『嫉妬と矜持〜北条司、No.3の誇り〜』
《SENGOKU》の朝礼前。控室では、ざわつきが広がっていた。
「マジで信長さん、昨日の飲み直し入ったってよ」
「しかも歴女? 強くね?」
「つか、見た? SNSであの子、めっちゃ書いてた。“リアル信長を見た”ってバズってる」
スタッフたちが口々に噂を交わす中、ひときわ静かな視線がその中心を見つめていた。
長めの髪にメガネ、一見チャラそうに見える男――北条司。
現《SENGOKU》No.3。
かつては新人王、そして不動の“安定枠”として客層の信頼も厚い実力者。
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蓮が姿を現すと、朝礼が始まる。
「……新人ホスト・信長が、昨夜“飲み直し→本指名”を獲得した。評価に値する結果だ」
「ありがとうございます」
信長は無表情で一礼した。
その瞬間、司の眉がわずかに動いた。
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休憩中。ヒカリが信長の元に駆け寄る。
「信長さん! 昨日のあの子、今日も来るかもってDMきましたよ!」
「ふん、それがしの魅力に抗える者はおらぬ。連戦も辞さぬ」
その背後、ひとりの男がカウンターにもたれ、苦笑いを浮かべていた。
「へぇ……派手だね。まるで“俺がSENGOKUそのもの”みたいな言いぶりじゃん」
ヒカリが振り返る。
「……北条さん?」
「別にさ、結果を出すのは悪くない。ただ、“運”だけで評価されるって、なんか違うと思わない?」
ヒカリは言葉に詰まった。
だが、信長は一歩、司へと歩み寄り――静かに口を開いた。
「貴様が我に敵意を抱くのは自由。だが、それを“誇り”に変えられぬなら、No.3の名が泣くぞ」
「……!」
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言葉の剣がぶつかり、空気がぴんと張りつめる。
だが蓮は遠くからその様子を見つめ、ゆっくりと笑う。
「……いい風が吹いてきたな」