勉強の時間
私は不貞腐れて、ベッドの上で膝を抱えていた。
ルカは椅子に座り、ため息をひとつ。
「さて、どこから教えたもんかね」
「ねえルカ、本当に今じゃなきゃダメ?」
「今じゃなきゃ逃げるだろ、お前」
「うっ……!」
たった数日で私の性格を見抜くとは。
観念して背筋を伸ばす。
「じゃ、魔術からだな」
「それなら知ってる。使えるし」
「……常識を学ぶんだよ」
「そのくらい持ち合わせてるって!」
「じゃあ、習った順に説明してみろ」
「はあ? わかったよ」
ルカの疑いの目。なんか腹立つ。
けど反論できないから、渋々話し始めた。
「まず発動の仕方。火の魔術が最初だったんだ。先生が得意でね。あっちから魔力を私の体に流して——」
「魔力を体に…?」
「うん、ちょっと痛かったけど。いろいろ試したけど得意なのはなかったな」
「……で?」
なにこの圧。怒ってない?まあいいや。
「あと魔術士の階級。神話級、伝説級、超級、最上級、上級、中級、下級、劣級。劣級は使えない人用だって」
「それを誰が決めるのかは?」
「さあ?考えたこともなかった」
「……お前、旅の前どんな生活してきた?」
「そんな言われ方ある!?」
「嫌味じゃなくてな」
ムッとしながらも、ルカに詰められて私はしぶしぶ口を開いた。
「三、四歳から勉強が始まった。朝から晩まで授業して宿題やって寝るだけ。家族は忙しくて基本一人、休みの日だけ街をこっそり歩いた」
「……なるほど。そりゃ世間知らずにもなるな」
「ひどっ!?」
「褒めてない。けど、そこから教えてくぞ。旅に出るなら必要だ」
そこから始まったルカ先生の即席講義。
世界共通の硬貨の話、ギルドカードの免除システム……。
全部知らなかった。自分の無知さにちょっと凹む。
「この硬貨って、どこでも使えるんだね」
「常識だっつの。金の勉強どこで習った?」
「八百屋のおじさん」
「……お前、それ勉強って言わねえ」
そう言いながらも、ルカの声はどこか優しかった。
その後も、魔導士協会とか階級制度の話を教えてくれた。
階級制度のことは知ってたけど凄さはあんまり分かってなかったからありがたい。
私が使ってる空間魔法は上級で、その中でも難易度が高い部類だって。
「お前は最低でも最上級クラスだな」
「……そんなに?」
「だから自信持て」
「……うん、ありがと」
小さく笑うルカ。
その横顔を見て、胸が少しあたたかくなった。
「でもエルフとか魔族は協会にほぼいないな。九割は人間だ」
「そうなの?ふーん」
「……ほんと何も知らねえんだな」
「かもね」
勉強会が終わる頃、窓の外はすっかり暗くなっていた。
頭はパンパン。でも、知らなかった世界が少しだけ近くなった気がする。
——こんな日も、悪くない。
ぐぅぅ、とお腹が鳴る。
「ふっ。……ご飯にするか」
「うん!」
今日はもう暗いし、あのご飯屋さんは明日かな。




