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6.敵対

 月曜日になった。父親は日曜日から仕事へ向かっており、一月ひとつきは戻らないらしい。それまでに彼女作れとか言われたが余計な御世話だ。

 因みに残暑の厳しい中、今日から衣替えだ。


「……さぁて……まずはイケメンズを探さないとなぁ……何でこんなにめんどくさいことをしないといけないんだろう。」


 自分で首を突っ込んでおきながら今村は学校に着くなりぼやいたが、手間は省かれた。何故かイケメンズが取り巻きと共に今村の教室前にいたのだ。ついでに多くの生徒が集まっている。


「……おぉ丁度良かった。」

「……じゃないだろ!」


 今村の言葉に何故か反論するイケメンA(茶髪)今村はブレザーの刺繍を見て名前を思い出す。


「どうした蜂須賀。」

「……もしかして、いやもしかしないでも名前忘れてただろ今村。」


 今村は近眼の為、至近距離に近付かないと文字が見えない。そして近付かれて名札付近を見られていれば嫌でも気付く。


「……因みに俺は美川だからな?」


 一応イケメンB(黒髪)の方も名乗ってくれて大助かりだ。今村は本題の方に入る。


「で、そうだな……どうしたものか……」

「いや、どうしたものかじゃなくて何で今村の席に白崎さんが座ってるんだ!?」

「……は?」


 とりあえず今村は教室の中を見る。そして中を見て顔を引っ込め……はしなかった。今村はそのまま自分の席に向かうと勝手に座っている白崎に言った。


「表出ろコラ。」

「……来て早々随分なご挨拶ね。」


 周りは騒然となった。が、二人は特に意にも介さず教室外に出る。序でにイケメンズにアイコンタクトをとって伝わらなかったので来いと伝えた。


 そして一行は屋上前の階段の踊り場に向かう。



















「……さて、これが今村くんの友人?」

「そう言うことになるな。」

「……名前は?」

「蜂須賀に美川。」


 さっき聞いたのでばっちりだ。白崎は一つ頷いた。それを黙って見ていた蜂須賀だが何かを決めた顔付で白崎に―――


「あの!ごっふぅっ!」

「ちょっと黙ってろ。」


 想いを伝えようとして今村のボディーブロウで悶絶した。白崎は大きな目をしばたかせて手を叩いて言った。


「ナイスブロウ。」

「はっは冗談が分かって貰えて嬉しいね。さて、殴られた方が蜂須賀で殴られてない方が美川だ。……覚えやすいだろ?」

「……斬新な紹介ありがとう。まぁ、今村くんじゃないから人の名前くらいすぐに覚えられるけどね。」


 しれっとした顔で今村を軽くけなしてくるが今村はそんなことを気にしない。白崎は二人をじろじろ見つつもすぐに興味をなくしたようだ。今村の方を向く。


「……で、何で友人になったの?」

「恋愛したいんだとよ。面白そうだから協力することにした。……その成り行きでな。」

「……それは友人なの?唯の協力関係というのではないのかしら。」

「俺は力を貸して貰うようなことはしてない。完全なる善意で動いてる。」


 今村は説得力の欠片もなさそうな邪悪な笑みを浮かべて白崎にそう言う。白崎は溜息をついた。


「あなたの友人って言ったから……どんなビックリ人間が来るかと思ったら……最悪人間じゃないかと……」

「おい、お前俺を何だと思ってやがる?」

「……何でしょうね。……というより何?」


 逆に訊き返された。そして顔を見ながらどんどん距離を詰めていく。今村は目を逸らしたら何か負けな気がしたので見返した。


「……フフ……そうよね。あなたは変ね。」

「何言ってんだ?」


 いきなり罵倒された。今村は憮然として白崎を軽く睨む。白崎はそのまま軽く笑うと言った。


「それじゃ……授業も始まるし……」


 そして軽く一礼して階段を下りて行った。しばらくして今村は涙目になっている蜂須賀を見て溜息をついた。


「はぁ……この残念イケメンが……」

「何すんだよ……」


 いきなりのボディーブロウに不満げな蜂須賀に今村は髪をくしゃくしゃにしながら言った。


「お前、いきなり告白するつもりだったろ?」

「うぃっ!?何で分かった!?」


 図星をつかれて狼狽える蜂須賀に今村は頭痛を覚えながら答えた。


「雰囲気だ。で、今から二人の仲を良くして好感度上げて行こうって所に馬鹿なのか?……いや、まぁ……お前がそれでいいならそれでいいか。」

「おぉ……雰囲気で……凄いな~俺なんてよく告白されてるけどそんなのわかんないもんな……」


(オレ・コイツ・コロス。)


「その言い方だと敵作るから気ぃつけな……夜道に……」


 最後の一言はぼそっと言うことを忘れない。本心を言うなら羨ましくもないがだからと言って無視できるということでもないのだ。


「お……おぅ……」


 蜂須賀は最後の言葉も聞こえていたらしく微妙な笑みを返してきた。



















 その頃教室。


「うわー……なんで白崎さんが……」

「それに今村君……蜂須賀君に美川君まで連れて……」

「……そんなに目立たない奴だったのに……」


 教室は騒然となっており、廊下にいた人々も様々な憶測を立てて噂し合っていた。そんな中で今村に絡んだ最初の4人が面白くなさそうにしている。


「……倉田更にやられたって?」

「あぁ……山武中の沼澤が正面切って闘ったのに瞬殺された……」

「マジか?あの沼澤が?」

「マジか……」


 上から順に高山、倉田、吉崎、富田林が会話する。そこに一人の暗めの男子生徒が近付いてきた。


「あ……ちょっといいかな?」

「あぁ?」


 気弱そうな男子生徒は石山。クラス分け当初に今村の前の席でよく話していた生徒だ。それを知っていた4人はガンを飛ばす。それに少し引きながらも石山は暗い笑みを浮かべて言った。


「き……君たちって……今村と敵対してるよね……」

「あぁ?だから何だぁ?」


 媚びへつらうような笑みを向ける石山に苛立った高山が高圧的に対応して石山は引き気味になる。が、続けた。


「今村に恥をかかせればいいんだよ……」

「……へぇ……何かあるのか?」


 暗い笑みを浮かべ続ける石山に富田林が興味深そうに応じる。


「あるよ……あいつね。自分を化け物の生まれ変わりだと思ってるんだ。……それも恥ずかしい位特別な……」

「……へぇ詳しく聞かせてもらおうか……?」

「うん。もちろん……」


 にちゃぁっとした笑みを浮かべる石山に吉崎が怪訝な顔を向けた。


「でもよぉ富田林……こいつ今村と仲良かったし何か怪しくね?」


 その言葉に石山は狂気の炎が燃え盛る目を向けた。


「あいつは……僕らの女神様に近付き過ぎてるからね……うんと恥をかいて近づけなくしたいんだよ。……むしろ白崎さんが避けるようになる方がメインの考えなんだけどね……」


 そう言って暗い顔に戻るとその日の放課後会う約束を取り付けて4人と石山は席に戻った。

















 そして別方向では女子が集まっていた。


「……何かムカつくなぁ……」

「王子たちに囲まれて調子に乗ってるからじゃない……?」

「黙って受け流してればよかったのに態々あの4人に注意してクラスの雰囲気悪くしてるしね……あいつ死ねばいいのに。」

「ホントホント。時々本を読んでニヤニヤしてるのとかが視界に入るとマジうえってなるくらいの顔なのに何で王子たちと……」

「……排除しよっか。」

「そうだよね。」

「えーでもあいつヤバいって噂聞くよ?あの4人あんな状態じゃん。」

「バレなきゃ大丈夫だって。」


 そして相談をまとめ上げていると今村が教室に帰って来た。そして今村は自分を見ている人間が多いことを感じた。……が無視して本を読んだ。


(……何か妙なことになってそうだなぁ……先手を打つとして、一応明日からはアレ・・持って来ておくか……)


 そう思いつつ本を読み進めることに没頭を始める。




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