鉄の都市
「おおっ!」
門の代わりになった山手線の1車両をくぐり抜け、
途中にいた門番的な一人と会話し城壁の中へ入る。
ドアをくぐり抜けると視界に赤が広がる。
建物は赤レンガ、
地面は鉄鉱石が露出しており、
錆で朱に染まっている。
唯一の例外として街路樹が黒い実を風に揺らしているだけで殆どの物が赤い。
都市を山の形をそのまま生かして作ったようで、
中央に行くほど高くなる。
一番上にたたら製鉄の踏鞴場が備え付けられ、白煙がもうもうと立ち上っている。
「ようこそ、鋼鉄都市へ。
鉄以外殆ど何も無いけどゆっくりしてってね。
」
後ろから門番だった奴が来る。
あんた門は良いのか?
門番は人間にかなり近い形をしているが、違いは歴然だ。
腕と足が胴に対して1,5倍ほど長く成っている上、
肘、膝より先と背中が赤土と同じ色をした豪毛で覆われている。
・・・猿人族だ。
一応鎧を着ているものの、エプロンみたいな前掛けだけである。
こいつらは素早さがかなり高く、大抵の攻撃に対応出来るからあまり重くするのは問題だと考えたのだろう。
理由は多分これが正解だと思う。
けど、入ってから普通の武者鎧全身装備の集団を見たから全然自信が持てない・・・。
「イケブクロの代表は何処に?」
「たたらばで指揮してる所だろうと思いますよ。
あの人の提案で出来た物ですし。」
ふうん?
って事は探索者か。
踏鞴製鉄法は外の技術の筈で、
ここなら竈と魔法使いで足りるだろうしする必要がないし。
・・・まあ、踏鞴とくらべ質はかなり差が出来るけどね。
悪い方に。
通りすがりの人を見ていくと、
此処はアキバと同じく二種類の種族構成のようだ。
体が細く毛の多い猿人族と、
筋肉ダルマで背の低い土竜族。
主に土竜族が鉄鉱石を掘り鉄を作る。
猿人族はその原料の調達と自警団の役割をしている様だ。
役割が綺麗に分担され、上官の頭の良さがうかがえる。
代表には期待が出来そうだな。
そう思いながら踏鞴場への のれんを 跳ね上げた。




