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変わったの



 お粥を作って待っていると、一也が出てきた。


 彼は痩せていた。


 着るものがなかったので、タオルを腰に巻いているだけだった。

 澪は、部屋に男性がいることが信じられずしばらくぽかんとしていたが、しっかりしなきゃと首を振った。


「ごめんなさい、何か着るものがいるわね」


 自分の洋服はどうしようもないが、裸でいると風邪を引いてしまう。


 仕方なくブラウスを渡したが、着られそうもない。


「スーパーが近くにあるの。走って買いに行ってくる」


 澪が言うと、一也が驚いた顔をした。


「こんな時間に空いているのか?」

「まだ、二十時過ぎたところだよ。大丈夫。一也さん、待ってる間、お粥食べてて、ね?」

「ああ」


 財布をつかんで部屋を飛び出す時、一也は目を伏せて床に座り込むのが見えた。澪は足をとめた。


「気分が悪いの?」

「いいや」


 一也は首を振った。


 澪は、振り切るように飛び出した。一秒でも早く下着と洋服を買って、人間らしい彼に戻って欲しかった。

 買い物を済ませて部屋に戻ると、一也は畳の上でじっとしていた。

 机の上にはからになったお粥のお鍋が置いてあった。

 安堵して、少し気持ちが落ちついた。


「ただいま」

「帰ったのか?」


 一也がゆっくりと顔を上げた。

 澪は彼の足から血が出ているのに気付いた。

 買ってきた洋服を渡し、彼が着替えている間に、救急箱を取り出した。


「ケガしてる」

「ああ……」


 一也はパジャマを着ると、目を閉じた。

 澪が足の裏に消毒をつけている間もじっとしていた。


「お腹はどう?」

「平気だ。うまかったよ。料理が得意だって本当だったな」


 優しい笑顔で答えてくれる。澪は胸が熱くなった。


「もう休んで、布団敷くから」

「ありがとう」


 一也は疲れて見えた。

 押し入れから布団を出すと、部屋はすぐに狭くなった。

 澪はドキドキした。明りを消して二人で横になった。


「澪」

「何?」

「何歳になった?」

「十七歳よ。ひとつ年を取ったわ。定時制の学校に行ってるの。今日は休みだったのよ」

「澪」


 一也の手が自分の手を包んだ。


 澪は体が震えた。


「これから、迷惑をかけると思う」


 澪は目を閉じた。それから目を開けると、一也の方を見つめた。


「一也さん、わたしを見て」


 一也が身じろぎしてこちらを見た。


「わたし変わった?」

「いいや、前よりずっときれいになったよ」

「ありがとう。でも、わたしは変わったのよ。そして、あなたも変わった」

「そうだ……」


 一也は目を閉じた。


「一也さん、後少しだからわたしを見て」


 一也の目は半分閉じている。

 二人のぬくもりで布団の中は温かかった。


「見てるよ…」


 澪は一也に手を伸ばした。

 額に触れて、頬を撫でた。彼はされるままだった。

 唇に触れたが、一也はすでに寝入っていた。


「わたしは、変わったのよ」


 澪は呟いた。





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