災い
~~~~~~~~~水野side~~~~~~~~~
ゴン!
ガラガラッ。
近づこうと足を踏み出した瞬間、水魔国から鉄板が飛んでいくのが見える。
そして、入り口近くのビルが倒壊する。
何?テロでも起ってるの ?
つんさく悲鳴と赤く染まるガレキ。
その中央より元凶が見える。
は?何でお前が共食いなんて・・・。
・・・・・・まさか、制限時間を超えてしまったってことなのか?
クソっ!
あいつの口元にはぶら下がったモノは人の形をしており、確か捜索依頼が出されていたウチの仲間だった。
食らいつかれたまま力なく垂れ下がった腕は先端が存在しない。
かわりに下を染める赤い泉の源泉しか無かった。
そして、喰らわれる。
噛んではちぎりとり、飲み込む。
咀嚼をせずに行われる食事は、周りへ断末魔を響かせながら完了する。
「滅ベェエッ!
ワタシは帰ルのダァアッ!」
口元を食べ残しで汚したまま、足を地面に叩き付ける。
すると、それに答える様に紅飛龍が這い出てくる。
救出は無理じゃないのか?コレ。
あの龍って確か・・・。
前に図書館を見た時に見たアレだよね・・・。
史実では、レベル2000とされる、
災いの龍。
あいつは幼生体にはもう見えないし・・・
100は超えてるんじゃないだろうか。
尻尾まで完全にガレキから出る、
そして、蹂躙が始まる。
異常な素早さで2匹の獣が市民に襲いかかり、
まるで幼子が花を引きちぎるが如く簡単に命をもぎりとっていく。
外へ至る門は民衆により壊され、
門の扉が成すはずだった外堀にかかる橋は、肉が補った。
森へ逃げてもワイバーン達の餌食に成るだけだが、
あちらより、生きれる可能性は高いだろうな。
城壁へ近寄って抜き手を石に差し込み、よじ登る。
恐らく、奴らは餌にされるから逃げてるんだと考えられる。
中に居たら問答無用で食われて終わりだ。
捕食を使えば何とか出来るかもしれないが
あいつの思い通りに動く龍に手出しをしたらややこしくなる。
だからこれが正しい。
10m位はある城壁を筋力に任せて上まで登ると、
中身は世紀末に成っていた。
・・・・・・いや、モヒカンの方じゃないぞ?
それだったらドラゴンがピギィとかいってはじけ飛ぶし。
家々が倒壊し、そのガレキを黙々と食べ続けるあいつ。
見境が無くなったのか、ただの町の子供あたりも等しく腹に収めている。
ミルクから貰ったパーティ証をのぞき込むと、
状態異常が、いくつも出ているのが見える。
発狂(永続)、狂気、底なしの空腹(永続)、飢餓、
出血(永続)、
永続は、このまま放置しても治らない物を指すが、
多すぎだろ。
飢餓って、事はアレを放置すれば何とかなる可能性は有るけど・・・・・・。
アイツが正気に戻れなくなる。
食うことだけは避けてた人間をあんなに喰いまくっているんだからな。
アイツの出て来た場所と思わしき所から円形に土しか見えない所が、出来ていて、そこを舞台にするかのようにして行われる演舞、
そして、犠牲者によって広がる舞台の緋絨毯。
飢餓では全ての攻撃が捕食を持ち、素早さが異常な程上がる。
つまりは紙防御で鈍足の俺では手をこまねいているしか無いのだ。
当たれば即死の嵐の中、たどり着く事なんて不可能だ。
「チィィイッ!」
拳を叩きつけ、どうしようもない思いをぶつける。
本当にどうすればいいんだ・・・・・・。
俺がうなだれ、NPCどもが叫ぶ中、アイツが口を開いた。
「アレ、オイシソウ。」
その血走った目の先には、この国の象徴である水晶塔が有った。




