18話
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「うんうん、そうかそうか! いやー若いっていいねー!!」
アンリさんは僕の肩をバシバシとニヤニヤしながら叩く。僕らの関係を思いっきり勘違いされているのだがあんな大胆なことを公衆の面前で言われてしまったら無理もない。(なんなら僕もそう思ったまである)
当のサラは満足そうな顔をしているがその様子を見るに先程の自分の言葉が周りにどのように聞こえたか理解してないように見える。
「痛いですってアンリさん! それに別にそういうのじゃないですし! そもそもまだ一緒に行くとは」
「え!? やっぱり片腕の私じゃ迷惑ですか!?」
「いや、迷惑というかサラが一緒だと現地のこと何も知らないから助かるんだけどここから危険も多いだろうし……」
場が何やらごちゃごちゃしてきたがさせた当の本人であるアンリさんはポンッと自分の胸を叩き自信ありげに言い放つ。
「なるほどね。つまり君たち2人を応援するにはその腕を私が何とかすればいいと!」
「アンリさんに出来るんですか?
「私はできない!」
ズコー
サラの問いにつから強くアンリさんはそう答えて思わず僕とサラは一昔前のリアクションのようにずっこける。
「でも情報はあるよ」
そんな僕らのリアクションを面白そうに見ながらアンリさんは続ける。
「情報?」
「そうそう! なんでもお隣のルーロ領のバイエルには凄腕の機械技師がいるそうよ? なんでも機械人形造り専門らしいの。もしかしたらバイエルに行けばサラに合う義手が手に入るかもしれないわ」
「バイエル、ですか。確かにあそこはカガクの街ですからね。こっちよりは良いものが手に入るかもしれません」
「それに幸いなことに2人は今回の活躍で報奨金たんまりだからお金には困ってないでしょ?」
アンリさんの話を聞いたサラはうーんと唸る。僕にはこっちの国の地理はさっぱりだがどうやら2人の話す街は機械系が強い街らしい。日本で言うところの秋葉原のようなイメージだろうか。
それにアンリさんの言う通り僕らの懐には死にかけたおかげで、ある程度余裕がある。もし本当にサラの腕の不便が無くなるとしたら是非とも行っておきたいとは思う。
「どうしましょう、スバルさん」
「どうしましょうと言われてもなー。でももしサラの腕が治るというか不便じゃなくなるなら行こう、その街へ」
自分のために行ってもいいのかと不安そうなサラに僕は力強くそう言う。
「それならきまりだね!」
僕らの次の予定は決まった。
ルーロ領とはこの国の北に位置する地域でありその中心バイエルは様々な職人が集まる街であるらしい。僕らの目的はそこでサラの義手を手に入れることである。僕らはアンリさんの契機祝いの後僕の体調、そして旅立ちの準備に2週間近くかけてようやくアンリさんとポートミルの街で別れてバイエルに向けて街道を北へと進んでいた。
「アンリさん一緒に来てくれると思ったのになー」
またもや保安隊のご好意により譲り受けた馬車に揺られながら片腕で器用に愛銃と愛剣のメンテナンスをする。
「仕方ないよ。アンリさんもあの街でやることがたくさんあるって言ってたし。だけど確かにそろそろ新しい旅のお供はいてもいいかもね」
僕は覚えたてのぎこちなさが残る綱捌きで馬車を操る。
僕も話の流れからアンリさんはこの後も僕らと一緒に着いてきてくれるものだと思っていた。だが、彼女は僕らの誘いを申し訳なさそうに断った。
『私はこの街で君たちみたいな新米のお世話をするってのが楽しみでね。お誘いは嬉しいけど私は残るよ。たまにはこの街にも遊びに来てね! そしたらその時は歓迎するよ!』
そう言って実に彼女らしい笑顔で僕らのことを街の外まで見送ってくれた。
彼女が残りたいというのなら無理には誘えない。だが、アンリさんが来なかったというのは少々誤算である。なにせ僕もそしてサラも万全に戦える状態ではないからだ。
森神、もとい『夢喰』との戦いで僕は自分の霊力をほとんど使い果たしてしまった。結果として長い休養期間となったのだが回復したのは僕自身だけ、式神の3匹そして宝剣は今だとして使用不可の状態が続いていた。唯一使える式札の方だがこちらも増産体制がない以上無駄遣いは出来ない。つまり武器は己の身体だけという状態だ。そしてサラは言わずもがな、片腕を失った状態のためどうしても万全の力をふるえる状態ではない。こんなことならポートミルの商館で誰か仲間を募って置くべきだったと少し後悔する。
「せめて式札さえ増やせればなー」
『そんなこと言ったってしゃーないやろ。うちかて陰陽師とちゃうんやからそんなポンポン出来る方法やないで? それを言ったらスバルが普段から転送式札を増産してないのが悪い』
「それは………そうだけど」
夢喰に侵されたサラの救出の際、絶妙なタイミングで式札を送り込んで来てくれた文香。あれは僕が普段から用意していた転送用の式札を使って僕に送ってくれたものだ。その転送用の式札も色々と細かなことはあるのだがここは省略する。今1番重要なのはその転移用式札は最後の1枚だったことであり、もう日本からの物資の援助は望めないという事だ。
「ではあの、えーっと……」
「ああ、あの3匹、焔雉、雷猩、雪豺はまだ無理だね。使えるようになるまで後1ヶ月近くかかるんじゃないかな」
サラが言おうとした式神3匹。実はこっちの方が深刻だったりする。暴走した森神の一撃でやられた焔雉、雷猩、雪豺はそれによって死んでしまった。いや、元々式神なので生きている死んでいるという言い方に少し語弊があるかもしれないがつまりは活動出来る以上のダメージを受けてしまいこの世に顕現できない状態になってしまったというのが正しい。簡単に言うなら黄色い電気ネズミが出てくる某キャラクターRPGの瀕死状態のすごい版とでもいったところであろうか。ポケセンのマシーンでも回復できない傷を負ってしまったのだ。とはいえ霊力が回復すればもちろん心身ともに回復するし、元どうり召喚もできる。ただ今回はそれまでの時間がとても長いという事だ。これは『桃華』についても同じである。
「まぁ大丈夫ですよ! 魔物出ますけど大きな街道沿いは警備も厳しいので!」
「だといいけどなー。そんでそのバイエルとかいう街まではどれくらいかかるの?」
「えっとですねー。このペースですと恐らく1週間はあればたどり着くかと。今は冬ではないので山越えもさほど苦にはならないと思いますよ?」
「山越えね。先は長いな…」
サラの言う通りポートミルからしばらくの間はあまり魔物と出くわすことはなかった。そもそも皇国領内の主要な街道沿いで魔物と出くわすなんてことは本来ないことであるらしい。基本彼らは山や森といった普段人間のあまり立ち入らない場所に住んでいるらしく余程のことがない限り人里には降りてこないことが多いという。つまり僕が最初に出くわした変異型のオークや今回のような森神騒ぎは例外中の例外らしい。
よって最初のうちは想定された懸念のようにはならず順調に進めた。ここからいよいよ難関の山越えである。




