第1話
☆ ☆ ☆
緋翠は6年ぶりの自宅にホッとひと息つき、6年前と変わらぬ外観と空気に暫く浸った。
フッと過ったイタズラ心にニタリと笑いそ~っと裏口に回って使用人用の玄関から入った。そして、誰にも気付かれず自分の部屋を開けた。
すると……。
― パパーン!! パチパチパチ!! ―
「!!!!!!」
いきなり飛び出た大きな音と自分の頭にふわふわと降ってきた紙吹雪に緋翠は驚して、思わず目を閉じる。そっと目を見開くとそこには屋敷中の使用人が集まっており、その中心に複雑そうな顔の兄としてやったりな顔の姉の姿があった。
どうやら、あの音と紙は姉・桜が魔法で造り出したものだったようだ。
「「お帰りなさいませ。お嬢様!!」」
緋翠は激しい音と使用人達からの予想もしてなかった歓迎で、暫く頭が真っ白になり、口を開けたままたたずんでしまった。ハッとなって未だ立ち直ってない頭で考え口を開いた。
「えっ…えっ…?なんで!?どうして!?どうして皆いるの!? 姉様達を驚かそうと思ってたのにー!!」
「甘いわよ。緋翠。椿兄様ならまだしも、私を驚かそうとするのはまだ早いわよ?。」
「ちょっとまて。俺ならってコラ。桜それはどういう意……「それに何かやりそうな予感したのよね。だから私達からも驚かしちゃえと思ってね。てへ♪」
椿が桜の言い分に不満の抗議を言うが言い終える前に桜に話を遮れてしまった。
(てっ…てへって…。しかも…椿兄様の話遮っちゃってるし…。)
姉の茶目っ気たっぷりな言い分に嬉しいやら呆れるやら、複雑な気分になった。普段の緋翠なら驚かす事はあっても驚かされることは殆どない。それだけ、緋翠は久し振りの帰郷に浮かれていたのだ。だが、嬉しい驚きでもあった。
「はぁ……本当に裏口から入ってきた……。」
「私の言った通りでしょ。……お帰り。緋翠。」
「お帰り。」
「「「お帰りなさいませ。お嬢様。」」」
「たっ…ただいま。」
緋翠ははにかんで皆に答えた。
― パンッ ―
「さぁ。緋翠も帰ってきたことだし、今日は豪勢に行くわよ♪」
桜は手を叩いて使用人達に、作業に戻るように指示した。