表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

新たな場所へ

「アル、SSSランク認定おめでとう」

「ありがとう」

「それともう一つ。仕事が片付いたから、また旅に出られるよ」

「本当?! 」

「ああ」

「ルカはどこか行きたい場所ある?」

「南の方に遺跡があるんだ。アルも最高ランクになったし、行けるはず」

「ランクによる立入制限のある地域のひとつ?」

「ああ。ところで、お前、いつまで男の格好してるつもりだ?」

「うーん…」


ルカは私が男の格好をしているのが気に食わないみたいだ。髪を切ろうとしたら止められて、膝丈までしか切れなかったし。

そういえばお姉様から、髪を染めた方がいいって助言をもらっていたっけ。

それにルカにも女であることがバレちゃったし…


「もう僕である必要もないか」

「ああ。どうしても隠したいなら…せめてこういうズボンはどうだ?」


今までは半ズボンを履いていたけれど、この体格では少し違和感がある。

ここ半年はローブで隠していたし、ちょうど新しい服が欲しかったところだ。

ルカは黒色の、裾が広がるスタイルのズボンを渡してくれた。それに合う白のシャツとジャケットも一緒だ。


でも、これじゃ……

「ねえ、ルカ。この服だと貴族っぽくて目立つよ」

「え? あ……」


頭を抱えて必死に考えるルカに私は提案した。

「一緒に服買いに行かない?」

「ああ!」


平静を装って話したけれど、声はいつもより明るかった。

女性がズボンを履くのは珍しいが、まったく居ないわけではない。

買った服を着ると中性的な雰囲気になる。

瞳と髪の色がコロコロ変わるため、白と黒を基調にコーディネートした。

トップスは短めにし、ズボンと合わせることで体のラインがはっきり分かる。

セーターやワンピースも購入した。


「ねえ、ルカ。この髪、目立つから染めたいんだけど」

「!? ダメだ」


強く止められ、思わず驚いた。

そんなに必死に止めるとは思わなかった。

妥協案としてウィッグを被ることで落ち着いた。

ウィッグを被るのは二回目。今回は金髪ではなく、ルカに似た薄い茶色にした。


二日ほどで準備を終え、ルカの故郷を後にした。

最後まで国の名前は教えてもらえなかった。

調べようとしても見つからない。

不思議に包まれた国だった。国全体から異様な気配が感じられたが、人々との距離は近く、仲良くしてくれた。


出発時、私は目隠しをされた。

ルカに抱きかかえられ、運ばれていく。

それにしても場所まで隠されるとは思わなかったな。

依頼の時は街中でしか行動できず、外出時は転移スクロールを渡されていたはず……今回もそれで良くない?


しばらく歩いた後、ルカが私を下ろし、目隠しを外した。


「転移のスクロールじゃダメだったの?」

「場所が決まってないと使えないからな」


目を開けると、そこは森だった。

多分、依頼の時に来た森ではない。

振り返ると木々しか生えておらず、国があるようには到底見えない。

ほんの少し歩いただけの感覚なのに、なぜこうなったのか。


「理由は言えないけど、アルが自分のことを理解すれば、自然とわかるはずだ」

「またそれ?」

「あそこがアルと縁のある土地だってことだよ」


私、そんな大事な場所にいたの?

狂ったように依頼を受けてたけど、やるべきことが別にあったのかもしれない。

ルカが何も言わないのはいつものことだ。

諦めて受け入れよう。

それに、私はまたあそこに行く気がする。

なぜかそう思うんだ。


「ルカ、今どこにいるか分かる?」

「いや、わからない」

「え? どうするの?」

「森を抜けて街に行けばわかるさ」

「ルカも大概楽観的だよね」

「お褒めに預かり光栄です」

「褒めてない!」


怒った私から逃げるルカを追いかける。

「もう!」



「ギルドカードの提示をお願いします」


鬼ごっこの末、私たちは街を見つけた。

すでに陽は沈みかけていた。

ふとルカを見れば、ギルドカードは瞳と同じ、夏の森のような緑色をしていた。


街に入り、ギルドへ向かう。


「本日はどのようなご用件で?」


この人…今まで会った誰よりも態度が悪い。

口調は一応敬語だが、気だるそうで接客が嫌そうだ。

なんで受付やってるのか不思議だ。


「…えっと、ここがどこかと日付を知りたくて」

「お姉さん、そんなことも分かってないの?」

「はは、まあそうですね。気楽に旅していますから」


ムカつく。私だって、こんなことになっていなければ把握していたのに!


「…ここは、ハウゼン共和国フューエル領。今日は八月七日」


突然敬語が崩れたが、面倒くさそうにはしていない。

どうして急に変わったんだろう?


「ルカ、知ってる?」

「ああ、だいぶ遠くに飛ばされたな…」


飛ばされた? あれは魔術の力だったのか。

でも魔力は感じなかった。

今はそこじゃない。

ハウゼン共和国――東にある大きな国。私たちは西のカルダン王国から来たのに、世界の裏側に飛ばされたも同然だ。

そういえばあの人からハウゼン帝国の話を聞いたことがある。


『大陸の端、ハウゼン共和国では人だけでなく亜人も多く共存している。色んな国の文化や風習が混ざり、新しい習慣が生まれている。直接感じた方がいい。世界が変わるよ』


…旅人さんの名前も顔も思い出せない。

アラニルが生まれるきっかけを作ってくれた人なのに、なぜだろう。


「ルカ、南の遺跡って…」

「ああ。ここからかなり離れてるな。まあ、いつか行ければいい」


「あと、泊まりたいのですが部屋はありますか?」

「二部屋でいい?」

「はい、ありがとうございます」

「これがルームキー。部屋はここを出て右の建物だ」

「わかりました」


珍しい。ギルドの建物とは別に宿を用意しているなんて。


「八月なのに寒いのは少し違和感あるな」

「アルは初めてか」

「うん…おもしろい」

「明日はこの辺を見て回ろう」

「そうだね」


空はすっかり暗くなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ