第三話
結局、空腹に耐え切れず近くの屋台で済ませた。
「ありがと」
おばちゃんに礼を言ってそこを離れる。
満腹でここまで幸せを感じれるのか? って思う位に私は今、幸せだ。
ホテルの場所はおばちゃんに聞いたから、迷う事無く真っ直ぐに向かう。
港に差し掛かり、潮の匂いのする風を浴びて目を閉じる。
波の音と風の音。変わる事の無い自然の音色に耳を傾ける。
遠くには中央通りの喧騒も聞こえる。
近くには剣戟らしき音。
私は花火を持ち直し、構える。
剣戟は近く、一合二合と響いてくる。
関わる気は無いが、足はそちらへと向かう。
港を中央通に戻る途中の路地。
そこで剣を降り、受け止める三つの人影。いや、その後にもう一人。
状況は一人が一人を守り、二人がそれを攻め立てている。
守っている一人は髪は黒く小柄だが鍛えてある印象を与える体格。両手に短い剣を二本持ち、舞う様に剣を振るい二人を相手に互角以上の戦いを演じている。
二人の男の武器は起動され光っている。その光りは相手を傷つけることの出来る熱を帯びた刃。
二人を相手に立ち回っている方は起動していない。
それでも受けられるが、殺傷能力は無い。が、叩かれると痛い。
私に気付いた二人組みは何を思ったのは、一人は私の方へと向かってきた。
「もう一人いたのか!?」
「え。あ。ちょ」
違う、と言いかけたが男は剣を振りかぶり、間合いに入っている。
レーザーが起動している剣を振り下ろし、一歩詰めて突き出してくる。
それを見切って右に避け、
「ちょっと、なんなの」
声が聞こえてない筈の無い距離。
対峙する間も無く、攻めて来る。
払いから振り下ろし。突きから切り上げ。間断無く攻めてくる。
「ちょっと。話を」
私の問いかけにうは一切答えない。
無言で斬りかかって来る。
「無駄だ。さっきから俺も関係ないと言っているがこいつ等は聞かないんだ」
守っていた一人、少年と言ってもいいほどの姿。
後にはいつの間に倒したのか、男が一人倒れている。
私の前に出た瞬間、ダン、と強く踏む音が聞こえたら男が見くい呻きと共に倒れた。
静かになった港に移り、出会った二人連れと夜の海を眺める。
「で、お前はどこの誰で、なんで追われてたんだ?」
二人連れの男の方が問い詰める。
「あれ、知り合いじゃないの?」
「違う。さっき・・・・・・アンタが来るちょっと前にコイツが走ってきたんだ。そしたら、コイツが俺の後ろに隠れてあの二人が襲ってきたんだ」
二人の視線の先には、ちょこんと座っている少年が、きょとんとこっちを見返している。
「助けてくれてありがとう」
「礼よりも質問に答えろ。おい」
剣の先で肩を突く。。
ワザとなのか本気なのかは少年の表情からは読めない。
「おい、じゃありません。『ロナ=ハーレイク』という名前があります」
「じゃ、ロナ。あいつ等はなんだ?」
「彼等は」
言いかけて言葉が止まる。
男もその先を促そうとはしない。
理由は、
「・・・・・・囲まれたか」
辺りには殺気を含んだ静けさ。
私達はロナを庇う様に前に立つ。
後からのんきな声で、
「お二人のお名前を伺ってませんでしたね」
「こんな状況で名前なんて聞いてどうする?」
「僕は名乗りました」
状況が分からない筈はないだろう。
が、少年だけは警戒も緊張も見られない。
「私はエリス」
「『トモ=ロック』だ」
「じゃ、お二人にお願いがあります」
「悪いけど!」
「後にしてくれ!」
確認したのは五人。
その五人が一気に攻め寄せる。持っていた花火を握りなおし、なぎ払う。
鈍い感触が手に伝わる。まず一人。
一歩引いて構え直し二人目の攻撃を柄で受け流して体勢を崩させて打ち下ろす。
三人目は男が倒していた。見れば、足元に二人倒れている。
「ここはヤバそうだ」
トモは一人、走っていく。
「おい、急げ。新手が着たら面倒だ」
私はロナの手を引いてトモの後に続く。