第二十一話
賑わうなんてものじゃない街をぶらぶらと歩く。
一緒に来ていた連中。トモとかはもう何処にもいない。
「何処行ったのかしら?」
まったく、子供なんだから。
振り返って探すのも面倒なんだから。その辺の事をもう少し考えられる大人になって欲しいものだ。
別にいなくても、祭を楽しむのに何の支障もないけど。
しかし、人が多い。歩くのも一苦労。縫う様にとは行かず、ただ押し流されいるだけ。
今は車は通れないが、夜になるとパレードが始まる為に車道は歩けなくなる。
この数の人が両側に集中する。考えただけで背筋が震える混雑になること確実。
押し流されて、歩いて、食欲を満たして一息つける所まで来た。
縁石に座り、息を吐いて地面を見る。流れからでると、一気に疲れが・・・・・・。
「さて、どうしようかな?」
ストローを加え、目を向けると人の壁がゆっくりと右へ左へ動いている。
あの集団に向かう鋭気を養っていると、ここに来る前に渡されたケータイが鳴る。
「はい」
「今、どこにいる?」
カノの声。トモがどこかに行った事と現在地を伝える。
「分かった。その辺りで待ち合わせよう」
その声に緊張が隠れていた。
「すごい人だな。夜になるともっとすごい事になりそうだな」
「あぁ」
向かいに座っているウィラルの言葉にはもう一つの意味が隠れている。
夜に始まるパレードは車道を使う為に見物するには両側の歩道しかない。
もう一つは、そのパレードで騒ぎが起こる事を予測してのもの。
騒ぎを起こすのは私達二人と手配しておいた増援。三日前に貰った諜報員からのレーリアス大祭における警備の配置と御子周辺の情報。それに基づいて立案した計画。
その為の準備、配置はすでに終わっている。後はその瞬間が来るのを待つだけ。
「お前達が言ってた連中も来ると思うか?」
「一人は御子の親衛だから来るだろう」
「女の方は?」
あの不思議な槍を使う女。纏う空気もどこか違っている。
「さぁ。どっちでもいい。任務を果たせればそれで」
どっちでもいい。
そう言った瞬間、堪らなく会いたくなった。
陽が落ちて、月が浮かぶ。
星の煌きも今は霞み、華やかな人口の光りが世界を照らしている。
「はぁ〜」
感嘆、とはこういう時に使うんだと言う事を実感する。
レーリアスを奉るって聞いてたから、もっと厳かなものかと思っていたら予想を上回る華やかさ。
パレードの道筋はエールドにあるレーリアス像から始まり、進路を北にとって街を抜け、『シュノアード』の麓まで続く。距離はおよそ5キロ程。
様々な装飾を施した車、煌びやかな衣装を纏い躍る人。楽しそうに笑い沿道に手を振る人。楽器を奏でながら歩いている人もいる。
このパレードは、かつてレーリアスがリレーウェンを襲う蛇の討伐からの帰還の様子を表しているらしい。先頭を歩くのは『海神の御子レーリアス』
後に続くのは災いを振り払った英雄を迎える市民達。
今回のレーリアス役は、
「来た来た。ロナー!」
トモが先頭を歩いてるロナに声を掛ける。
ロナは悠然としている。緊張する風でもなくいつも通りのロナ。
二階建てバスほどの大きさの車に乗り、その一番上で笑っているロナ。沿道に手を振り、歓声に応えている。私達を見つけて、車から落ちそうなほどはしゃいでいた。
「アイツ、意外と大物だな」
「意外ね」
奇しくもトモと同じくロナの評価を改める事になった。
ロナが先に進んでもパレードはまだまだ続く。トモはもう少し見てるらしいので、私は人の多さに疲れてきたので、休憩をしに人気の無い場所へと向かった。