第一話
見渡す限りの青い海。
波を乗り越え、また乗り越えて船は進む。
甲板にいるのも飽きて、船内へと戻る。
空いてる席に腰を下ろし、窓に目を向ける。
ガラスに映る黒色の髪に蒼い目。
ガラスに映った私と目が合った私は退屈そうに海を眺めている。
「ふぁ」
欠伸をかみ殺して、まだ続く船旅にどうしようかと思案を巡らせる。
目を船内に向けると、ちらほらと人がいる。
私の前の座席には本に夢中になっている少年。反対側には私と同じ様に窓の外を眺めている男。
遠くでは子供と話している母親。通路を走り回っている子供たち。
「間もなく、『ラルイン港』に到着します。お忘れ物・・・・・・」
ようやく到着か。
長かった退屈な船旅も終わるとなると、なんとなく寂しい。
私は荷物を集め、待ち望んだ懐かしい大地へと想いを馳せる。
がやがやと騒がしい甲板。
その最後尾に私は立っている。
ぞろぞろとゆっくり進んでいく列をバッグを抱え進んでいく。
下船の手続きが終わり、大地に足を踏み込んで思いっきり背伸びをする。
「うーっん・・・・・・つぁっ」
縮まった体に血が流れる。
頭がくらくらする感覚が収まるのを待って歩き出す。
刺すような視線を感じて、足を止めた。
「またね。『エリス』」
雑踏の中、誰かが私の名を呼んだ。
「ん?」
人込みの中、私を呼んだ相手を探すが・・・・・・見当たらない。
誰? 私の知り合いがこの船に居たの?
疑問は緊張を産み出し、背中に背負った長柄をいつでも使える様に持ちながら歩いていく。
神話の舞台にもなったと言われている『リレーウェン諸島』の首都『ロクレス』
ここ、島の南部に位置するラルインの港から北上し島の中央に向かうと島の象徴『聖王ルトー』が築いた『王都ガルドレイ』 北部には頂上には『海神の御子レーリアス』の石像が祭られている『シュノアード』を中心に峰を連ねた山岳を利用した大規模な城塞が築かれ『ネーサリアの天蓋』その眼下には『エールド』の街。
南部には交易で栄え、『ハロスト』の大河を越え、『イラルナーク』の草原を駆け抜けると海を越えた文化や人が交じり合う『ラルイン』
様々な文化が交じり合うから、常に喧騒に包まれた街。
神話では堕ちた神子『ライトロゥ』達とレーリアスと激戦を繰り広げた島とか、
島内の戦乱を収めた聖王ルトーの軌跡とか、
海の向こうの大国との激戦の後とかが観光スポットになっている。
以上、パンフレットに載っていた事だ。