『野望の宴 〜あっぱれに集う三人〜』
営業終了後の店内には、グラスを拭く音とスタッフの笑い声が静かに響いていた。
その中で、信長とヒカリは呼び出しを受けた。
「オーナーが、お前らを店の外で待ってるってさ。場所は……“あっぱれ”? 居酒屋?」
「え、蓮さんが!? 居酒屋っすか? マジで……!?」
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二人が連れて来られたのは、駅前にある昔ながらの居酒屋『あっぱれ』。
のれんをくぐると、油とタレの香ばしい匂いが一気に鼻腔を刺激する。
「いらっしゃい〜! おっ、蓮ちゃん今日もありがとね!」
「奥、空いてるだろう。三人でな」
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店の一角、すでに席に着いていた上杉蓮が振り返る。
スーツ姿のままだが、手元にはすでに瓶ビールと焼きホッケ。
「うわぁ……蓮さんが居酒屋って……ギャップすごいっすね……」
「新人時代、よく通った店だ。ここのホッケがうまい。骨まで食える」
「骨……!? いやいや、オーナー、なんか意外すぎて……」
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一方の信長はというと――
「うぉお……! この“ほっけ”なるもの……塩、香ばしきことこの上なし! 焼き加減、神業ぞ!!」
「信長さん、リアクションが戦国時代すぎます……」
「そしてこの“ビール”なる麦の霊酒……うむ、冴える! 体に火が灯るわ……!」
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ヒカリが笑いを堪えながら箸をのばす中、
蓮は、冷えたグラスを持ち上げ、ゆっくりと言った。
「俺はな、《SENGOKU》を日本一のホストクラブにしたいと思ってる」
その言葉に、ヒカリの手が止まった。
「……日本一、っすか……」
「“戦国”を名乗る以上、中途半端では終われん。全ての城を越えて、頂点に立つ」
しんと静まる一瞬。
その中で、箸を置いた信長が、まるで当然のように言った。
「目指すは――天下統一、か」
「信長さん……」
「よかろう。我も乗るぞ、その野望の船に。夜の街を統べるが、この信長よ!」
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隣でヒカリが小さく笑った。
「……オレも、正直不安だけど……でも、ここに来てよかったって思うんす。だから――頑張ります!」
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その夜、三人の前に並んだのは、焼き魚と冷えたビールと、野望。
――あっぱれな夜が、幕を開けた。