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Prolog
ある日突然、勇者に選ばれて旅に出た、非力で泣き虫な少女は、魔物から逃げている途中にクリっとした紅い目の黒い毛玉の魔物と出会う。一緒に旅をすることになった2人の冒険譚。
草原を、1頭の馬が走っていた。
その馬に乗っているのは奇妙な取り合わせ。
「次の国は、小麦が特産品だったよね、確か」
武装した女性と
「その畑に最近人喰い蛾が出て、畑に行けないって話だったな」
黒くてふわふわした毛玉の魔物。
「人喰い蛾っておどかせばすぐ逃げるよね……」
「普通の農民でも勝てるような相手だよな……」
馬にくっついて乗るその様子からはお互いへの信頼は感じ取れれど、警戒は微塵もない。
「……まあ、行ってみれば分かるよね!」
「お前いっつもそれじゃん……」
並足で走る馬の頭の向こうに、国の壁が見えてきた。