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 >ENDING:Route A

【 >ENDING:Route A 】



『初回』の僕は、一先ず友人を捜した。携帯を通話アプリに切り換え、友人のアカウントを見付けると発信した。


 出ない。もう一度。

 出ない。もう一度。

 出ない。もう一度……。


 繰り返したけど、友人は一向に出なかった。埒が明かない。捜しに行くか。廊下の床は抜け落ちてるか散乱する残骸が散らかっていて、渡れそうも無い。覗ける階下も似た感じだ。焦れる僕へ、彼女が遠慮がちに意見した。

「保健室」

「え、」

「これだけの騒ぎだもの。職員室とか、保健室とか残ってる先生のところとか、行ってるかも……。行ってみない? それに……」

「それに?」

「怪我、治療しよう?」

 何も知らなかった『初回』の僕は上手く立ち回れず怪我をしていた。運が良いことに軽傷だったけれど。




 繋がらないことに焦っていても仕方ない。僕は彼女に従って瓦礫や倒れる人の合間を抜け保健室へと向かった。

 倒れている人は不思議なことにあんなに吹き飛ばされ、壁を壊す程だったと言うのに生きていた。無論、無傷ではないが。

 僕たちでは到底運べないので、先生を連れて来る、とだけ告げて下へ進んだ。

 この際、僕は違和感を覚えた。何なのかは、すぐあと判明する。


 保健室で治療を受けた僕は、友人と遊んでいたクラスメートから友人の死を知った。




 ああ見えてお調子者で小心者、だけど、とても頼りになったし、いざと言うときは自分より明らかに強い者にも立ち向かって行った。


 逃げられる距離にいたのに、目前で命辛々逃げて来たクラスメートを庇って。囮になって。


 友人が死んだ。よくつるんでいた僕には思いの外ショックだったらしい。信じられなくて、僕は。

「……あ、駄目っ」

 制止する彼女の声を振り切って友人を捜しに行こうとした。しかし。


 クラスメートが言った「行っても、無駄だよ」と。


 どう言う意味か尋ねた。彼曰く、「友人の遺体は消えてしまった」と言うのだ。

 何を言っているんだと、一蹴したのを覚えている。


 結果から言って、クラスメートの言うことは正しかった。それは追い追い、トーナメントで戦うためにレベルアップする上で、否応にも知ることになった。


 死ねば、人の体が消えるのだ。

 忽然と、痕跡だけを残して。

 僕の感じた違和は、“ここ”に対してだった。混乱して立ち尽くす者、逃げ惑う者、威嚇していた者……倒れていた人数が、記憶していた数より格段に減っていたから。




 後に、僕は原理を知ることになった。


「島を覆う半透明の膜。この膜のフィールド内で死ぬと、肉体は分解され消える……いや、吸収されるらしい。吸収され、どうなるかと言うと、生まれ変わるんだ


 レベル上げ用の、化け物として」




 僕は当初トーナメントに消極的だった。だけども、トーナメントで勝てば出られるかもしれないと言う噂が囁かれ、他のトーナメント参加者から仕掛けられるたびに、僕は戦わざる得なくなった。

 トーナメントで負けた者は、参加資格を失い力も無くなってしまうが、化け物との戦いと違い死ぬことは無く、勝った者に従属することで力も失わずに済むそうだ。

 化け物と戦っても、トドメを刺されない場合ならある程度怪我を負っても大丈夫らしいけど。


 僕にとっての初戦。僕が勝ってしまった相手は好戦的な、隣の高校の生徒で、なかなかの強者だった。


 島の向こうで帰りを待つ家族が心配だから、自身のためにも何をしても優勝しろと焚き付けられた。


 それに、彼女もチュートリアルを経てダウンロードしてしまい、トーナメント参加者となってしまった。ただ彼女の場合は、早くも僕に属したため、僕と戦う必要は無かった。


 参加者同士が搗ち合うと、脳内でナヴィゲーションされたあと、携帯を使い『戦闘』『降参』と言う項目を選べと迫られる。戦う気が無く、相手に属する気が在るのなら『降参』と言う選択を押せば良い。不戦敗として、戦わず他の参加者に服属出来る。




 こうして戦い増えて行った仲間と僕は激戦を潜り抜け、やっと、事の原因を突き止めた。

 戦うにつれ、増えた仲間の指摘に、僕もどうしてこうなったのか、気になったんだ。



 化け物と戦い、もしくは襲われ死した者の末路を、その事態を引き起こしたヤツから聞かされた。滔々と陶酔したかの如く語るヤツに、怒りと憎悪が湧いた。仕様が無いじゃないか。僕は聖人君子じゃない。友人の笑顔が脳裏を過った。面影も無いので、どれが友人を素材として造られたのか、判別出来なかったし知ったのは終盤だった。


「……終わりだよ」


 僕は原因と思われたヤツを倒した。梃子摺ったけど、仲間と、彼女と協力して辛勝した。


 終わらせた……つもりだった。


 エンディングメーターが短いのも、終わるからだと信じていた。


 誤信だと、気付かずに。




 ヤツを倒して優勝し、僕は彼女と手を取り合って──────


 僕の頭の中で、声がした。







“おめでとうございます”

“優勝者には、素敵な賞与特典ボーナススキルが与えられます”



“ボーナススキル、発動します”







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ゲンシツウ─あざろぐ。
aza/あざのブログ。

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