第9話 試練の洞窟(前編)
1
「これが……風穴」
カーラがつぶやいた。
それは大フューザの裾野にぽっかりと開いた大きな穴である。
深く深く奥へと続いている。
ごうごうと音がする。
涼やかな風が風穴から流れ出しているのである。
時間により風穴は風を吸い、あるいははき出す。
この巨大な山の中に風の通り道があるのだ。
風の通る巨大な穴であるから、風穴と呼ばれる。
実のところ、フューザの裾野には多数の風穴があるらしい。
だが、この風穴は特別である。
穴の入り口の両側は切り立った崖に覆われていて、空を飛べる者でもなければ侵入不可能となっている。
ここに来られる唯一の道は、マヌーノの女王のしとねである巨大なヤンバガルパの後ろを通り抜ける道なのだ。
それはマヌーノの聖域であるから、マヌーノの許しを得ない者は風穴に入ることはできない。
ただし飛竜を使役する竜人は、マヌーノの許しを得ることなく風穴に入れる。
バルド、カーズ、タランカ、クインタ、カーラ、ザリア、騎士ナッツの七人は、今風穴の前に立っていた。
その巨大な入り口は、大口を開けた魔神を思わせる。
息を吸い、はきながら、おろかな生け贄が入り込んでくるのを待つ魔神を。
2
竜人の長との会談が終わって、バルドたちはパルザムの王宮に帰された。
そこで王に報告をした。
その場にいたのは王と側近だけだったが、翌日重臣数名の前であらためて報告を行うよう求められた。
重臣たちへの報告では、竜人の長との会談の中身を余さず述べた。
ほとんどの報告はタランカが行い、バルドが補足する形である。
重臣たちには、ひどく雲をつかむような話に聞こえたようだ。
無理もない。
重臣たちには、ザリアやマヌーノの女王から得た知識や古代剣の秘密は伝えていない。
だから知識を組み合わせて推測することができない。
竜人たちとその〈あるじ〉が、人間の世界の歴史の背後でうごめいていたなどということや、偉大な古代の王の遺産などという話は、おとぎ話のようにしか聞き取れなかったようだ。
むろんバルドたちは、自分たちがそのフューザの風穴に挑むつもりであることなど口にしていない。
結局その報告会一度だけでバルドたちは解放された。
重臣たちは目の前の仕事に追われていて、竜人たちにはパルザム王国と争う意志がないということさえ確認できれば、もうこの事柄については忘れてしまいたかったのだ。
バルドがワジド・エントランテとして諸国戦争を勝利に導いたという実績は、バルドたちへの扱いを丁寧にさせた。
そのあとただちにバルドは仲間を連れてフューザリオンに帰還した。
クインタと移民団はまだ到着していなかった。
どこかで追い抜いてしまったようだ。
移民の多くは交代で歩くのだし、荷物をたくさん積んだ馬車を引いてやって来るのだから、それは無理もないことである。
バルドは、ジュルチャガやドリアテッサや主立った者たちに経緯を報告した。
そのまますぐに樹海に向かおうとしたのだが、そうはいかなかった。
ドリアテッサはフューザリオンの運営についてバルドに相談したい急ぎの用事がいくつもあった。
その中には騎士キズメルトルと騎士ノアの扱い、ということもあった。
この二人の騎士はハドル・ゾルアルスが育てた騎士で、カーズに仕えるためそれぞれ一家を率いて、昨年の八月末にフューザリオンに到着していた。
ドリアテッサは初め二人とその息子たちを客分として遇していたが、やがて治安や護衛に協力を求めるようになり、今ではフューザリオンになくてはならない戦力となっていた。
二人はカーズに会えて喜び、さっそく剣をささげようとした。
しかしカーズから、
「俺に忠誠を誓おうとするなら、バルド・ローエンに剣をささげよ」
と言われ、バルドに剣をささげた。
バルドはローエン家家長の名でこれを受けた。
そうすればバルドが死んだあと、この二人のささげた剣はカーズのものとなる。
二人の騎士は妻や子や使用人を連れてフューザリオンに来ていた。
騎士キズメルトルの長男ツルガトルは二十二歳、次男のハンガトルは十九歳である。
また、騎士ノアの長男のダリは二十歳、次男のゴアは十七歳である。
このうち、ツルガトルとダリは、すでにハドル伯爵から騎士叙任を受けている。
問題はこのツルガトルとダリの帰属をどうするか、また次男たちの処遇をどうするかである。
騎士一人を抱えるには、それだけの財の裏付けが要る。
完全非生産者である騎士一人の生活の資が必要というだけではない。
武具や装備を維持し新調しなくてはならず、家族や家臣を養わねばならず、いざという場合つまり戦争のための出費に耐えられるだけの蓄財をしなくてはならない。
さらに後進の騎士を育て叙任させるにたる財が要る。
バンツレン・ダイエのように従者も連れず腕だけを頼りに放浪するとでもいうのならともかく、騎士一人を養うには多大な財を要するのである。
ローエン家といっても、フューザリオンに小さな家屋を一つ持つだけで、これといった土地も領民も擁していない。
騎士キズメルトルと騎士ノアがカーズに仕えるという点は譲れないが、その子たちはどうしたらよいか、という問題なのだ。
バルドは、ジュルチャガ、ドリアテッサ、さらにオルガザード家筆頭騎士である騎士ヘリダンと相談のうえ、このように決定した。
騎士キズメルトルと騎士ノアに加え、その長男二人である騎士ツルガトルと騎士ダリもローエン家に仕えることとする。
また次男ハンガトルと次男ゴアは騎士の修行を続け、やはりローエン家を主家として騎士となる。
フューザリオン領主たるオルガザード家は、それにみあう財物をローエン家に支給する。
ローエン家はオルガザード家の家臣ではないが、その統治に全面的に協力し指示を受ける。
騎士バンツレン・ダイエは引き続き客将として遇し、じゅうぶんな生活の資を供する。
現在のところ、オルガザード家直属の騎士は騎士ヘリダン、騎士タランカ、騎士クインタの三人であるが、セト、ヌーバは引き続き騎士の修業を続け、オルガザード家の騎士として叙任を受ける。
また、今年新たに五人の若者が騎士修業を始める予定だが、さらに五人を選んで来年騎士修業を開始する。
それら十人の若者を始め、以後フューザリオンで叙任される騎士はすべてオルガザード家に仕えるものとする。
この決定を受けて、騎士ヘリダンは喜び半分、ため息半分というところだった。
オルガザード家が発展していくのはよいのだが、今面倒をみているセトに加え、その新たな十人のうち何人かの育成は自分に押し付けられることが分かっているからだ。
騎士キズメルトルと騎士ノアは、この決定を聞き、ひどく驚き喜んだ。
まさかそこまでの待遇が得られるとは思ってもいなかったのだ。
二人はバルドの威権とオルガザード家の度量に感銘を受けた。
自分たちにもたくさんの従卒が振り当てられるとはまだ気付いていない。
この問題にけりをつけたバルドのもとに、テンペルエイドが訪ねて来た。
テンペルエイドとその一行は、昨年九月初めにフューザリオンに到着したのだ。
バルドの手紙を読んだドリアテッサはひどく驚いたが、バルドが招いたというこの一団を粗略には扱わなかった。
取りあえずはフューザリオンに仮小屋を建てて住まわせ、農作業を手伝ってもらうことにした。
そしてその報酬を小麦や塩で支払ったのである。
小麦や塩をためておけば、どこに村を作るにしても心強い。
アギスの村人たちは小麦を食べるのも久しぶりだったし、上等の塩をたっぷり使える生活も夢のようだった。
またここには新鮮な魚も豊富だ。
そうして健康状態をよくしながら、バルドの帰りを待っていたのである。
バルドは、どの位置にアギスの村を作らせればよいか、主立った人々と相談した。
いろいろと検討した結果、ザリアの提案により五刻里ほど西の川のほとりが選ばれた。
ただし川の西側である。
アギスの村は、ここから西に西にと発展していくことになる。
人手を出して木を切り、エガルソシアを植えてみて、無事育つのを確認してから家を建てる予定だ。
テンペルエイドは騎士ガルクスとともに候補地を見て、土地の肥沃なこと、水の便がよいこと、発展の余地が大きいことなどに、非常に満足した。
そのほかにもドリアテッサがバルドに相談したい案件は山ほどあった。
バルドはそのうち幾分かは相談に乗り、幾分かは皆で相談するように言った。
そうしているところにクインタ率いる移民団が到着した。
この受け入れにも知らないふりはできず、多少の日数を費やした。
やっと区切りを付け、バルドは、カーズとタランカ、クインタ、それにザリアを連れて風穴に旅立とうとした。
当たり前のようにカーラがついて行くと言い張った。
それはいいのだが、なぜか騎士ナッツもぜひついて行きたいと食い下がった。
この男は移民団を送り届けたあと、しばらくフューザリオンの様子を見聞してくるようにシャンティリオンに言われたとかで、あちらこちらを見たり、ジュルチャガやドリアテッサに話を聞きに行ったりしていた。
ドリアテッサはにこにこしながら応対し、騎士ナッツを護衛や野獣狩りに野盗退治に使い回していた。
結局騎士ナッツは、従騎士たちを先に帰して一人バルドに同行することになった。
バルドはこうしてやっと旅に出ることができたのである。
3
マヌーノの女王のもとにたどり着くと、意外にも女王は、「風穴に挑みに来たのか」と訊いた。
バルドが、そうじゃ、と答えると、女王はマヌーノの一人に命じて風穴までバルドたちを案内した。
バルドたちは風穴に入った。
中の空気はひどく冷たい。
天上からは岩のつららが垂れ下がり、地上からは岩の柱が立ち上る。
不気味にねじれてゆがむ風穴を進むと、上下も左右も百歩以上あった広さが急に縮まる。
それでも奥へ奥へと風穴は続く。
通り抜ける風に全身をなでられながら、バルドたちは進んだ。
入り口は明るかったが、当然ながら奥に進むほど暗い。
途中からは松明をともして進んだ。
さらにしばらく進むと、前方にぼんやり光るものが七つある。
台座だ。
白輝石を削りだしたような台座が六つある。
といってもそれは地面から突き出ているわけではなく、いわば埋め込まれたようになっている。
台座の上面は鏡のように磨き上げられており、大柄な人間が乗れるほどの広さがある。
その台座が淡い緑色の光を放っているのだ。
長年放置されていただろうに、砂ぼこり一つないのは、吹く風に洗われ続けたからだろうか。
台座の奥は岩がせり上がって、行き止まりになっている。
上のほうに風の抜け道があるようだが、とても人が通れる場所ではない。
行き止まりになったその岩壁に、つるつるに磨き上げられた石板がはめ込まれている。
その石板が淡い桃色の光を放っている。
石板には文字が掘られているのだが、ひどく古い書体で書かれてあり、バルドには読めない。
だが、ザリアには読めた。
「〈試練の洞窟に挑む者よ。なんじらは三人以上でなければならぬ。そして六名より多くてはならぬ。台座の上で待て。しかして奥に歩み、一人ずつ闘技場に上るがよい。さすれば敵はなんじらの前にある。なんじらのすべてが敵を退ければ、大いなる褒賞が与えられるであろう〉、と書いてあるねえ」
「ここでしょうね、バルド様。
竜人たちがそこから進めなかった入り口というのは」
そうじゃろうのう、とバルドはタランカに答えた。
竜人は七回ここに来て、〈試練の洞窟〉に進もうとした。
だが入れなかった。
竜人たちはいろいろなメンバーや人数の組み合わせを試しただろう。
だからここに入る条件は、強さや人数ではない。
別の何かだ。
触ってみても岩の壁は微動もせず、隙間のようなものも見当たらない。
バルドは緑に光る台座に乗ってみたが、しばらく待っても何も起きない。
じっと石板をにらんでいたザリアが口を開いた。
「バルド。
分かったよ。
いいかい。
〈三人以上〉ってのと、〈六名より多くては〉ってのがキモだね、こりゃ。
後ろのほうの〈六名〉ってのは、人数のことで間違いない。
台座の数も六だしね。
六人までが人数制限ってわけさ。
問題は最初のほうの〈三人以上〉ってやつだね。
カーラ、これが分かるかい?」
とザリアはカーラに問い掛けた。
カーラはなかなか学問があり知識があるとザリアは見抜き、手元において助手のようなことをさせながら育成している。
「えっ?
そうね。
うーーんと……。
あっ、そうか!
〈トーリ〉って、人数を数えるときにも使うけれども、もともと人間のことじゃない?
だから竜人ではだめだったのよ。
ここは人間が三人以上六人までで台座に乗らなきゃ、仕掛けが働かないんだわ。
そうよ。
高慢ちきな竜人たちは、自分たちがのけ者にされてるなんて、思いもしなかったのね。
でも竜人じゃだめだったんだ。
そうじゃない、おばば様?」
「ふぇっ、ふぇっ。
それじゃあ、試してみるかい。
みんな。
台座に乗りな」
ザリアの言葉に従い、すでに台座に乗っていたバルド以外に、カーズ、タランカ、クインタ、カーラ、ナッツの五人が台座に乗った。
しばらく待ったが、何も起きなかった。
とすると、六人がそろい、その中に古代剣の使い手がいる、という条件でもない。
カーラは考え込んだ。
「違ったかあ。
じゃあ、何だろう。
トーリ。
トーリ」
「カーラ。
確かにトーリという言葉は人間のことを指して使われる。
けれどもそれは最近のことさね。
古くには、人間以外の種族も、みなトーリだったのさ。
その証拠に、竜人のことは〈ナーダ・トーリ〉、つまり蜥蜴の人と呼び、ゲルカストのことは〈リーエ・トーリ〉、つまり緑の人と呼び、マヌーノのことは〈オルタ・トーリ〉、つまり水の人と呼ぶではないかね。
すると、どうなるかね」
「うーん。
人間。
亜人。
人。
すべての種族が〈トーリ〉。
……あ。
もしかして。
〈三人以上〉ってのは、三種族以上ってこと?」
「そうさ。
それが正解さね。
三つ以上の種族を含む六人までの仲間をそろえること。
それがこの先に進む条件なんだろうね。
それは、あまたの種族が手を取り合っていくことを願ったジャン王の思想と一致する。
なるほど。
この洞窟にはジャン王の遺産への道が隠されているというのが、本当のことに思えてきたよ。
バルド」
バルドは台座から降りてザリアに近寄った。
「この六人では中に入れない。
出直しだね。
あんたは亜人に知り合いが多いから、何とかなるだろ?
人間以外にあと二つの種類の〈もとからの人々〉を呼びな。
それからね。
中に入ったら戦いになる。
敵は手ごわいだろうね。
六人は、どんな敵にも勝てるつわものでなくちゃならない。
心して人選することだね」
最強の六人。
それが世界の命運を決する。
バルドは目を閉じ、心の中にその六人を思い描いた。
そして目を見開き、命令を発した。
カーズ。
ゲルカストの勇者、ゾイ氏族族長のエングダルのもとに行ってくれ。
そしてエングダルを連れてくるのじゃ。
落ち合う場所は、フューザリオンじゃ。
まずはフューザリオンに集結する。
カーズがうなずいた。
タランカ。
お前はメイジア領に行け。
ゴドン・ザルコスを連れてくるのじゃ。
大型のバトルハンマーを持って来させよ。
それと重鎧もな。
「はいっ」
クインタ。
お前の行く先はテッサラ氏族の居留地じゃ。
わしの名でジャミーンの勇者イエミテに会い、わけを話して連れてくるのじゃ。
戦いの用意をしてくるよう伝えよ。
「はっ」
よし。
エングダルとイエミテとゴドンで三人。
それにわしとカーズを足して五人。
あとの一人は……
「あとの一人はあたしだね」
このザリアのひと言に、バルドとカーズ以外の四人はあっけにとられた。
そして猛反対をした。
「いや!
おばば様。
剣の腕なら俺が」
とクインタ。
「判断力と防御力と持久力は私のほうが」
とタランカ。
「あ、あたしのほうが若いわ!」
とカーラ。
「経験と戦いの駆け引きではひけは取りません」
とナッツ。
だがその四人を、ザリアは鼻で笑った。
「ふん。
分かっちゃいないね。
戦力はほかの五人でじゅうぶんなのさ。
足りないのはね。
あんた、こっちに来な」
ザリアはカーラを引き寄せた。
そして左腕を取って服をめくった。
そこは樹海を通る途中でオニムツデをかわしそこね、赤く焼けただれたような跡がついている。
ザリアはその傷痕に右の手のひらを当て、目を閉じ何かの呪言をつぶやいた。
ザリアの手のひらがぼんやりと赤い光を放つ。
するとカーラの傷痕はみるみる癒され、元通りの肌に戻った。
「ふう。
疲れるから、これはあんまりやらないんだけどね。
分かっただろう、若造ども。
六人目に必要なのは治療魔術師さ。
どんな傷もあっという間に治してしまう治療魔術師こそが役に立つのさ」
「こここ、こ、これは!
癒しの秘術?
聖具と儀式なしでこれができるなんて。
それにしても、なんて強い効果。
そうかっ。
精霊か。
おばば様の体の中に入り込んだ精霊の力なのね?
なんてすごい」
カーラが騒いでいる。
癒しの秘術とか、聖具と儀式とか、バルドも聞いたことのない知識をカーラは思わず披露してしまった。
もしかするとこのおなごはメルカノ神殿にゆかりの者かもしれんのう、とバルドは思った。
タランカとクインタは黙り込んでいる。
ここまで来て決戦のメンバーから外されるのは悔しいだろう。
とはいえ、ザリアの不思議な力を見せられれば黙るしかない。
そうでなくてもザリアの叡智は探索に役立つに違いないのだ。
また、ゴドンやカーズより自分たちのほうが強いとはとても主張できない。
けれどもタランカとクインタを残すのは、彼らが役に立たないからではない。
中に入った者たちは二度と戻らないかもしれないのだ。
彼らには来るべき時代に果たすべき役割がある。
かくして〈試練の洞窟〉に挑む六人が決まった。
この洞窟に踏み込めば、かつてない激しい戦いが待っているだろう。
それを勝ち抜いたとしても、その先に何が待つかは分からない。
それでも戦って勝てば道は開ける。
新たな冒険を前にして、バルドは全身が若返り、新たな力が湧いてくるように感じた。
バルドはいったんフューザリオンに帰った。
やがてエングダルが、イエミテが、ゴドンがやって来た。
イエミテはピネン老人の家に泊まることになった。
積もる話があるようだ。
エングダルは仲間を誰か連れて来るかと思ったが、一人だった。
そのことを訊くと、「これは秘密の冒険なのだろう。わしの武勲はンゲド・トーリ・バルドの胸に刻め」と言った。
カムラーの料理で彼らをもてなし、鋭気を養う。
また、模擬戦闘を行い、洞窟の中での進退や攻防について研究した。
そして、大陸暦四千二百七十九年八月二十五日。
彼らは風穴の前にいた。
このときバルドは六十七歳。
ゴドンは四十七歳である。
2月25日「試練の洞窟(中編1)」に続く