表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/13

 >TUTORIAL

【 >TUTORIAL 】



「大丈夫……?」

「あ……」

 彼女に言われ、僕は我に返った。

「そうだ、連絡っ」

 メール画面を仕舞って、通話アプリを起動しようとして──────




 ズッ……


 ガ

 ッ

 シ

 ャ

 ァ

 ア

 ア

 ア

 ン

 !


 廊下から、階段に向かって、人が。


 人が、吹っ飛んで来た。




 そうして、足音と呼ぶには随分な重低音が間髪無く、連続した。振動も来た。僅差無く僕と彼女が身を潜める防火扉が軋んだ。扉の嵌まっているコンクリートに罅が入り、爪が。


 爪が、食い込んでいた。


「……」

「……」




 あとは、無我夢中だった。

 リンクを押したのも、偶然だ。僕は彼女を庇い、払い除けられ飛ばされて。

「……ぁ、」

「やめ────」

 彼女に迫る化け物に、無様に転がったまま手を伸ばしたとき、もう片方の手が、タッチ画面に触れた、だけ。


 僕は、偶然だった。




“チュートリアルへようこそ”

“我々は、あなたを歓迎致します”

“さぁ”


“選択してください”




“生きるか”

“死ぬか”




 どうかしていたんだ。

 でもあのときは、まともに考えられなくて。


 どうにかして彼女を助けたかったから。




「生きる、に、決まってるだろ!」


 彼女と化け物の間に入ろうと体の痛みも無視して走り出した。




“……。音声入力致しました”

“これより”

“チュートリアル、開始致します”




 画面を確認した訳ではない。




『初回』の僕


は。



 けれど『二回目』では見た文言はそんな風だった。『三回目』も。『四回目』以降は見なくなった。

 もっとも、『三回目』は実際には、“『四回目』のとき”だった。


 正真正銘の『三回目』のときは、僕はチュートリアルをやっていないから。




 ……ともかく。




 僕はこのチュートリアルにアクセスして、“生きる”と選択し。

「……何だよ……」

 力を手に入れた。同時に。


“説明を聞きますか?”

「えっ」

 耳元で、や、頭の中で、声がした。




 僕はここで自分の初期スキル、生体メーター各種、時限メーター……それと。


 エンディングメーターを知る。


『四回目』以降説明はスキップして省いたけど。当時は助かったなぁ。




 結果僕は辛くも勝利した。


 血は出たけれども、同じく生き残っていた保険医曰く額を切ったのと打撲だった。『初回』で軽傷だったのは幸運だった。

 まぁ、『二回目』も似たようなもので、『三回目』はまず戦っていないし、『四回目』はアクセス出来なかったんだけど。


 彼女を救い、自分も満身創痍ながら生き延びた僕。

 これからが“地獄の始まり”だった。




“チュートリアル、クリアおめでとうございます”

“経験値とボーナスポイントがXXXXp”

“成果によりメーターが推移致します”


“正規版ダウンロード開始”

“ダウンロード中……”

“正規版ダウンロード完了”

“おめでとうございます”

“レベルが2アップ。スキルがクラスチェンジします”




“トーナメントへの登録が完了致しました”

“ただ今よりトーナメントへの参加が可能です”

“トーナメント初戦へ、参加しますか?”




 握っていた携帯に選択が表示された。


“する”

“しない”




『初回』の僕は、“しない”────すなわち“保留”を選んだ。







【 >NOW LOADING... 】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲンシツウ─あざろぐ。
aza/あざのブログ。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ