壱ノ一
どうしても逆らえないもの。
それは恐れと同じ類なのかもしれない。
身の縮まるような環境で育ってきた月影褥は、常に完璧に過ごしていた。
少しでも間違えると、自分ではない自分になってしまうから。
でも、それは本当に自分なのだろうか。
そんな疑問にぶち当たってしまったとき、最初に思うことは何なのか。
◆
私の名前は門倉モヨリ。
性別は女。
長い髪を後ろで一つにまとめ、ポニーテールをしている。
その長さはもうすぐ腰に届くほど。
今いる場所は学校で、何をしているかというと、テストである。
私は一か月前に転校してきたばかりで、実をいうと友達がいない。
否、実はこの方友達と呼べる友達が出来たことが一度もない。
別に性格が悪いわけではなく、かと言っていい方でもなかもしれないが。
あえて原因をいうなら、「家柄」ということになるのだろう。
一応、門倉家は金融系の仕事をしている。
もっと分かりやすくいうと、少し危ない連中が家を出入りし、家の中も割と人相の悪い奴らが歩き回っている。
そして、門倉家で一番権力を持っているのは祖父である。
とりあえず、私の話はここまでにして、
今一番注目しなければいけないのは、私の目の前の席に座っている、月影褥のことだ。