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勇者同士の戦い


 エレナが大陸(ガイア)の臍に向かっている一方で、テネブリスを討たんとする連合軍は進軍している真っ最中だった。

 遙か先に小さく見える魔王城にヘリオスは口角を上げる。

 その城の上空を覆う雲は魔王の不安を表しているかのように彼には見えた(実際はそうではないのだが)。


「いよいよか。スラヴァ! 我は魔王を討ち、()()()()()()()()。必ずな」

「はっ。私めも早くその瞬間を見たいものです王よ」


 そんな二人の会話に入れず、フォルトゥナは咳払いをする。

 アレとは一体何なのかを尋ねても、この二人はいつものようにはぐらかすことを知っているからだ。


「──ん?」


 そこで、軍の先頭であるヘリオスが馬を止めた。

 ヘリオスの少し先に誰かが立っていたのだ。

 それは──レガンに乗って魔王城を視察しているはずのノームだった。


「おいノーム! 貴様、何をしている! 視察はどうした!」


 ノームは動かない。

 不安を覚えるほど真っ直ぐな視線をヘリオスに突き刺してくる。

 ヘリオスの苦手な瞳だ。


「──父上」

「?」

「余は、約束した。エレナと──父上の進軍を止めると」


 ヘリオスの口が大袈裟に開かれる。


「故に! 余は戦う! テネブリスは、エレナの、守りたいものだ!!」

「ぬ、ぬぅ! 魔女に誑かされおって!! おい、フォルトゥナ! ヤツを拘束し、」


 しかしここで。

 さらに、ヘリオスの機嫌を損ねかねない馬の嘶きが響いた。

 白馬はノームへと直進し、主がその背から飛び降りる。


──スペランサ女王兼水の勇者であるウィンディーネだ。


「すまんな。少々魔物に手こずった」

「! ウィンディーネ女王、」

「我が国を襲ってきた魔物達は、どれも魔力の粘土のような偽物であったよ。おそらく今回はテネブリスへの進軍を煽るための騒動らしい。助太刀するぞノームよ。エレナの故郷は、私の守るべきものでもある」


 立ちはだかる勇者二人に混乱する連合軍。

 ヘリオスは歯を食いしばり、癇癪を起こす。

 

「あいつらを、あいつらを、引っ捕らえろ!!」

「やめておけ、父上」

「!」


 そうヘリオスに提言するのはサラマンダーだ。

 サラマンダーは馬から降りると、不気味に口角を上げる。


「無駄に兵を減らさない方がいい。兄上は俺が止める。シルフ、お前は女王を止めろ。あの女はお前しか敵わん」

「あいよ」

「し、しかし! 進軍に一人も勇者がいないとなると……」

「安心するといい父上。魔女にお熱な兄上なんぞ、すぐに片がつく。魔王とぶつかる前には合流するさ」

「お、おぉ……そうか、そうだな……」


 そしてヘリオスはノームとウィンディーネを避けるように軍を進める。

 ノームがサラマンダーを睨み付けた。


「サラマンダー! お前、可笑しいと思わないのか!? 明らかにこの進軍は何者かに仕組まれているだろう!」

「兄上。例え明らかに可笑しくても、乗らない手はないだろう。父上だって、この騒動が嘘か誠かなんてどうでもいい。ただきっかけがあればそれでいいんだよ」

「!」

「テネブリスは存在しなくていいものだ。エレナの帰る場所なんて、いらないんだよ」

「サラマンダー、お前、何言って……」


 その時。

 ノームとウィンディーネは目を見開く。

 サラマンダーの身体がぶくぶくと膨張していくではないか。

 サラマンダーは自分の身体の変化に驚くことはしない。むしろ狂ったように笑っていた。


「ようやく、ようやくだ! 前から気に食わなかったんだよ、兄上! 俺の欲しいものを、全て持っていたお前が羨ましかった! でももうそれはいい。俺は今日、兄上が一番大切にしているものを奪ってやる! エレナが帰る場所は、俺の隣で十分なんだ!!! あは、はははははは!!」

「な、なんだ、アレは……」

「ノーム。あいつはもうサラマンダーと思わない方がいい……。あいつ、()()()()()()()()()

「!」


 ノームは用意していた進軍を邪魔する為に使うはずだったゴーレムを順に召喚していく。

 ウィンディーネも剣を構えた。

 シルフはというと、己の身体を抱きしめ、興奮したように変貌していくサラマンダーのなれの果てを見守っていた……。

次の更新は今夜の一時頃。

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