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不揃いな勇者たち  作者: としよし
第15章 平穏の終わり
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第三十一話 いつもやってきたこと


「女王陛下、撤退しましょう」


 グラッセル王宮からすこしばかり離れた場所で、官僚の一人が意を決し進言した。

 現近衛兵隊長は殺され、前任のエドワード隊長は化け物対策の指揮に当たっている最中だ。数名の兵士と官僚たちとで王宮から距離を置いたはいいもののやはり踏ん切りがつかず、王宮を遠目に見ながら佇むしかなかった。


「あなたが、そして民が居ればグラッセルはやり直せる。ですがこのままでは皆潰されてしまう」

「……わたくしなど、居ても居なくても同じです」


 官僚は口を開きかけ、シェリア女王の表情を見、黙り込んだ。

 あのまま混乱した王宮に留まったところで、前代未聞の化け物を倒す指揮などシェリアに取れるはずもなかった。自分が下手に口を出すよりエドワードに任せた方が良いことは百も承知だ。国のトップが騒動に巻き込まれては、それこそ今後の見通しが立たなくなると言いくるめられ、こうして一時的に避難したが、虚しさと不安は拭えない。

 都が、王宮が。賊に蹂躙されることを、自分は防げなかった。


 そんな自分が逃げてきたことが後ろめたく、しかし戻ってどうこうできるものではない。シェリアを護るために人員が割かれ、むしろ足手まといになるだろう。早々と連れ出されたのはそういうことだったのかもしれないとも思う。

 このまま民を置いて逃げるつもりはさらさらない。しかし実際は、避難勧告も出せずにいる状況だ。

シェリア女王は化け物を見やった。

 あまりにも大きく、途方もない。これは人がどうこうして倒せるものなのだろうか。なだめて祈って、気が済むまで暴れて去っていくのを待つしかないのではないか。

 それではまるで、神のようだ。この王国の歴史に終止符を告げるために。


 だがシェリアはかぶりを振った。心が弱っている。あんなものは神ではない。

 嵐や地震や、古来から人々が恐れ崇め奉る、そういった天災の類とは明らかに違う点。


「あれは、人の手によって作られた化け物です。わたくしたちはそれに屈服してはなりません」


 そして官僚たちに背を向け、再び王宮の方を見やった。


「少し、待ってください」

「しかし」

「お願いです、もう少しだけ」


 あそこに化け物がいるということは。そしてあれだけ魔法の攻撃があったということは、恐らくその近くに彼も居るはずだ。

 化け物に立ち向かう人々に思いを馳せ、シェリアは目を瞑った。






「……やべ」


 思わずラクトスは声を漏らした。

 不意に化け物と目が合った、ような気がする。

 残念ながらそれは勘違いではなかった。とうとう化け物はその視界にラクトスを捉える。煩わしい爆撃の発信源と認識したのか否か、その巨大な手は建物の屋根へとまっすぐ伸ばされた。迫り来る掌からラクトスは間一髪で逃げるが、化け物が一掴みした屋根は抉られ、あっけなく崩れ落ちる。

 堅固な造りであるはずの王宮が、まるで子供に手づかみされたケーキのごとく脆いもののように思えた。崩れた屋根や瓦礫が音を立てて落ちていく。

 当然、発動直前だった魔法も消えてしまい、ラクトスは舌打ちした。


「き、気づかれずに詠唱を続けられると思ったか? あ、甘いですねえ。一魔法使いごときに、た、倒せるはずもない」


 サルマの機嫌は上々で、一切手を出さず成り行きに任せていた。ラクトスが出てきたことは想定外だったはずだが、化け物が優勢であることには変わりない。

 なによりサルマの杖はモーネに真っ二つにされてしまい、使いたくとも使えない状況だった。それが発端でこの化け物が出てきたようなものだから、杖が壊れたことが吉と出たか凶と出たか、今となってはわからないが。

 化け物がもう片方の腕を持ちあげた。今度は両手で捕まえに来るらしい。

 とてもじゃないがこの状態で詠唱は叶わない。化け物の巨大な手の影が、ラクトスの上に落ちる。

 まずい。

 ヒュンと空気を切る音と、続いて何かが刺さる音。化け物の手はラクトスを追うのを止め、そのまま自身の肩に当てられた。そして探るように上下する。

 そこに刺さっていたのは矢だった。


「今のうちに何とかしなさい! 一人でかっこつけてるんじゃないわよ!」


 下から、声がする。屋根の上に居るラクトスからは当然その姿は見えず、ぎりぎり声が届くかどうかというところだ。

 それでも、誰の声かはわかってしまう。下からここまでの高度へ、勢いを削ぐことなく矢を射る腕の持ち主をラクトスは一人しか知らない。

 そしてまた、もう一つ声が飛ぶ。


「ぼくたちが引き付けてるうちに、きみが詠唱して! いつもそうやってきたでしょ!」


 ラクトスは苦笑した。

 大口を叩く声の主本人は、この巨大な化け物相手に剣を握っているのやらいないのやら。


「簡単に言いやがって……」


 前衛のあいつらが敵を引き付けて。その間に後衛の自分が詠唱して。

 いつも、やってきたこと。

 そうやって、ここまで来た。


「いいぜ、やってやる」


 ラクトスは杖を手に、呪文を唱えた。





「まあ痛くも痒くもないのは、承知の上だけどね」


 実に不服そうに、ルーウィンは次の矢を番え、そして放った。

 本人が言うように化け物にダメージは無い。だが気を引くことには成功した。感覚か、あるいは感知機能か。いずれにせよ、なかなかに繊細な触覚をしている。

 化け物はラクトスに背を向け、地面に視線を落とした。それと同時に兵士たちからうろたえる声が漏れる。こちらに気を引くのが目的なのだが、いざそうなると多少の動揺が生まれるのは仕方ない。


 化け物が、わずかに呻いた。

 モーネが大鎌を振りかぶり、勢いよく脹脛ふくらはぎに突き刺したのだ。怖いもの知らずの彼女らしく、振り上げたその腕には一切の迷いが無い。大きな三日月の刃は化け物の肉に食い込み、切り口から生々しい何かが覗く。多少の手ごたえに、続けてモーネは躊躇なく二度目の刃を振り下ろす。

 だが刃先が少し当たった瞬間、恐るべき早さで身を引いた。


「だめ。刃、こぼれる」


 思ったよりも肉体の強化は早いらしかった。モーネが二振り目をためている僅かな間に固くなるなら、やはり物理的な攻撃でのダメージは絶望的だ。


「へえ、あんた刃こぼれとか気にするんだ。折れるまで打ち付けるもんだと思ってたわ」

「折れたら、困る」


 素早く下がってきたモーネにルーウィンがそう言うのを聞き、フリッツは意外な顔をする。


「二人とも、いつの間にそんなに仲良くなったの?」

「なってない!」

「あ、来た」


 モーネの簡潔な指摘は、残念ながら用をなさなかった。

 化け物はあまりにも静かに腕を伸ばし、すっとフリッツを掴んだ。そしてひょいと持ち上げる。奇妙な圧迫感と浮遊感に、フリッツは頭が真っ白になった。

 一瞬の出来事だ。ぐいぐいと持ち上げられ、あっという間に視界が開けてグラッセルの町並みが見下ろせる高さに届く。


「え、えええ!」

「フリッツ!」


 化け物の拳から抜け出ようともがいてみるがビクともしない。だがこの高さで抜け出したところで、待っているのは落下とその先の地面だけだ。不意に手を開いて落とされることを想像し、ざあっと血の気が引いていく。だが、そういうつもりはないようだ。少なくとも、今のところは。

 図らずも化け物の目線と同じ高さに来てしまった。目を合わせたら最後のような気がして、しばらく頑なに顔を逸らしていたフリッツだったが、とうとう怖いもの見たさの欲求に負け、恐る恐る視線を化け物に向ける。

 足元から見ていたのと同じだ。やはりよくわからない顔だった。


 がっしりとした体の造りに反して、この雑な顔の造りには違和感があった。まあ、化け物の顔を造り込む意味などあまりないのだろう。きっと以前グラッセル王宮地下で戦ったゴーレムの類だと思われた。

 前髪がそよいで、フリッツは不思議に思った。風ではない。よくよく注意してみれば、化け物の顔の中心にある穴のようなところから吹き付けてくるものだった。顔をしかめるほどではないが、すこし生臭い。


 息をしている。

 そしてフリッツは思う。ゴーレムは呼吸をするのだろうか。土人形も、人間と同じように精巧な動作をするためには、やはり体の構造も同じようにしなければならないのだろうか。

 いけないとわかっていながら、フリッツの視線は鼻から上に、化け物の目へと移っていく。そこにはぽっかりと開いた暗い穴があるだけだ。瞳はない。

 だが、なぜか物悲しい。表情というものは無いのに、なぜだかそこには哀しみと、雑然とした混乱と、そして不安とが渦巻いているような気がする。

 おぼつかない過去に、見えない未来に。


「あの……」


 フリッツは自分でも気づかないうちに口を開いた。


「前に、どこかで」


 刹那、化け物の力が強くなる。締め付けがきつくなり、骨が軋んで息苦しい。

 考え事など吹き飛んでしまった。化け物はこのまま自分を握り潰す気だろうか。

 かと思いきや、化け物は態勢を変えた。肩を引き、片方の膝が軽く上がる。

 フリッツの顔から一気に血の気が引いていく。この態勢フォームは、見覚えのあるものだ。


「え、嘘でしょ。ちょ、ちょっと待って……」


 投げられる!

 思うと同時に、フリッツは物凄い力で宙に放たれた。

 この先に待ち受ける死を嘆く暇も無く、壁に叩きつけられたような衝撃がフリッツを襲う。強烈な風圧と重力とで息も出来ず目も見えず、頭は強打されたように真っ白だ。


 だが不意に、その感覚は終わった。

 死んでしまったのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。フリッツの落下は唐突に止まった。恐る恐る目を開けると、身体はまだ宙に浮いている。

 大気が自分を取り巻いているのがわかった。ラクトスのウインドアームだ。

 とはいえ支えているものが可視出来ないままに宙に浮いているのは心もとない。冷や冷やしながらも、安定した動きでフリッツは地面へと下ろされた。ふわりと着地し、周りの兵士たちから歓声と拍手が湧く。

 思わず照れて頭を掻いたところを、つかつかと寄ってきたルーウィンに捕まって殴られた。


「前衛の失敗は」


 上から声が降ってきて、フリッツは顔を上げる。

「後衛がカバーするもんだからな!」

 

 これもまた、いつもやってきたことだ。

 屋根ぎりぎりのところでラクトスがこちらを見下ろしていた。

 この距離があるからこそ、成立した会話なのだろう。面と向かってでは、ラクトスはまだ口を利きたがらないはずだ。

 でも今はそれでいい。すべては目の前の敵を倒してからだ。


「うん!」


 不敵な笑みを浮かべるラクトスと目が合ったような気がして、フリッツは力強く頷いた。

 そして調子に乗るなと、ルーウィンにまた一つ殴られた。





 とにもかくにも化け物は、魔法で攻撃を仕掛けるラクトスの存在に気づいてしまった。そして妨害する知恵もある。

 ルーウィンの弓で意識をこちらに向けたとしても先が続かず、脚も強化された今ではモーネも積極的に攻撃するわけにはいかない。フリッツなど最初から手も足も出していない、なんとも情けない状況だ。

 だが何も出来ず手をこまねいているのは、何もフリッツ一人ではなかった。


「なんとかあいつが詠唱する時間を稼がないといけないな」

「化け物の手が屋根に届いてしまってはだめだ。転ぶか倒すか出来ればいいんだが」

「それが出来ないから、今こんなことになっているんだろう!」


 兵士の中には苛立つ者もいた。何も出来ない自分たちへの焦燥が募っているのだろう、平静でいられる者は少ない。自分たちの守る王宮が壊されていく。このままでは、それは都の市街にも及ぶのは時間の問題だ。

 しかし効果的な対抗策を取れないことを徐々に受け入れ、ラクトスの力になろうとする意見もちらほら生まれている。だがその手助けの術すら思いつかないのが現状だ。


「せめて少し、地面に膝でもついてくれればなあ」


 誰かのその呟きに、フリッツの耳がピクリと反応する。

 そして、閃いた。


「隊長さん、お願いがあります。一度しか使えない手ですし、もしかしたら無駄骨になるかもしれませんが」


 エドワード隊長は腰を曲げ、フリッツの耳打ちにうんうんと頷いた。


「……なるほど。化け物相手に利くかはわからないが、このまま何もせずにいるよりはましだな」

「ありがとうございます!」


 エドワード隊長の快諾に、フリッツは声を弾ませた。





 王国軍がまたしても大砲を持ち出してきたのを見て、サルマは馬鹿にしたように鼻から息を吐く。


「また、た、大砲ですか。馬鹿の一つ覚えですねえ。し、しかしあちらが砲弾をくれてやるというのなら、え、遠慮なく受け取りましょう」


 先の砲撃で化け物の身体の強化はかなり進んでいた。最初に急所らしい急所を全て狙ってくれたため、皮肉にもその部分の守りは固くなっている。砲撃を受けていない部分はまだ硬化していないが、だからといって痛くも痒くも無い。またそこが強化され、物理ダメージに耐えられるよう進化するだけなのだから。

 王国軍が砲撃すれば、化け物の手元に球が来る。そうなれば再び都に放り投げ、また思い知らせてやるだけだ。


 上空から見たところ、王国軍は大砲を化け物の後ろに二台持ってきている。死角から打てば気づかれないという、浅はかな考えなのだろう。確かに今は目の前の魔法使いに注意が向き、背後の大砲には気が付いていない。だが、それがどうしたというのだ。打つなら打たせてやればいい。


「さ、さあ! 背中でも腰でも尻でも、う、撃つがいい!」


 撃たれ打たれるほど、強靭になる肉体。これを最強と言わず、最高と言わずして何がそうだというのだろう。

 大砲を固定する。球を詰める。着火する。

 数人が離れ、耳を塞ぐ者もいる。


「撃て!」


 エドワード隊長の声が響き、サルマはにやりと笑った。

 だが次の瞬間、サルマは自身の目を疑った。思わずごしごしと擦りもした。

 砲撃が放たれると同時に、化け物は見事なまでに崩れ落ちたのだ。ガクンと体が沈み、そのまま地面に膝をつき転倒する。衝撃でもうもうと砂埃が立ち上る。


「な、な、な……な!」


 地面に転がっているのは二つの鉄球だけだ。強化の進んだ体に、たったの二発でこのダメージは信じがたい。

 だが相変わらず、化け物が地に伏している光景は変わらなかった。

 わなわなとサルマは身を震わせる。


「い、一体全体どうやって! こ、こんなことが」





 一方、地上では兵士たちから歓声が上がっていた。


「いやあ、まさかこんな方法で! 膝カックンとは思いつかなかったよ!」

「ぼくも言い出しておいてなんですが、本当に利くとは思いませんでした!」


 エドワード隊長は意気揚々とフリッツの肩を叩いた。まだ勝負もなにもついていないが、今まで手も足も出なかった相手を跪かせたのだ。これが盛り上がれずにいられるだろうか。

 フリッツ自身、幼い頃村の子供によく仕掛けられていたものだ。膝カックンとは、標的の背後に回り、相手の膝の裏に自分の膝を当ててガクンとさせる、あれだ。

 今では膝の位置が誰とも合わず、フリッツにそれをするためには相当無理な姿勢で膝を折らねばならないので誰もやらないが。ある意味、ちょっと悲しい。

 だが、そう喜んでもいられない。おそらく膝の裏の強化は始まっており、二度と同じ手は利かないだろう。

 喜ぶ兵士たちを尻目に、ルーウィンは訝し気に眉を寄せた。 


「でもこれが利くなんて。ますます人間臭い化け物ね」

「うん、そうだね……」


 先ほど化け物に捕まった時感じた既視感、あれはなんだったのだろう。

 だが考える間もなく、状況は刻一刻と変化していく。一瞬、フリッツは自分の目がおかしくなったのかと思った。化け物がわずかに、地面に沈んだように見えたのだ。

 それは思い違いではなく、化け物を中心にみるみるうちに窪みが出来、それは周りの地面にも及んだ。土台が削られ、建物にもひずみの影響が出、僅かに傾き始める。転がった瓦礫がカタカタと不穏な音を立てる。


「なんだ? こんな時に地震か?」


 化け物を転倒させたのは、詠唱時間を稼ぐためだった。

 一つの可能性に思い当り、フリッツは声を上げる。


「隊長さん、離れましょう! ラクトスの番です!」


 そして一斉に退避を始めた。 

 まるで流砂のようだった。

 ここまで恐ろしい速さで陥没していく地面など見たことが無く、その場にいる誰もが息を呑んだ。このまま王宮ごと地面に沈んでしまうのではないかと、そんな恐怖が頭をよぎる。


 だが、そうはならなかった。今度は化け物の周りの土が積み上がるように高くなっていく。おそらくはグランドノックの応用なのだろう。大量の土は、次第に形を作り始めた。いくつか形成された土の塊はちょうど肋骨のような形で、それは地面に開き、化け物を中心として花のように咲いた。

 檻が、閉まる。

 そしてその巨躯を、拘束した。

 しかし化け物も大人しく捕まってはいない。地獄から響くような呻き声をあげ、全力で拘束を解こうともがく。


「だめだ! 力技で破ろうとしている!」

「拘束が解けるのも時間の問題だ!」

 

 土の檻にピシピシと亀裂が入る。思わず耳を塞ぎたくなるような化け物の咆哮は続いた。もがき、抵抗している。やがて一つの拘束が瓦解し、続けて一つ、また一つと壊れていく。

 その時、頭上で不穏な音がした。雲の向こうで空の機嫌が悪くなっているのが窺い知れる。


「今度は何だ? こんな時に雨でも降るのか?」

「それじゃあ土が流されちまうぞ!」


 グラッセルに着いてからというもの、漆黒竜団ブラックドラゴン襲撃に似つかわしいような重苦しい曇天が続いていた。ここで天気が崩れるのは決しておかしなことではない。

 だがそれはあまりにも急性で、そして不自然だった。


「これは……。でも、そんなまさか」

「何よフリッツ?」


 ルーウィンが視線を向ける間に、フリッツの顔からみるみるうちに血の気が引いた。


「隊長さん! もっともっと、出来る限りここから離れましょう」

「どうしたんだい急に? そりゃあ、ここは危ないが」

「多分、落ちて来るんです!」


 檻が土くれに成り果て、化け物が空に向かって咆哮し、放たれた時。

 絶妙なタイミングで、天に光が走る。黒い雲間がまばゆく閃く。

 そして、地面へと流れた。


 視界を奪うほどの閃光と、地面を揺らす轟音。

 稲妻は、巨大な化け物を頭から貫いた。


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少女とギルド潰し
   ルーウィンとダンテの昔話、番外編です。第5章と一緒にお読みいただくと、本編が少し面白くなるかもしれません。
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