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君と私の歩む先  作者: さくらもちのも!


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4/4

知ってるか

「あの子は血が飲めないバンパイアだ」

 は、と掠れた声が二つ重なった。目の前にいる二人はどんな顔をしているのだろうか。知りたいとは思わなかった。

 

 

 ――昨日、バイオレットが風呂に入っている時。

 フランクじいさんはすでに、バイオレットがバンパイアであることを知っていたらしい。

『お前さんがそこまで入れ込むとはなあ……』

 たいそう手入れの行き届いた顎髭を撫でながら、彼は目を細めた。だが、瞬き一つの間にその顔は仏頂面に様変わりし、優しい声音で語りかけた。

『お前さんはどうしたい? いや、どうするべきだと思うかね? と問うべきか』

 フランクじいさんの心の中まで見透かすような目つきを感じた。きゅっと手を握り締めた。指先が冷たく感じた。

 冷えた酸素を吸い込んで

『……私が守るよ』

 そう答えた。

『そうか!』

 パッと変わった表情に思わずうげぇと顔を顰めれば、手に持っていた杖でコツンと頭を叩かれた。痛くない程度の叱責に、やっぱりフランクじいさんは優しいな、なんて。


 こほんと咳払いを一つはさんで、詳しい話は後でしようと言うと、彼はさっさと店を出て行った。

 

  

 

 すやすやと眠る少女の頭を撫でる。瞼は閉じられ、起きる気配はない。少女の隣のバースツールに腰掛けて、寝顔を眺めた。

 

 開店時間まで待てないと駄々をこねた可愛い子に、ウチの看板メニューのメロンソーダをあげたのだ。ウチのメロンソーダはバニラアイスを3個までトッピングでき、お好みで生クリームにもできるし、割と評判の品だ。主に子供達にだが。

 ――ただ、バイオレットにあげたものには、睡眠薬が入っていただけで。

 

 

 バイオレットは、カウンターに突っ伏している。ぎゅむぎゅむと押しつぶされている彼女の頬がかわいそうなので、クッションを一つ挟んでやった。

 触れた少女の温もりが消えてしまわぬよう、手をそっと握りしめた。

 

 

 私の世界に差し込む太陽の光は相変わらず、穏やかな温度を湛えている。だが、目の前の二人の人間は、剣呑な目付きでこちらを眺めていた。

 さて、この和やかと決して言えない雰囲気をどうしようか。

 

 

 隣の家に住んでいるフランクじいさんは、ズズ……と音を立ててコーヒーを啜った。彼は窓際のカフェテーブルの一脚に座り、我が家であるかのように、ずいぶんと寛いでいる。

 その反対側の椅子に座るのは、私の先輩であるナナ姉さんだ。私のバンパイアハンターとしての先輩であり、人生の先輩でもある。彼女は、勝気な性格で、私よりもかなり背が高い、強い女性だ。

 

 

「それで、私の可愛い妹につけ込む悪いバンパイアはソイツか?」

 腰に差していた拳銃を取り出し、セーフティを外そうとするのを慌てて止める。

「待ってくれ、ナナ姉さん」

 そうだ、そうだとフランクじいさんも頷いた。フランクじいさんに止められたのが予想外だったらしい。目を僅かに見開いて、ため息とともに、銃をテーブルの上に置いた。

「バンパイアは敵だよ。そうだろ」

 ナナ姉さんは、私の考えを探るかのように、じっと目を合わせ、人差し指でわたしを指差しながら、一文字一文字確かめるように言った。その言葉には強い嫌悪が滲んでいた。

 

 私はその言葉に何も返せなかった。私だってわかってはいるのだ。

 出会ったときに、バイオレットを殺してしまえばこうして苦しむ必要もなかった。妙な子供だったなと寝る前に思い出すくらいでよかったのだ。

 でも、彼女があまりに彼女自身について知らなさすぎた。何も知らないで死んでしまうのは可哀想だと思ってしまったんだ。

 

何も言い返さない私を、ナナ姉さんはじっと見続ける。

「降参だよ」

 全部話そう。そう言えばにたりと笑って、

「そう来なくっちゃなあ!」

 なんて面白そうに話を聞く体勢になるのだから、本当にこの人は……。

 頭が痛くなってきた。

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