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En-gi2  作者: 奇文屋
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第三十二話

 森を抜け、祭壇を左手に見つつ再び森に入る。

月も傾き、東の空が徐々に白みを帯びている。

「さぁ、新しい一日の始まりだ」

 茶化している訳でもなく、そう思う。

今日、伝説は現実になる。

 海底に眠る巨人。

それが今日、蘇る。

心が踊る。待ちに待った日が今日なんだ、冷静でいられる訳が無い。

 視界が開ける。

 朝靄に揺れる海面。そのずっと深くに巨人が待っている。

「もう少し」

 キミをそこに封じた宝杖海波紋と、封印者の血統の血はここにある。

後は・・・・・・。

「俺の仕事だな」

「はい。任せます」

 ボクの心に存在するもう一人のボク、いや、ボクの支配者というべき存在に体を譲る。

 杖を天に掲げて念じる声が心に響く。

 深く暗い感情が心に響く。

 

「見つけた」

 少年は背中越しに私を見て、

「よぉ」

 目には冷たく暗い感情を持ち、声は威厳を感じる。

 何か、おかしい。

 短時間でここまで雰囲気は変わるものなの?

「どうした、エリス?」

 振り返ったその顔はあの少年、しかし、受ける印象は、

「久しぶりだな」

「そんなに時間が経ったかしら」

 一歩進むと一歩下がる。

 嫌悪感と得体の知れない恐怖。

彼の体からはそれらが溢れている。

「あぁ、あの時以来だろ」

 くく、と小さく笑う。

 その笑い方、声・・・・・・意識の底の底。心に刻み付けられた声が蘇る。

「・・・・・・ライトロゥ」

 嬉しそうに笑う顔が邪悪に染まっている。

「覚えていてくれたか」

 花火を構え、笑う相手を突き刺す。

 体を回し、避けて柄を掴む。

「いきなりだな」

 間近に見る顔は少年そのものだが、あの日あの時一瞬しか関わらなかったライトロゥの印象しか受けない。

 足を蹴り上げて、距離を取る。

「どうした?」

 邪悪な雰囲気。

 対峙しているだけで気圧される威圧は神そのもの。

「そう言えば、不老だけではなく不死の呪いも受けたんだってな」

 長刀がこっちを向く。

「試してみようか」

 くく、と低く笑う。

 踏み込んで大きく振りかぶり打ち下ろす。

 花火でそれを受け、転じて反撃に出る。

 神とはいえライトロゥは武芸に秀でている神ではない。

私も武芸専門ではないが、それなりに戦闘を経験してきた。

 神相手は初だが。

 技術は同じ程度と見たのか、距離を取り長刀を掲げる。

そして闇が覆う。

 星も月も消える。風が止み、空気が体に纏わりつく。

本能が危険を察知して槍を動かす。

闇に飛ぶ火花が相手を照らす。

「一流の戦士の様だ」

 感嘆の声が聞こえる。

「俺もお前も腕はそこそこなんだが、今のはすごいな」

 ほんの少しの動作でも疲れ方が違う。

 気配が見えないし読めない。

「次も防げるかな」

 大きく息を吐く。

「疲れているのか?」

 言い返す体力がもったいない。

 声が止み、剣戟が襲来する。一撃目は防いだが二撃目は防ぎきれず、

「惜しかったな」

 腕を斬られた。少し血が流れる。

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