闇の小屋
どんなおもちゃも食べ物もお金を払わずに買えるようになってほしい。哲哉はそう思っていた。実現できるわけ無いと思っていても、その欲には決して逆らえないのだ。だから、一年前、店に売っていたおもちゃを盗んで逮捕されたこともあった。両親は半年前に死んだ。
どこで死んだかも分からず、死因も不明。遺体すら未だに発見されていない。哲哉は、
適当に道を歩いていた。するとそこに、変な小屋があった。そこに在る看板には「何でも願いを叶えます」と書いてあった。「失礼します」といって覗いてみると、上背は八尺を優に超えている闇人がいた。その姿は、自分を狙っているような感じがして、恐怖すら覚えた。
「こんにちは」とおぞましい声で駆けつけてくる。「ここは普通の人間ではたどり着けないところだ。まさか貴公は……」哲哉は、この会話がどういう意味か分からなかった。
「まあいい。お客が来てくれました。何でも願いを申してください。条件さえ達成すれば
現代では実現できないことでも叶えます。」条件?なんのことだ。簡単な条件だといいが。
欲のあまり「条件はなんですか」と叫んだ。「条件は、誰でもできる条件なのでご安心を」
そんなことは聞いていない。聞きたいのは条件の内容だ。哲哉は少しいらだってきた。
「では、願いを申してください。」ついにこれを叶える時が来た。とワクワクしてきた。
「どんなものでも無料でもらいたいです」哲哉はそういった。ただ、「願いを叶えるのは条件を達成してからです。いいですか?」闇人は哲哉の後ろに歩いていった。すると、眼前に
恐ろしい光景があった。棚に並べられているのは、人間の死骸だった。哲哉は「ぎゃあああああああああああああああ!!」と恐怖のあまり叫んでしまった。しかも、その死骸のなかには、両親のものも……。「ここに来られる人間、つまり犯罪者。貴公の両親もそうだったのですよ。残念ですねぇ。」くくく……と後ろから聞こえる笑い声に哲哉は怒りを覚えた。
「俺の両親がなにをしたっていうんだ。教えろ!」と焦燥のあまり怒鳴った。同時に手の痛みを感じた。床を見てみると、左手のすべての指が血とともに床に散らばっていた……
「青二才の君が私に勝てるわけ無いでしょう。滑稽ですねぇ。両親は、貴公を産んだ時点で犯罪者なのですよ。犯罪者の貴公を産んでしまい、親になった時点で。つまり、貴公さえ生まれていなければ、両親はこのようにおぞましい死骸になることもなかった。」
そのとき、そこに哲哉の姿はなかった。哲哉は来た道を辿って家に帰ろうとしていた。
しかし、決して家にはたどり着けなかった。そこに重い声がした。「逃げるなんて無責任な。犯罪者として、罪の自覚を持って素直に殺されなさい。」
そこから先は分からない。哲哉が帰らぬ人となったこと以外は……