第二十二話
パレードが続く。それは歓声とそれに答える声に包まれて。
華やかで煌びやかな行進は、ゆっくりと進み、やがて止まった。
後続からは疑問の視線が前に向けられて、沿道からは歓声が止まり戸惑いの声が囁きあっている。
俺は人垣を掻き分けて、パレードの先頭を目指す。
その速度は上がらないが、しょうがない。そう思っていたところに、何かが壊れる音が響く。
続くのは悲鳴。それがパニックへと繋がり俺は押し戻されそうになるのを堪えて前に進む。
「随分と大胆な事をするな」
ロナの乗っていた車の周りにいたのは私達、親衛隊。
それなのに、この騒ぎを防げなかったのは油断としか言いようがないな。
「まぁな」
目の前にいるのは細身の剣を持った男。
「カノ」
震えているロナに振り返り、
「大丈夫です。私が抑えますから」
声をかけて、剣を抜いて一撃を受け止める。
「じゃ、抑えてもらおうかな」
「期待に応えて見せよう」
ロナを他の親衛隊に託して、この男に意識を集中する。
輝く刃を避けて振り下ろす。立ち位置を変えては突き出しなぎ払う。
広くない車上。足取りも軽やかに剣を交える二人。
見ようによっては、これも演出と言えなくない。そう思っている観衆もいるだろうが、御子はその場から人垣に守られる様に去って行くとなれば、それらは演出ではなく悪意を持った行動と写るだろう。
今、見ている者の声は次第に広がり、見ていない者も感じ取り騒ぎは際限なく広がっていく。
剣を交え、光を打ち合う二人には周囲のざわめきは耳に届かなかった。
一人はそれを狙い、一人は覚悟していたから。
「お前がレクストと闘った親衛隊だな」
少し、距離を開け聞いてくる。
レクスト・・・・・・。
「さぁな。初めて聞く名だな」
男は低く笑い、
「ラルインでお前が闘った男だ」
「あの時の」
変わった形をした剣を持った男。
涼やかな目元に強い意志を感じた男。
「だとしたら、どうだというのだ」
「いや、確認しただけ」
言葉が切れると、攻撃が始まる。
狭い足場では、攻撃は単調になる。が、速度も技量も一流の相手。
剣も突きに特化している形状。こういう場所には適しているな。
私は一段降りて、上段からの攻めを防いで、さらに降りる。
地面に辿り着き、更に引いて相手も降り切った直後に攻めに転じる。
突きから斬り上げる。が、下がって避けられる。
しかし、その後にはさっきまで乗っていた車がある。
それ以上は下がれない。左右に動けばそのままなぎ払う。向かってくれば突きの的、
攻守逆転。
捕らえれば、組織の規模と目的が分かる。
狙うは右肩。武器を持っていなければ更に優勢になる。
この状況でも不敵に笑っている。何か策があるのか?
いや、策があろうともその前に捕らえてみせる。