第十二話
クーラとの再会は懐かしくあったが、状況はそれに浸れない。
彼女からの情報は警察からの提供。独自に調べる様に依頼したが警察との折衝が難しいらしいとの事。
「彼等の顔も立てないと」
と、呟いた顔には諦めが浮かんでいた。
こちらはこちらで対策を考えないとって言う事で、ひとまず話は終わった。
「おい、エリス」
トモが不機嫌な声を上げる。
「ん、何?」
振り返ると、トモは腰に手を当てて、
「ちゃんと説明しろよ」
「何を?」
「何をって・・・・・・」
辺りを見回して、そっと近づいて、
「お前の事だよ」
小声で呟く。
ロナやカノには聞こえたらしい。じっと私を見つめている。
薄暗い廊下から歩みを進めて、風が気持ちいい庭に出る。
短く刈られた芝生の上に座り、
「えっと」
空を見上げ、太陽の眩しさに目を閉じる。
懐かしい記憶が、次々蘇ってくる。
殺気を隠そうとしない知り合い達。
孤独と恐怖に襲われ駆け抜けた山道。
夜空に赤く染まる大聖堂。そして・・・・・・。
意識を取り戻した私は、ここが何処なのか、なぜここに居るのかが分からず、調べようにも体は動かなかった。
意識は冴えているのに。
もどかしさに苛立ちながらもどうしようもない現実に、拳を握ってぱふっとベッドに怒りをぶつけた。
あまりの情けなさに笑えてきた。
明るい天井を眺めていると滲んできた。
流れ落ちたそれはまっすぐベッドへと滴った。
涙の訳は自分でも分からない。ただ自然と流れた。
数日はベッドの上で過ごし、ようやく体が言う事を聞き始めた。
私の身の回りの世話をしているのが『ノレージュ』という少女。
姿形は私達とはなんの変わりも無いが、本人の言葉によれば、
「私達は、あなた方の言う『神』ですね」
と、満面の笑みで言われた。
もちろん、はい、そうですか。と納得は出来ない。
神様が存在している事は信じている。
しかし、目の前に現れるとは思ってはいなかった。
「その顔は信じてませんね」
何か納得出来る様な事をするのかと思ったら、
「ま、信じる信じないは自由です」
疑っている私を気にする風でもなく、自分の仕事を始める。
見た目は私より年下に見える。
ヒラヒラした服を気にしながらテキパキと掃除を進め、私の着替えを用意し、食事も運んでくる。
更に数日そうやって過ごした。
朝。
ベッドから降りて、窓を開ける。
体いっぱいに降り注ぐ陽光がこんなにも気持ち良いなんて。
目を閉じ、風を感じ、頭の中を真っ白にする。
聞こえるのは鳥の羽ばたく音。風に揺らぐ葉の音。
そして、ドアの向こうからパタパタ急いでくるいつもの足音。
「おはようございます」
いつもと同じ様に元気良く挨拶して入ってくるノレージュ。
違うのは私がベッドに居ない事だけ。
「あ。起きても大丈夫ですか?」
心配と嬉しさとが混ざった表情。
それを見ただけで、彼女がどれだけ私を心配してくれたのかが分かる。
「ええ」
微笑んでそれに答え、
「綺麗な所ね」
視線を窓の外に向ける。
真下には綺麗に形作られた木々が並び、石畳が敷き詰められている。
その先には大きな壁。というか城門が聳え、更にその先には峰を連ねる山々。
頂にかかる雲が風の吹くままに流れている、麓には一際高い塔を中心に様々な家々が並んでいる。
「良い眺めでしょう」
ノレージュは手に箒を持ったまま私の隣で同じ景色を眺めている。