城塞都市、アビル。
震えが止まらない脚を引きずって歩くこと体感数分 。
砂丘となった場所を登っていると・・・
黒大理石でできた城壁が見えてくる。
四角く切り出され、隙間なく並べられた
ダークグレーの石に、黒い砂漠の砂粒が付いてキラキラ黒く輝く。
・・・魔王国って割には普通に綺麗だな・・・・・・。
更に歩いて、砂丘の上まで登り切ると・・・、
荒廃した町の様子が見えた。
コンクリ製の半壊のビルが立ち並び、
シブヤと似た光景が広がっている。
・・・ただし、シブヤと違う所は、
路上に見える人が全て、死んで干からびてるか、
枯れ枝の様にやせ細っているところだ。
・・・・・・何だよ、コレ。
赤ゴリラから貰った双眼鏡片手に首を傾げる。
倒れている者の中には高そうな服を着ている者もおり、重税のせいでこうなったとも思えないし・・・。
少なくとも、ゲーム開始時には緑豊かで賢者により治められた魔王国にしては豊かな国だったはず・・・。
雑誌ではここまでの街の説明が有ったので、これは確かなのに、どうしてこんな事に・・・。
「水野・・・、
どうしてこうなったと思う?
ここの大森林でレベルアップしていこうと思ってたのにそれらしきものが無いよ?」
「俺に聞くな。
封印でもされてんじゃないのか?
ドラ〇エみたく。」
街から目を逸らし、少し見上げて名物だった筈の塔を探す。
・・・・・・やっぱあれか・・・。
目に映るのは、
ア〇〇ビールの文字の掲げられた白い鉄塔。
元、別府大電波塔の姿だ。
たしか、別府タワーだっけ?
たぶん、ここの州の主はあそこに居るんだろう。
この砂丘ってアビルを見下ろせるくらい高いんだけど、
城とか屋敷が見えないし。
・・・・・あそこまで行くまでに戦闘どれくらいしないといけないんだろうか・・・。
背後から何かが、歩いてくる音を聞きながら、そんな風にぼーっとしながら考えた。




