壱ノ二
普段は何も感じない普通の女の子であるが、一つ普通ではないことがある。
それは頭だ。
頭が普通ではないというのは外見で奇抜な髪形とかそういうのではなく、いわゆる内側、脳みそというべきだろうか。
月影褥は、ずば抜けて頭が賢いのだ。
どれだけ賢いかなんて説明できたものではないが、まぁ、今受けているテストなんかでは、軽く全国一位をとれるだろう。
噂によると、今からでも飛び級でしかも東大の法学部を卒業できるというのだ・・・
まぁ、何だか賢すぎて人が寄り付かないタイプの人間ってとこだろう。
そういう意味では、彼女も私と同じく友達がいない。
いや、友達がどうかは知らないが、人とは喋っている。
やはり、近寄りがたいという感じだろう。
そんな彼女に異変が起きたのは、一週間前のことだった。
◆
この日はかけてあった目覚ましが鳴らなかったため、朝食を抜いて走っていた。
「うっ!?」
そして、曲がり角を曲がったところで水晶とぶつかった。
「ってーなっ! ちゃんと前みろよっ!」
怒られた・・・。
「・・・ん? なんだ、お前かこんな時間に何やってんだ? さぼりか?」
嬉しそうに聞いてくる水晶。
「今、行こうとしているんだよ!」
そんな水晶にすかさず文句をいう。
水晶は、私の数少ない唯一の友達であり、何より一番信じられる人と言ってもいいのかもしれない・・・。
水晶は見た目、二十代後半の女性の姿をしているが、実際は何歳なのか分からない。
透きとおるような白い純白の肌に、白銀の毛先が巻き毛の長い髪の美女だ。
美しいという言葉がこれほどまでに似合う人を私は知らないと思う。
少し問題をあげるとすると、言葉遣いが荒いのと、そして何より、人間ではないということ。
かと言って、猫とか鳥とか魚という訳でもなくて、もちろん幽霊でもなんでもない。
正体不明の生き物なのだ。生き物なところも微妙かもしれないが。
そして、何より厄介なのが、水晶自身も自分が一体何者なのか分かっていないということ。
そして、私にしか見えないこと。
水晶と別れて、学校へと急ぐ。