治療する篤郎
数日してラッツは赤い羽根のメンバーと新しい奴隷達を馬車が何台も連なって、連れてる終盤になって、
「ラッツ、ラリーの村が城塞化してるね。」
「な、何があったの?」
「い、いや、旦那がね。」
の言葉に、みんなから説明を求める強い雰囲気に負けていた。
「旦那が魔法や紋章で造ったのが、此れでさぁ。」
「此れで造れる物なの、デュース、ハル?」
「魔力がどれだけ要るとゆうのよ。その前に死ぬわよ。」
「ですね。紋章で造れる物でもないですね。」
「ははははは、そうなんだよなー。それが普通なんだよなー。」
「ラッツどうした?」
「ラップくん。あっしの色々が旦那に毒されてんですよ。」
「アツロウさんがしたか。ここまでの事をして、国にどう言うんだろ?」
「アツロウさん、国と戦うつもり?」
「はははははっ。分かりやせん。」
ラッツは涙を流しながら言った。勿論、ラッツの苦労の一端を知ったので、それ以上の事は聞けない。篤郎から聞かされるかも分からないが、此れから知れるのだから。だぶん。
「しかし、臭いけど、どうにかならんの?」
「そうですよね。」
「アツロウさんはなんで、死にそうなのを選ぶの?」
馬車から腐臭が襲ってくる。
奴隷達でも売り物にならなくなった者を買う、奇特な人物が買うと噂がなっている。いや、もう噂でも無いのだが、それを村に送る。
一体何かをするのかが分からないのだ。
「ラッツさん!」
銃を持った集団が近付いてきた。ホビットの女の子がラッツに話し掛けた。
「よう、エメルの班が今日の当番か。」
「はい!後ろはアツロウ様の?」
「そうだ。」
「連絡を入れときますね。」
「連絡?」
「はい、門まで護衛に入ります。」
エメルは、直ぐどこかに連絡をしている。
「ラッツ、あの子達は護衛なの?」
「あぁ、銃持っているからな。」
「装備も軽るそうですけど?」
「旦那に聞いてくだせぃ。」
馬車を移動して門まで移動する。近付いて行くと閉じた門が開いていく。もう、目が点になって、馬に身を任せているしかない。
門の内側に部屋から篤郎達が出てきた。
「馬車は此処で止めろ、負傷者を部屋に連れて行け。ただし丁寧にな。」
「「「はい!」」」
「ラッツ達も頼んだぞ。」
「「「「えぇ!」」」」
「運べよ!」
篤郎も一人を抱き抱えると建物に入って行った。
「気を付けて寝かせろよ。危ないのはいないよな。」
「アツロウ様、二名程いますが?」
「分かった、直ぐに行く。」
篤郎は若い急病者に向かって、
「お前達は死にたいか?」
と問うと、首だけ軽く振った。
「生きたいか?」
頷いたので、魔法を展開すると、
「解析完了、治療開始。」
若い二人は女である。手足の腐乱に内蔵も死にかけている。剥き出しになっている神経の痛みは激痛なのだが、声も出ない。皮膚も黒く硬くなっている。性病、壊死、あらゆる病気に癌。
普通なら治らないのだが、魔法使いの回復だ。媒体は以前から格納していた遺体だ。それも新鮮な遺体。肉体を治すのに容易なのは肉体だ。勿論、それを可能とは言えないが、それを可能に出来るのが『無茶の権化』事、リザイデントの生まれ変わりの篤郎なのだ。
急速に回復が行われる。
「回復終了。再解析、うん。新品同様になったな。」
目の前で奇跡は起きた。
「俺の為に働けよ。」
黒い板を助けた二人の手に当てると、光を発する。
「さぁ、次に治りたいのは誰だ?」
絶望と死を待っていた者の感情が変わる。治らないモノが治る。そして、治すのは新しい主人。その主人を前にして、奴隷達は涙を流していた。
「ケッケッケッケッケッケッ!」
そして、篤郎のワキワキした手つきと、マッドな顔をしながら治されて行くのだった。