塩と月の力
「だから、そんな金ねぇって言ってんだろ?」
「やめろよ、俺大学なんて行かねえーし」
「ダメよ、今は大学に行かないといい就職先に就けない時代なんだから。
葉月だってそう」
まただ。
お母さんとお父さん、お兄ちゃんの喧嘩が始まった。
こんなときは私は2階で耳を塞いでるしかない。
人差し指を耳の穴の中に入れて、完全に音をシャットアウトするのだ。
そろそろいいかな。
「だから、金がねぇのにどうしろって言うんだよ!」
「あなたがもっと働けばいいでしょ!」
「じゃあお前もパート増やせよ!」
「そんなことしたら誰が家事するのよ?」
まだ終わってなかった。
私は急いで外に出た。
三日月がきれいだ。
私の足は自然に神社に向かった。
「お願いします。
みんながこれ以上喧嘩しませんように」
こんなお願いしたって無理なのわかってる。
お金が無いものは無いのだから。
2時間位神社に居ただろうか?
ゆっくり歩き出す。
すると、道の真ん中で何かが青白く光ってる。
猫だ。
私はそっと近づいた。
「ワタシハツキノセイレイ」
そう言うと猫は消えた。
光も消えた。
家に帰ると流石に、喧嘩は終わっており、お母さんとお父さんは別々の部屋で寝ていた。
お兄ちゃんは勉強をしているようだ。
ふと気になり、お母さんの部屋にもう一回入った。
お母さんのお腹の上が光っている。
御札が光っているのだ。
「これって呪いの?」
触ろうとした瞬間、私は誰かに突き飛ばされた。
さっきの猫だ。
「アレハノロイノオフダ
サワッチャダメ」
何がなんだかわからない頭を必死に回転させる。
「もしかしてウチの喧嘩はあの呪いの御札のせい?」
「ソウヨ」
「どうすれば、あの呪いを解けるの?」
「シオヲカケレバオフダハニゲテクハ」
私は急いでキッチンに言った。
塩の袋の端をハサミで切って、お母さんの寝室に戻った。
そっと呪いの御札に近づき、塩をかけた。
でも、足りなかったらしい。
ブルブルと御札を震わせて塩を弾いた。
なら、今度はもっと多く。
すると御札は逃げて行った。
「や!」
「オオゴエダシチャダメ
オキチャウ
アトフタリブンヤラナキャ」
「お父さんとお兄ちゃんも?」
「ソウヨ」
今度はリビングのソファーで寝ていたお父さんのところに行く。
同じように塩をかけると御札は逃げて行った。
次はお兄ちゃん。
でも、まだ起きてるー
これじゃ塩を沢山かけるなんて逃げられてできないよ。
そうだ!
私はキッチンに戻った。
塩レモンジュースを作った。
トントン。
お兄ちゃんの部屋の扉をノックする。
「はーい」
お兄ちゃんが返事した。
「お兄ちゃんこれ飲んで」
「何だお前、寝たんじゃなかったのか?」
「あっ、目が覚めちゃって」
「早く寝ろよ」
「うん。
あっこれ飲んで、せっかく作ってみたから」
「ああ、ありがとう」
お兄ちゃんは多めに一口飲んだ。
すると吐き出した。
「しょっぱ!」
マズい。
これじゃ御札が…
と思ったけど、御札は逃げて行った。
良かった〜
「ごっ、ごめん、分量間違えちゃったかな」
私はコップ奪い取って、慌てて部屋を出た。
次の日の朝は母と父の悲鳴から始まった。
そりゃそうだベットの上は塩まみれなのだから。
でも、
「あなた昨日はごめんね。
私も一時間でもパート増やしてみるわ。
それに福祉にも相談してみようと思うの」
「それいいな!
俺も悪かったよ」
私は二人を観てフフッ笑った。
「お前、昨日のジュース何だよ?
分量間違えたレベルじゃなかったぞ」
「アハハ、ごめんね」
私はその日、神社にお礼をしに行った。




