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En-gi2  作者: 奇文屋
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第三十四話

 海が鳴り、波が割れる。

うねりが大きくなり、大きく盛り上がってくる。

盛り上がってくるモノが姿を現す。

「はは、これで」

 呼び出したライトロウゥの声が止まる。

 呼び出されたモノは、海上に姿を現すと同時に崩れ去っていく。

顔、腕、陽に当たると同時に海中に崩れ落ちていく。

「どうした、ライトロゥ?」

 崖の向こう、巨人の残骸から声が聞こえる。

「この下でどれだけコイツを封じてたと思ってるんだ?」

 姿は見えず嘲笑う声が響く。

「フォンテかっ!」

 怒気を含んだライトロゥと、

「当然だろ」

 悠然とした声の主、フォンテ。

「ま、これでも神に列せられてるんでな。それにお前の事嫌いだし」

「貴様っ」

「なかなか面白い見世物だったよ。こうなっていると予測しないお前は滑稽だったな」

 高笑いが響く。

「そして、お前の目的がこうなっていると知った時の顔は他の連中にも見せてやりたかったな」

「そこを動くなぁ!」

「海波紋、返してもらおうか」

 杖を声のする方へと向ける。抵抗しているようだが、敵わずに杖がライトロゥの手から離れる。

「一つの体に二つの心がある以上、完全とは行かないようだな」

 杖は空中に留まっている。

「さて、そろそろ退場してもらおうか」

 杖の先がライトロゥに向けられる。

「ここまで、どれだけの」

「知るか」

 蒼い光が太陽光と混ざる。

 幻想的な光に包まれる。徐々に光量は増し目を開けてられない。

「いずれ。この借りは」

 その呟きを最後にライトロゥは崖の向こうに消えた。


「さて、鬼姫」

 声のする方に顔を向ける。

「それを預かっておこうか」

 手に持っているあの長刀を手放す。

「それは人の手に余るからな。代わりにこれを返そう」

 海に落ちた花火が空から落ちてきて、私の前に突き刺さる。

「面白い槍だな」

「ええ。だから使ってるの」

「これからもソレを使うことになるかもしれん。その時も頼む」

 陽光に照らされた花火が煌く。

 使う、と言うのはライトロゥが関係していることを言っているのだろう。

「そうならない様に願いたいけど」

「無理かもな」

「そちらの事情じゃないの?」

「ま、こっちはこっちで色々とあるんだよ」

 沈黙が続く。

「じゃ、頼んだ」

 海は静まり、海上はカモメが飛んでいる。

 遠く水平線には船がゆっくりと進んでいる。

「頼まれても・・・・・・ねぇ」

 とはいえ、神族に頼まれ事も悪くは無いかな・・・・・・と思う自分がいる。



 一月が経った。

海波紋の事を伝えると、海神フォルテの手に戻った方がいいとの事で収まった。

元々、伝説上の代物だしその存在も教団内部しか知らなかったし、世間に公表しても今更無意味だろうとの事だ。

 杖の安置所には数人の遺体が放置されていて、遺品から誘拐犯と同一組織と判明し、事態はリレーウェンだけに収まらず、騎士団が調査に動いている。

 ロナも命に別状は無く車椅子を乗り回している。

 トモも教団の近衛に推薦され、毎日訓練しているらしい。

 そして、私は今リレーウェンの海上を進んでいる。

 潮風が頬を撫で髪を舞わせて駆け抜ける。

遠くに見える諸島。海面に聳える断崖と緑に覆われたシュノアードの天蓋。

 ・・・・・・またね。エリスさん。

 そう呟いた声が聞こえた。

 ロナは見ているのかな?

天蓋の上、本部のある方へと目を凝らす。



 波を越え、飛沫を上げて船は進む。

 真っ青な空に真っ白な雲の中カモメが風に漂っている。

 次の港を目指して。


〜あとがき〜

 ここまでお読みいただきありがとうございます。

収穫と反省を次回に活かしたいと思います。

次回もよろしくお付き合い下さいませ。


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