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グラトニカオンライン  作者: ファム
プロローグ&過去編!
2/60

初戦闘?

「……う…………ん?」


 頬に湿った何かが張り付く感覚がして目が覚めると、視界一面の緑。草。

顔や右半身に冷たい土が触れていて、カサカサとした草が体を囲んで触れている。

気を失った後何が起こったのかは知らないけれど、どうやら今は外に倒れているようだ。

いつの間に外に出てしまったのだろうか?


――まさかの誘拐ッ!?


 ……いや、ちょっとまて。 

家に金の匂いなんてしない筈だし、何より働き手が自分とアイツしかいない。

二人揃って連れ出したら身代金請求する相手居ないはず。


頭がかなり混乱しているが、ひとまずアイツを探して合流しようと考えて体を動かす。


 土の上にそのまま横にされているあたり誘拐なのだとしても、扱い方からしてアイツも近くにいるはず。

 立ちあがればm行くか行かないかの草は無視して辺りを見渡せる位の背はあるし、

そうすれば少々邪魔な大きさであるアイツはすぐに視界に紛れ込んで合流できるんじゃないだろうか。


 そう思考しながら地面に左手をつき、体の向きを整えて右手をつき、起き上がる。

体を起こして座ったところで強烈な違和感。


――あれ、視点が低い?

……まてまて、冗談……だよな?


 頭によぎったいやな考えが本当であるか確かめるため、膝を立てて勢いを付けて二本足で立ち上がる。


――冗談だと言ってくれよ……。


 学校のお姉さま方には小動物扱いされるくらい小さめな身長とは言え、120cmはあるので立ち上がった状態でそこら辺に生えてるイネ科の雑草より高く成らないとおかしい。はず。

なのに、立ち上がっても未だに緑色の笹型の葉をした草が視界を埋め尽くしている。


――あ、夢か。


 夢ならば多分この状況も有り得るだろうと頭を納得させて、ひとまず夢かどうかベタな確かめ方として頬をつねってみようと腕を持ち上げ……。

 そこでふと気が付く。

 俺の手とか足とかがなんかもふっとしてる。

と言うかむしろもふっとしてない所が見つからない。


――あれれ?


 夢で体が縮んだだけだと思っていたのだったけれど見た目も変化していたようだ。

丸まってみたり体を捻ってみたりして全身を確認すると、どこからどう見てもキャラ作成の時に見たアレだ。赤い角のカーバンクルだ。

 毛の色で嫌な予感がして、何か尖った物が額にあったあたりで気が付いた。

それなら、自分がキャラクターなんだからゲームの中に居る夢なんだろうかな……?


――起動とキャラ設定しかしてないのに夢を見るのはおかしくないか?


 考えれば考えるほどにいろいろ疑問が湧いてきた。

ひとまず前提として夢かどうかを確かめようと頬と思わしき場所を手でつねってみる。


「痛っ!?」


――くっそ痛い……。


 つねるというか何か刺さった。

 顔をゆがませながら手を見て何が刺さっていたのか確認すると、毛に覆われた小さな指先を(ピック)みたいに尖ったルビー色の石が覆っていて爪みたいになっている。

 そりゃ、こんな奴でつねろうとしたら突き刺さるね……。


 痛みがあったことで夢じゃない事が確定し、体が作成していたキャラそっくりに変化している所から考えて、非常識的ではあるけれどあの会社のサプライズで小説位でしか見たことのないいわゆるMMOとかいうものが再現されていて自分がその中にいるという可能性に行き着く。


 「まさか……ねぇ?」


 確かめるために目の前の雑草を一掴みむしりとってみてにぎにぎとつぶしてみる。

ぶちぶちと心地いい音をして千切れた草の茎は、潰すとイネ科の特徴であるストロー状の茎が潰れて平べったくなる。

 目に近づけて凝視してみても電脳世界を構築するポリゴンの一つも見えない上に、潰した感触も千切れる音も、草の青臭さすら現実そのものみたいに感じる。

 そこまで再現するには色々な詳細なデータが必要な筈で、重箱の隅をつつく位の細やかさを計測出来る程に科学は気づかないうちにそんなに進歩していただろうか?それはなかなかに厳しい気がする。


 どうも確証が得られないのでむしゃくしゃして潰れた雑草を放り捨て、もっふりした手のひらを眺める。


「再現度高いなぁ、

こんなもふもふに描写できるな……ん……て…………ッ!」


 言ってみてそこで気付く。

この前最新鋭の科学の技術者が映ったテレビを見たけれど、

今の科学ではホログラムで見るまでが精一杯で感覚などしないはず。

 例えばいま全身を覆っているもふもふとした毛皮の感じとか、土から感じるthe土って言う匂いとか。

一応感触を表現出来る機械を知っているが3m×3m×5mは超える巨大機械だった上、触覚しか未だに再現できていなかった気がする。

 その上ニ、再現できるのがリンゴ1.5個ほどの大きさの空間だけで、キャスターが毛皮の感覚を手だけで体感していたのは記憶にはっきり残っている。


「なんだよ……これ。」


 そこで初めて今の状況の異常性に目が向いた。

いくらネット上でリアルチートと騒がれるあのゲーム会社だろうとゲーム機サイズにあの機械の機能をねじ込むなんてことはまずできない。そんなことするより金を稼いでよりいいゲームを作る、という会社であるし、もし出来るようになったのなら初めはゲームではなくもっと稼げる物に使うだろう。

通販サイトに売りつければ億はくだらないくらいくらい来るんじゃないのか。

 そして、それほどの技術を育てるために使った金額は膨大な額に登ることは必然なはずでそれの分を回収しなければあの会社とはいえ割に合わないはずだ。


 ならば、これはあってはいけない事(致命的なエラー)だ。

いくらゲーム機がネットに繋げれても、こんな事をしてゲーム機の電子頭脳(システム)とせいぜい一日通常稼働するのがせいぜいな電池の電気が持つわけはない。

基盤は数分ももたずに焼き切れ電池は中身をすぐに使い切ってしまうだろう。


色々試した結果

今、自分の状況がとてつもなくヤバイということだけが分かり顔をしかめる。


 ――小説とかでよくあるてんかいとして、これはデスゲームパターンか、はたまたリスポーン(死んでも脱出不可)パターンか、可能性がかなり低いが転生パターンか、どれかは分からないけれど恐らく死ぬのは不味い。本当に死んでしまっては検証もくそもない。


 友人と合流するのを急いだ方が良さそうだ。イベント戦闘なんて感じで囲まれてリンチされたら目も当てられない。


 少々どころではない危険には少し目をつむって真上へ飛び上がって草を飛び越え周囲を確認する。

 友人の姿らしきものは見えず、少し離れた所に大岩が地面に直立して突き刺さって草が少なくなっている広場があること以外は分からなかった。

 あまりないとは思うけれど友人がこの事態に巻き込まれていない事を祈りながら広場へと進む。

あの大岩なら辺りを見渡せるはず。


 ――水野、出来ることならこちらへ来ないでいてくれよ…。

死ぬことなんて当たり前に設計されている筈のRPGの中、もしくはそれに似た世界に居るのだから。友人に先立たれるなんてはめなんぞ想定に入れたくもない。


 広場へは何事もなくたどり着き、五~六メートルは有るだろう黄土色の巨大な砂岩を爪を引っ掛けてよじ登る。

 表面がくずれて落ちたりかなり苦労してよじ登った割には得られた情報は見える範囲には低木すら駆逐された雑草まみれの草原で、丘もない異常なほどまっ平な平原であるという事と高い所から落ちると死ぬほど痛いという事だけだった。


――足りない。情報が圧倒的に足りないっ!


 何をするにも情報は大切であるし、それがなければ動くに動けない。

走り出してトラップを踏んでからでは遅すぎるどころではなく、

飯と思ったら毒だったなんてことで死んだら、死んでも死にきれない。

 こういうゲームものの定番であるメニューが開ければ基本的な情報位は得られるかもしれない。


「メニューオープンっ!」


 声が響いた。


 しかし何も起こらない。

 広い野原に虚しく声が響いた。

 かなり虚しい。

 

 精神的にいろいろダメージがきついし、敵を呼び寄せそうなものだけれど視界の端やら腕やらにボタンとかレバーとかが見つからない以上は声でメニューが開ける可能性にかけるしかない。

 出ないならそこまでだし、その時は色々試してみて体で情報を得るだけだ。

地図がないのはこの目標がない草原では自殺行為だから、せめて方角とここの出口だけでもっ!


「メニューっ!開け、メニューっ!」


  思い付く限りのメニューが開けそうな言葉を叫ぼうと総当たりをして、2息目を吸い込もうとしていると『開け、メニュー』が正解だったようで、目の前の空にピンク色の光の板が出てくる。


 ――良かった。


 ゲームのシステムはきちんと働いているようだ。

メニューが開いたのならばシステムに沿った行動で脱出の糸口が見つかる確率が有るはず。いわゆる魔王を倒せば帰れるとかいう感じの希望。確率としては殆ど無いだろうけど手探りで探すよりはマシだ。


 情報を探そうと思い二足歩行で光板に触れていじっていると、ある位置に痛みを感じて操作を止める。


 ――まさか、この若さでこの痛みを感じることになるとは……。


 痛み無く操作するために砂岩の下に突き出た突起に腰掛ける。

石に背中を任せながら小声でメニューを起動して操作を再開する。

四足歩行のために作られたこの姿の骨格では二足歩行は辛いようだ。

……主に腰が。


 ギックリやりかけた腰をさすりながら宙に浮いている光板の項目に目を通すと、白地の文字で四つの項目が表示されている。

 『ステータス』『メール』『ヘルプ』『地図』の四つがまるで公転する太陽系の星の様に『ステータス』を中心として無駄に回転している。


――めちゃくちゃタッチしにくいのに何故項目を回したのか担当者を小一時間問い詰めたい。


 ファンタジーで統一されていたのにいきなり微妙な機械風味なのを出したのは恐らく製作者の趣味なのだろうか。

 まぁ、製作者の趣味はひとまず横に置いておいて情報を一番得られそうなヘルプの項目をタッチする。

 操作説明はこの状態だと無意味なので流し読みをして使えそうなものを探し、戻る。


――やっぱ使えねぇか、クソ。


 操作説明はやっぱりというか、完全に元のゲームでしか役に立たない項目ばかりだったので心の中で思いっきり悪態をついて、今すぐには要らないものの必要な情報が詰まっていそうであるシステムや世界観説明の場所へ読み進む。


「はぁ?」


 誰か嘘だといってくれないか……?

 RPGの世界でレベルを上げ、生き残っていくのに絶対に必要な『経験値』。

それを手に入れるにはヘルプ曰くモンスターを捕食しなければ入手出来ないらしい。

自分の操作するキャラでゲームとしてやるならいくらでも出来るだろうが、中に入ってから自分の手でやるのはえぐすぎる。

 グロテスクな見た目の虫とかは食う気力もわかないし、料理ができない序盤で生肉もしゃりするとかはハードルが高い。


――というかわざわざ食べるという手間を増やすこのシステム採用する意味は有るのか……?



 グロテスクな絵面を想像して青ざめていると、

 前の草むらからクシャ、クシャ、と雑草が何本かまとめて踏みつぶされる音が聞こえる。

 岩陰へ隠れ、息を殺してじっとして耳を澄ますとその音が真っ直ぐこちらへ近づいて来ているのが分かる。


 敵なのかッ?


 抱きしめていた邪魔な光板を投げ捨ててそれが地面に触れた瞬間に消え去ったのを傍目で見ながら四つの足を踏ん張り頭を低くして身構える。


イメージはサイだ。

角の有る四足動物だから恐らくこれで構えはあってるはずだ。

というか、有っていると信じたい。




「来るかっ?くるならかかってこいっ!」


「ん?誰だ?」



 草を押しつぶしながらわさわさと体から音を立てて草むらから広場へ這い出てきたのは俺と同じくらいの大きさの緑色の触手まみれの何かだった。イメージでいえば、生ものでできたモップ。


 ――あれ?いまの声友人の声に似ていたような……?


「今の声は……そうか。

はは、震えてるじゃないか……兎塚。」


「……え?水野?」


 でてきたのはどうやら友人のキャラだったようだ……良かった。


 名前を呼ばれて友人だと知り安心したせいで、初めての戦闘に緊張しきっていた体が一気に弛緩して地面に崩れ落ちる。



「おいっ、大丈夫かッ!」


 いつの間にか無意識に気を張っていたのだろうか力が抜けてしまった。

後々事あるごとに笑われてしまうだろうけど、まあ、会えたしいいか。


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