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マーセナリーエイジ  作者: きさきしゅん
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頼もしき仲間たち

なんつーか、ここんとこの日常は、オレの想像をはるかに超えすぎだった。暁疾人(アカツキ・ハヤヒト)。このたった1人の男が、オレの生活を激変させちまった。


あんだけブイブイいわせてた蜂の巣ゾルカンをあっさりブッ殺すわ、周囲のギャングどもをたった2人で軒並みブッ潰してテリトリーを手にいれるわ。果ては暴王マードック、貴公子カイルっつー、傭兵界のビッグネームとの立て続けの殺り合い。生きた心地がまったくしねえ毎日。


そんで。


「あなたがザニルスさん?ハヤヒト様が大変お世話になったそうですわね。本当に感謝しますわ」


そのイザナギ人の超色っぽい女性は、神薙美凪(カンナギ・ミナギ)というらしい。綺麗な長い黒髪と黒い瞳。艶やかな紅い唇。これでもかっていうほど胸と尻が強調されたスタイルのいい体。それでも下品な色気にならねえのは、この人の柔らかい上品な雰囲気のせいだろう。逆にそのギャップが反則的な色気を煽ってるけどよ。


言い方悪いが、こんないい女が娼婦街の角にでも立ってたら、たいがいの男は財布まるごと渡しちまうと思う。


「…な〜に、このきったない犬小屋は?」


お次はコイツだ。リリエス・ローエングリンとやらが目覚めた時の第一声がこれである。銀髪に銀色の瞳をした、10歳くらいの超がつく美少女。口を開くまでは、オレやジグは天使のような可愛さを想像していたが、開口一番のコレで幻想は見事に吹き飛んだ。


お頭いわく、口の悪さと性格のキツさは、大戦時代の旧曙光メンバーでも断トツだそうな。けど、そのかわりにアタマの良さは天才としかいいようがない。なんせ、アンリエッタからもらった金。装備品を買った残りのぶん2千万クレジットを、その日のうちに全額投資にぶちこみ、二秒で7億クレジットを稼ぎだしやがった。


「ま、これで後は増える一方よ。3年後には1兆クレジットくらいを目指すわ。」


だそうな。冗談みてーな話だが、マジで確実に上がる株の銘柄とかが分かるらしい(あるいは、ハッキングで株価操作とか)。


「しかし、荒んだ世界になったものだな」


セミロングの金髪で右目を隠した長身の女は、シオン・イグナチョフ。お頭と違い、正式な訓練を受けた軍人で、銃の腕は世界でも五指に入るそうだ。


特に長距離狙撃(スナイピング)に関しては、お頭が知る限りは世界一らしいが、オレが見たわけじゃねーから実際んとこは分からない。分かるのは、こいつもただ者じゃねぇってことだけだ。たぶん、銃を持ってなくても、素手でゾルカンをブッ殺すくらいはやりそうだ。


『で、極めつけはこの男だよな…』


オレの視線の先でタバコを燻らせてる、顔のど真ん中に十字キズのある男。剣狼ラギラ。


メガロシティ(一千万人口都市)の1つ、グラドサルでは相当に名の売れた傭兵らしい。ウソかホントか知らねーが、グラドサルのエース傭兵団の1つ、グランドガイズを、たった1人でブッ潰したとかなんとか。けど、あそこ、確か700人くらい兵隊いたよなあ。


「何人いようが頭を潰せば終わる。容易いことだ」


とは、ラギラさん談(既にさん付け確定。腰が引けているオレ)。ちなみに夢幻一刀影流ってのは、暗殺に特化した剣法らしい。


ここで素朴な疑問。


「なあ、お頭とどっちが強ぇんだ?」


こっそり聞いてみたが。


「ふっ、愚問だな。この俺こそ最強に決まっとるだろ」


と、のたまう腹巻き姿のちっちゃいお頭を見る限り、ラギラさんのほうが格上に見える。


マジな話、ラギラさんの腕はお頭に極めて近く、あのマードックとやりあっても互角くらいの強さらしい。実際、それくらいの威圧感があるし。


ま、そんな感じで一気に戦力は増加したわけで、それ自体はめでたいことなんだが。


「そこ!!へばるにはまだ早い!!」


「ひええ〜、もう勘弁してくれよシオンさん」


「お前たちの為にやっているのだ。そんなレベルでは、一線級に当たれば瞬殺されるぞ。」


それからオレたちを待っていたのは、金髪美人の鬼教官によるキツーイ軍隊訓練だったとさ。やれやれ。









時は戻り再会の夜。


「ハ・ヤ・ヒ・トさま」


「み、ミナギ…。無事でよかよかったなあ〜」


無敵の神殺し、アカツキ・ハヤヒトは、2頭身姿で自室の壁際に追いつめられていた。目の前に立つのは透け透けのネグリジェをまとったミナギちゃん。


「おおお、起きぬけなんだから、今日くらいはゆっくり休んだほうが…」


「大丈夫ですわ。さあ、百年ぶんの愛を取り戻しましょう。うふふ‥」


艶っぽく微笑むミナギ。


『ミナギの名前は、みなぎる愛欲が語源じゃないの?さすがの私も、あそこまですごくないから』


とは、悪魔っ娘リリエス・ローエングリン談である。母性本能が体現したようなミナギの、余人には絶対に見せない艶やかな一面。それゆえにお色気の破壊力はとてつもない。


ともかくも、絶体絶命のハヤヒト。いや、相思相愛の仲だから、受けても問題ないんだが


『その回数がなあ……って何を言わせるれ!!』


既に錯乱している神殺し。ミナギちゃんと濃厚な夜を過ごすと、夜明けには干からびる。これ、長い時間を過ごしたハヤヒトだけが知る絶対の事実。


そしてミナギが、ほとんど用を為していないネグリジェを脱ごうとした時。


「…副長。何をなさっているのです?」


いつのまにやら部屋の中にいたシオンが、頬をひきつらせながらたしなめた。その足に素早くしがみつく2頭身ハヤヒト。


「あ、あら、シオン。もう眠ったのではなかったの?」


「まったく。今はそれどころではないでしょう。朧月刹那はともかく、死神トーマは既に活動中。緋眼のマリカは重傷という話ではないですか」


「お、オホホホ…。そういうお話は翌日にでも」


「いけません」


「それじゃ、2時間後」


「………………」


金髪に隠れていない蒼い左の瞳が、じろりとミナギを見つめると。


「そ、それではハヤヒト様、ごきげんよう!!」


スタコラっしゅと逃げ出すミナギ。曙光の中で副長ミナギを退散させることができるのは、この規律が服を着たようなシオンだけである。


「ふぃ〜助かったよ、シオン」


腹巻きから手拭いを出して汗をふく2頭身ハヤヒト。それをひょいと抱き上げながら(ぬいぐるみか…)、シオンは怖い顔。


「隊長。あなたも毅然と対応して頂かねば困ります。既に死神は動いているらしいではありませんか」


「けど、あいつは野心とは無縁の男だからな」


シガレットチョコをくわえながら、ケタケタと笑うハヤヒト。とにかく平時の威厳の無さには定評がある。


「それより、そこののぞきネコ」


「リリス。」


ハヤヒトとシオンが目を向けたのは、部屋のバスルーム。ドアを開けると、まねきネコのように右手を上げたリリエス・ローエングリンがいた。


「惜しかったのニャ〜。かぶりつきでアレが見学できると思ったのにニャ」


「…お前、その変態痴女っ娘ネコ属性だけは、百年たっても変わらんな」


「変わって欲しくニャいくせに」


近づいてきた招きネコリリスは、ハヤヒトに肉球ハンドを伸ばしてカチャカチャと…。


「ズボンのベルトを外すな!!ズボンのぉ!?お前はソレしかアタマにないのか」


「…………」


いつものことなので、シオンは突っ込まない。百年前に何百回と繰り返された光景だ。だから、ただ無言で小袋を取り出して、リリスの鼻先にぶつける。


ぱふっ


「ンニャ!?」


マタタビの粉の入った袋。そしてパタリと倒れたリリスを。


「お頭。リリスが失礼しました」


ラギラがふん縛り、刀の鞘の先に引っかけて、愛の説教部屋に連れていく。これがいつものパターンなのだが。


「…さて」


ハヤヒトは唐突に真剣な表情に戻る。同時に、リリスもあの冷徹無比な瞳に戻り、ラギラは壁に背を預けて周囲を警戒した。部屋を出ていたミナギは軍服に着替え、アヤネを連れて入ってきた。


「…事情は昼間話した通りだ」


「では、司令(ウガヤ・イスカ)はまだ見つかっていないのですね。」


シオンの問いにハヤヒトは軽く頷く。


「熊ヒゲと影姫もな。俺がリグリット、ミナギたちがトライセル。マリカはグラドサルで目覚めた。となると、いずれかのメガロシティ近郊に封印されたと見るのが正しい」


あと、残るメガロシティは暴王マードックが仕切る無法都市バルミット。イザナギ人の故郷である東の島国にある、照京(ショウキョウ)。そして西の果てのミレニアム…。


「照京はないわね」


リリスは蒼い瞳を細めた。


「ああ、俺もそう思う。東の島国だからな。この大陸内のメガロシティのどれかだろう」


「メリアドネが既に動いているのが厄介ですね」


シオンはあごを軽くつまみながら、眉をひそめる。百年前の大戦時、何度も戦った相手だ。その銃を抜く速さ、照準の正確さ、いずれもわずかながらシオンを上回る天才ガンナー。長距離狙撃はともかく、近距離射撃戦では一度も勝てなかった。唯一メリアドネに黒星をつけたのは、アスラ部隊最強のガンナー、トッド・ランサムのみである。


「どうします。グラドサルにいないことは、自分が確認しておりますが」


「すると、バルミットかミレニアム。この2つに絞られましたわね」


ラギラの言葉をミナギが補足した。


「エリュシオンのデータベースからは、恐らくこれ以上の情報は期待できないでしょ。直接、バルミットなりミレニアムに行って、傭兵ギルドのデータベースにハッキングをかけるしかないわ」


「できるのか?」


と、リリスに聞く者はこの中にはいない。この類いまれな美少女が、電脳世界屈指の魔術師であることは、大戦時代にイヤというほど明らかになっている。何しろ彼女の祖父こそが、あの恐るべき12個の軍事衛星『褪色の月』。その大出力レーザー砲の発射パスコードを解析できた超天才なのだ。


「そうだ、リリス。マリカの居場所を探してくれないか。あいつが何か知ってるかもしれん」


「そうね。大尉、エリュシオンの本部に連れていってもらえるかしら。さすがにここのチンケな端末からじゃムリよ」


「よし」


方針が決まれば動くのは早い。兵は神速を尊ぶとは、台漢(タイカン)人の有名な兵法家の言葉だ。

そして百年の停滞がウソのように、全ての事象は一気に動き始める。

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