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アスモデウスの行方


 シュトラール王国の門の前でほんの少し黄昏れる。

 気付けば随分長くここに滞在していたなぁ。

……よし、シャドーさんに抱えてもらってテネブリスへ急ごう。

 そう思った矢先だった。


「──エレナ!」


 聞き慣れた高い声に慌てて振り向く。

 そこにいたのは──。


「──サラさん!?」




***




──前日 サラの宿屋にて。


 穏やかな午後だった。

 アスモデウスとサラが同居し始めて随分と長くなるが、二人の仲は少しずつだが親密なものへと変わっていっていた。

 エレナがノームとさらに信頼を深めていく一方で、この二人にも様々なことがあったのだ。


「ガサツ女、芋の皮、剥けたわよ」

「おう、ありがとな」


 サラは芋を剥く手伝いまで率先してくれるようになったアスモデウスの後ろ姿に幸せを感じながら頬を緩める。


……しかし、その時だ。

 宿屋のベルが鳴った。


「お? 客か? いらっしゃいま……」


 サラの悲鳴が上がる。

 アスモデウスがすぐに戦闘態勢に入れば、そこにいたのはかつての同僚──マモンだった。


「……まさか、アンタの方から来てくれるなんてね、マモン!」

「ふふ、時が来たのでね。アスモデウス、君は随分とこの女を大切にしているようだ。人間嫌いが酷かった君が、ねぇ?」


 マモンから伸びる影がサラにきつく巻き付き、サラは微動だにできなかった。

 アスモデウスはそんなサラに眉を顰める。


「アスモデウス。私達はあなたの中に宿っている()が必要なのです。私と共に来てください」

「……、種?」

「アス! そんな胡散臭い奴の言葉にのるな! 私よりも自分を優先しろ!」


 サラがそう叫ぶと、マモンはにっこり微笑んだ。


「ははは、素敵な人ですね。こんな事をこんな状況で言える人はそういませんよ」

「っ、」


 マモンの影がサラの首に伸びる。

 アスモデウスは冷静を装いつつも、自分の中でわき上がる怒りに困惑していた。


──アタシは、どうしてここまで怒っている?

──ただの、人間の女ごときに、どうして……。


 その答えは分からないが、マモンへの返答は既に決まっている。


「──分かったわよ。アンタについていけばいいんでしょう」

「おい!? アス!? 何言ってんだよ!」

「うっさいわね。アンタを巻き込んだら色々後味悪いのよ」


 アスモデウスは大人しくマモンについていく。

 「相変わらず、優しいのですね」というマモンの言葉に舌打ちをして。

 そんなアスモデウスの背中にサラはやりきれない思いが溢れた。


──嫌だ! 行かないで、アスモデウス!


 その思いは言葉としてサラから漏れる。

 アスモデウスの足がピタリと止まった。

 頭部だけ振り返る彼の顔は──笑っていた。


「なんだ、ちゃんと可愛いこと、言えるんじゃない。アンタって実は女の子らしく振る舞いたい癖に、強がってわざとガサツな言葉遣いするから嫌いなのよ」

「っ!」

「……世話になったわね、サラ」


 その言葉を最後に、アスはマモンと共に、宿屋を出て行った。




***




「──と、いうわけだ。アスはマモンとかいうエルフに連れて行かれた」

「そんな、マモンさんに……?」


 事の顛末を聞いたエレナは難しい顔をする。

 サラはどうやら居ても経ってもいられずにいたところ、エレナが国を出ていくところを見かけたのでついてきたらしい。

 

「頼むエレナ。アスモデウスがどこに行ったか手がかりもない。でもじっとしてられねぇよ。一緒に行かせてくれ」

「うん。それは全然OK。じゃあとりあえず、今から一緒にテネブリスに……」


 その時、エレナの影から静かにシャドーが現れた。

 突然の悪魔の登場に、サラが驚く。

 エレナはそんなサラにシャドーが仲間であることを説明しつつ、シャドーの視線の先を辿った。

 そして──。


「──ルーメン……!!」

アスとサラの話も、番外編としていつか書いていきたいところ。

バレンタインもどうなったか書いてないですしね。

そういえばまおぱぱ、ついに100話突破したようです。

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