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18.お化け屋敷

「あははははははは!」


 3枚のカードを貰ってお化け屋敷に入ると唐突に今村が爆笑して連れている4人がビックリした。


「……どうしたの?」

「いや、何となくウケた。んじゃ行こうか~」


 軽いノリで今村はそう言って歩を進めるが、蜂須賀、美川、小野はびくびくして歩みが遅かった。白崎はそれなりに怖そうにしているが、動くにあたっての表面上の問題は何もない。


「うぅぅうぅぅぅぅ……あぁあああぁぁぁぁ……」


 歩くのが遅いので一応少し待った今村は暇だったのか呻き声のようなものを上げた。白崎はそれを気味が悪い物を見る目で冷たく見てから言った。


「……ねぇ、その声の意味は何かしら?」

「ゾンビっぽくね?」


 読経の声が不気味に響く中、今村の地底からゾンビが這い出て来るかのような声に白崎が呆れ顔を示す。対する今村は満面の笑顔だ。


 その時だった。急に大きな音と共に仕掛けが動き、一行の目の前にミイラが棺桶の中から飛び出て来た。


「お。」


 今村は反射的に軽く戦闘態勢に入り、重心を変えたがすぐに戻る。


「っ!」


 白崎は驚いて今村の服を少し引いた。


「きゃあああぁぁっ!」


 小野はびっくりして叫ぶ。


「うわぁっ!」

「おわっ!」

「……そこはさぁ……もうちょっと頑張れよ……」


 蜂須賀と美川は二人で抱きつきあっていた。それを見て今村は嘆息する。


「……仕方ないし隊形変えようか。俺を一番後ろにする。白崎は蜂「今村くんの横ね。」……あいつの男気を信じてやってくれ。」


 白崎は少し蜂須賀を見たが首を振った。今村も視線に釣られて蜂須賀を見たが妥当な判断だと思う。


「……じゃあしゃあない……小野を美川と蜂須賀で挟む感じで俺らの前を歩いてくれるか……?」


 あんまりごちゃごちゃ言っていると疑っている白崎が疑いを深めそうなので今村は妥協案を申し入れた。


「……今村、ちょっと、いいか?」


 提案が受理された直後に今村に美川が耳打ちする。今村は美川が少々近すぎて不快だったがその気分を抑えて話を聞いてやる。


「どうすれば怖くないんだ……?」


 そんなことを聞いて来る美川に今村は歪んだ笑みを浮かべて軽く耳打ちで答えてやった。


「死ぬのに比べればマシだと思え。ついでに死んでも別にいいや来世で頑張ろうとでも思えばいい。そしたら大概のことは何とかなる。」

「……お化け屋敷でそこまで……いや、俺が訊いたんだったな……」


 死の覚悟を以て取り組む必要があるのか……と軽く戦慄した美川。そんなことをしながら一行は少しずつ進んで行き、壁に血が飛び散っており、不気味なカプセルがある何らかの実験室のような一室に辿り着いた。


「……ここのお化け屋敷のコンセプトがいまいちよく分からんな……ミイラで、研究室って……ん?」

「何か扉が閉まってるんだが……」


 先行していた蜂須賀と美川が扉が閉まっていることに気が付き、そこの前に4桁のカードをスキャンした後に電子パスワードを入れるないと開錠しない仕掛けがあることに気付いた。


「……さ、先に進めないのか?」

「ダイアル式だったら開けれるんだが……これの開け方は知らんな。」


 今村は簡潔にそう言って今来た道を戻り、手分けして探すことを提案した。


「んじゃ折角もらったカードが3枚なんだし俺は単ど「私とね。ここだけに時間をかけるのもなんだし二ペアに分かれて行きましょう。一応こちらがカード1枚でそちらが2枚でどうかしら?」……面白くなんねぇじゃん……」

「今村くんが嗜虐趣味なのは分かってるから追い詰めないでほしいわね。」


 今村と蜂須賀、それに小野が納得いかないようだったが、今村以外は白崎に黙らされた。


 蜂須賀は惚れた弱み。小野は白崎の睨みに、そして今村は多数決によって意見を封じられた。


「はぁ……まぁいいや。」


(さくさく歩いて置いて行こ。)


 今村はそう判断してさくさく移動開始。そして動きが阻害されているのに気が付いて今更白崎が服の裾を掴んでいることに気が付いた。


「……何か?」

「……いや、別にいいけどよ……」


 そういうのは蜂須賀とやって欲しかったなぁ……そう思いながら今来た道を歩いていると目の前から男女のカップルが近付いてきた。


「……後続の人かしらね……?ちょっと歩くのが遅かったかしら……?」

「……あぁ、成程。懐かしいなぁ……」


 白崎が仄暗い場所でそう判断して目を凝らし、そして息を吞んだ。小太りの女性は腸をだらしなく出して歩き、ガタイの良い男性の方は首から上がないのだ。


 両者、血を流しながら力無い足取りでこちらに向かってくる。白崎は今村の左手を抱き締めた。


「……だからそういう……まぁいいけど……」


 本当に蜂須賀と入れ替わりたいなぁ……と思いながら今村はそのカップルの方へと歩き出した。それを白崎が袖を引いて止めようとする。


「何?」

「な、何じゃないわよ!今村くんこそ何してるのよ!?」

「アレに何か書いてあるかな~って思って。」

「ばっ……そ、そうね……ここはお化け屋敷……作り物よね……」


 そう言って白崎は今村の腕をつかんだままだ。今村は若干面白そうなので白崎にあることを告げた。


「あの人たちは人間だよ?作り物じゃない。」

「……は?ふざけるのは時と場合を読んでからにしてくれるかしら……?」


 白崎は若干怒りながら投げの姿勢に入ったので今村は右手で白崎の外側の肩に掴みかかり……そこで自分たちの体勢に気付いた。


(……これじゃあ俺がこいつを抱き締めてる形になるじゃん……まぁそれは置いといて。)


 鼻腔を白崎の髪などの良い香りが満たしていたが、今村は意識的にそれを断ち切る。今はそんなことをしている場合じゃないのだ。


「……投げんなよ?」

「え、……えぇ。」


 一応そう言っておいて今村は白崎を解放する。白崎の顔は俯いており、その様子は窺い知ることは出来なかったが、それよりも大切な目の前のゾンビカップル(仮)がいなくなっていたことに気付く。


「ちっ!逃げられた。」

「…………ふぅ。追うのかしら?」

「嫌そうにするな。説明するから……」


 今村はガタイの良い男首なしゾンビは手が移動中の揺れに会わせてしか動いていなかったことと、足が短かったことを踏まえ、中に人が入っている物だと説明する。


 そして小太りの腸出し女性ゾンビの方はやせ形の女性にそう言うスーツを着せたものだと教えておいた。


「……何でそう言えるのかしら?」

「血の匂いがしなかった。後、腹が破れて腸が出てるなら腸はもっと長く出てるはず。ぶら下がるんじゃなくて引き摺る程度には長いぞ?」

「……内容は兎も角、一理あるわね……」


 そう言いながらカップルゾンビを探して戻っていくと、若干明るく水辺で靄が立ち込める場所に青白い亡霊のようなものが現れ、二人が近付くとケタケタ笑い声を上げた。


「い……今村くん……こんなの来る時いなかったわよね……?」

「……おぉ。技術は日進月歩だなぁ……」


 白崎が僅かに震える声でそう告げるが今村が見ているのは別の場所だ。ついでに内容もずれている。


「……あ、これはアレな。スーパーで野菜……お前らはスーパーに行かないかまず……要するに霧をスクリーン代わりにして映像を投射してるみたいだ。」

「……今村くん……あなた何者……?」


 今村は口の端を吊り上げて笑うだけで何も答えなかった。そして幽霊を通過してその後ろに行くと戻って来た時にしか見えない位置にカードが入りそうな窪みがあった。


 今村がそれにカードを嵌めると0303という数字が浮いて来たので今村は白崎に覚えておいてもらって元の場所へと進みだした。


「……0303ね……別に意味はないのだけど3月3日って私の誕生日なのよ。」

「……それは来週祝えと言っているのか?」

「ふと思い出しただけよ。別に……あぁでもパーティーが開かれる予定だから来たいなら招待するけど……どうかしら?」

「遠慮しとくよ。その日まで親がいないから親の金でピザ食う日だし。」

「遠慮はしなくていいわよ?別に一人増えても何も問題ないし……」


 そんな会話をしながら二人は扉の前に着き、今村がロックを解除すると2人揃って扉の外に出られた。


「……で、話を続けるわよ?欲しいならパーティーにもピザは出すわよ?」

「人と会う予定だしなぁ……まぁ行けたら行くよ。」

「……来る気ないでしょ?」


 白崎がジト目で今村を見るが、今村は場がいきなり墓地になったのでそちらに気を配りながら進む。


「はぁ……まぁ別に来なくてもいいのだけど。」

「あ、白崎。あれ見てみ。アレは本物の霊だよ。」

「……へ?」


 白崎が思わず間抜けな声を出して今村が指す方を見ると血涙を流している霊がいた。


「ふきゃっ!」

「……え?今の何?」


 今村は霊の存在より白崎の声の方が不気味なもののような扱いの視線を驚いている彼女に向けて送った。


「な、ななな……な、何アレ……霧とかもないのに……こっち来てるわよ!?」

「霊。こういうところって偶にいるんだよね~まぁだから狩る方も隠れてるんだけど。」


 その血涙を流していた霊は白崎が次に意識して見た時には既にいなくなっていた。


「お疲れ様です。」


 今村も狩る側は見えていないが、何となくその対象に敬礼だけしてその場を後にした。白崎は狐に化かされた気分で今村の腕を取ったまま付いて行き、いくつかの仕掛けをクリアした後は普通にお化け屋敷はクリアした。




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