぞ?!?!


脚力強化だって、悪い組織に目を付けられないように、直ぐに王国で引き抜くはずだ。


どちらであったとしても、鑑定されたら直ぐに城に連絡が来るはずだぞ?!?!




「教会からそんな報告は聞いたことがないが」


「はい。なので恐らく、教会が隠ぺいしているか、可能性はかなり低いですが鑑定無しで自らスキルの発動条件を満たしたのかと」




スキルは、その具体的なイメージを持ちながら、その箇所や方向へ魔力を流すことで発動する。


なんのスキルかもわからない状況で、具体的なイメージなんてできるわけがない。




俺も暗視と言うスキルを保持している。


ものすごく強力なわけでもないが、結構便利ではある。


暗視を発動するときは、暗いところが見えるイメージをもって目に魔力を通す必要がある。


スキルは千差万別で、しかも人間の本来の力ではないので、それを全て想像するなんてことは難しい。


俺も暗視とわかっていなかったら、絶対試さなかっただろう。


そうなると教会の隠ぺいか…。


これはなかなか根が深そうな問題だ……。





俺は持っているその暗視スキルから、ゆくゆくは王国の暗部の長となるべく、幼少期から教育されてきた。


チェスやカードゲームと言った頭を使うものが昔から好きで、暗視に頼らずとも俺はめきめきと暗部としての能力を伸ばしてきた。


戦闘技術についても、今ではザッハと100本やれば1本取れるぐらいまでは成長している。


おかげでつい最近から、父上に暗部の指揮を任された。




だから伸び伸び過ごしているというより、既に普通に仕事をしている感じなのだ。





しかし、身体強化もしくは脚力強化…。


ザッハが見間違えるとは到底思えない…。




「ザッハ、辺境は一旦いい。そっちを探ってくれ」


「はっ」


「教会の反乱の可能性もだ」


「はっ」


「本件は表に出すと大事になりかねない。まだここだけのこととする」


「はっ」


「後そのスキル持ちも見つけろ。今すぐ王城に引き抜くぞ」


「了解しました」




俺はそう言うと、ぶつぶつと言いながら考え出した。


するとザッハが、




「ルイン様も成長されましたな」


「なにがだ」


「こうやって国を思い、裏から人知れず解決していこうとするその姿勢ですよ」


「本当なら表から堂々とやりたい」


「まぁしかし、この国には、表から堂々とできないことが多いですから。人の性ですな」


「本当に困ったものだ。何も11歳の子どもに暗部の指揮をさせなくてもいいだろうに」


「それもルイン様の努力の賜物ですよ」


「だといいがな。ザッハ、なるべく早く頼んだぞ。もし身体強化持ちで、帝国になんて連れていかれたら、いよいよこの国も危なくなるかもしれない」


「了解しました」




そう言うと、ザッハは音もなく部屋から消えた。


ザッハのスキル無音。


もう暗部の為のスキルと言っても過言ではない。


ザッハはそのスキルと、スキルに頼らない類まれなる身体能力で、平民から王国暗部の主要の1人にまでなった人物だ。




しかし、身体強化もしくは脚力強化を教会が隠ぺいしていたとなると、これは教会の反乱の可能性が一気に高くなる。


なんてことだ…。



俺は腕を組んで、そのままソファーで教会の反乱の理由とその方法を頭の中でシミュレーションしだした。

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